狼の心髄
時刻 "13:45"
『こんにち、わ。』
「はい、こんにちわ、若様。」
『まだ、ぎこち、ないかな?』
「ふふ、若様? 最初にしてはとてもよく喋れていますよ」
あの後若干の食事休憩を挟んでから、再度思念話術の練習をしていた。
少しは上達したようで、エネラの魔力無しで思念話術を使っている。
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スキル名:思念話術 Lv1
スキル種:パッシブスキル
取得条件:魔力 1以上
効果内容:どんな相手にも自らの思念を正確に伝えられるようになる。
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シンプルな内容ではあるが、この情報はかなり重要でもある。
そしてこれを取得するためにはステータスの魔力の値が1以上あるのが条件とのこと。
それは先ほどのエネラの説明で大体察しがついていた。
俺の魔力は最低限の1という結構ギリギリな値だった。
あのスキルを使ってこの低い魔力値をボーナスポイントを振るか。
それとも別の方にボーナスポイントを振るか。
ステータスの値が低いために取れないスキルもいくつかあるかもしれない。
そのため、序盤で取れそうな必須スキルがあればそれに合わせて振りたいところだが…
『きようび、んぼう…に、なりそう、だ…』
「どうかなさいましたか? 若様?」
『!? なんで、も、ないよ。』
"あっぶねぇ、口に出てたみたいだな…。思念話術のレベルを上げてこういった調整もできるようにしないと。"
「そうですか? …あら、もうこんな時間ですね。ふふ、今日は無事言葉も交わせるようになられてわたくしは嬉しく思います。」
『俺も、だよ。ことばが、つうじな、いのはとて、も、不便、だったか、ら。』
「そうですね。では若様、主様の元までお送り致しますよ。」
『いや、だいじょ、うぶ。いろいろ、と、やりたい、ことが、あるから。』
せっかくのエネラとの魅惑的な時間を過ごすチャンスを手放し、まずは各レベリングをすることにした。
名残惜しくはあったが、先に己の実力を知っておきたい。
エネラと離れる際、ギュウっとアルフの体を抱きしめる。
その後離れる際にエネラが若干寂しそうな、でも満足そうな表情をしていたような気がする。
『きょうはあ、りがとう。ま、た、あした。』
「はい、また明日。どうかお気をつけて。」
そうしてアルフはエネラと別れ、小さく表示したマップを元に道を辿っていく。
思念話術が実践式で手に入ったのなら、他のスキルも条件さえ合っていれば手に入るスキルがあるということ。
そこでまず先に入手したいスキルがあった。
あるかどうかもわからないが、とりあえず物は試せっていうしな。
ということでまずは体勢を低くし、できる限り足音を消してゆっくり歩く。
息遣いも抑え、目を鋭く光らせ、周囲に気配を配らせる。
そう、今入手しようとしているスキルが、隠密関係のスキルと気配察知のスキルの二つだ。
もっとも手に入るかどうかは賭けでしかないため、この行動は無駄なのかもしれない。
"でもあるとないとじゃ全然違うしな。それに狼といったらこんな感じだろう?"
そう呟きながら、そのままの状態で歩みを進めていく。
辺りに自分の感じる範囲で気配は察知できない。
それでも感覚を研ぎ澄ませ、足音を殺して進んでいく。
とその時、自分の直感に何かが引っかかる。
―ポンッ
<スキル"気配察知 Lv1"を取得しました。>
<スキル"隠密 Lv1"を取得しました。>
"よし、目的のスキルは手に入れた。後はこのままスキルの熟練度レベルを上げるだけ。"
アルフはそのままの姿勢を変えず、その気配察知に引っかかった方へ静かに向かう。
ゆっくり、ゆっくりと気配を殺して慎重に近づいていく。
その気配に進むにつれ、川の潺が聞こえてくる。
それと同時に鼻に付く獣の臭い。
どうやら気配察知に引っかかったのは、川で水を飲む鹿のような生物だった。
黒い羊の角、6本の脚に若干長い尾。
表示された名前は"ディアプニル"、レベルは5と表示されている。
先に戦ったデビラードよりも2レベル上で体格も向こうが上である。
でも相手はこっちに気づいた様子はない。
完全に油断しきっている。仕掛けるなら今しかない。
更にディアプニルに近づいていく。
それでもディアプニルはアルフの存在に気が付かない。
その距離をどんどん縮めていく。
30m…25m…20m…15m…10m…。
後すぐそこまで来たが、それでもこちらの気配に気づく様子はなかった。
それほどまでに喉が渇いていたのか、川の水を飲むことに夢中であった。
"戦闘の際にはあの足と角による突進に注意だな…。よし…あのスキルをオンにしてみるか。"
そして残り5mまで近づいた所で、魂を喰らう者のスキルをオンに変更する。
もう目と鼻の先にディアプニルがいる。
意を決して足に力を入れ、地面を蹴ると草むらから飛び出た。
そこで初めてディアプニルは異変に気付き、顔を持ち上げ、こちらの方を向く。
がその視界の死角に入り、再度こちらの姿を確認する前に飛ぶと同時にディアプニルの喉元に食らいつき、その牙を突き立てる。
視界外からの衝撃と急所からの激痛に体の力が一瞬抜け、そのまま体勢を崩した。
それを利用して喉元を噛み千切る勢いで顎に力を加えながら、倒れる勢いを乗せて頭を振りかぶる。
振りかぶりながらディアプニルの体を蹴って距離を取る。
蹴られたディアプニルは倒れ、暴れるようにもがいていたがやがて痙攣を起こし、そのまま動かなくなった。
ふと気が付けば、口元に何かを加えている。
どうやらそのまま喉元を噛み千切ったようだった。
―ポンッ
<スキル"致命の一撃 Lv1"を習得した。>
"お、おぉう…? 致命の一撃って、スキルが手に入ったぞ…"
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スキル名:致命の一撃 Lv1
スキル種:バトルスキル
取得条件:スキル"隠密"の取得。筋力:4以上。俊敏:5以上
発動条件:敵に気づかれていない。こちらの存在を見失っている。
効果内容:死角からの強力な急所への攻撃。防御力を無視したダメージを与える。
また一定の確率で相手を即死させる。ただし相手のレベルが高ければ即死の効果は薄くなる。
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"あぁ…なるほど。相手をする前に偶然にも条件が整ったからできたやつか。"
それにしても喉元を食いちぎるとか、悲鳴さえも上げることなく死んだな…。
食い千切った喉元をそのまま飲み込むと横たわっているディアプニルに向かう。
―ポンッ
<Lv5のディアプニルを倒したことにより、経験値を取得しました。>
<"魂を喰らう者"により、取得された経験値をボーナスポイントに変換します。>
<アルフは ボーナスポイント:3p を手に入れました。>
"これもまたかなりのボーナスポイントを貰ったな…。やっぱ、レベルの差が離れてるとその分経験値の量も増え、変換される量もその分増えるから3pももらえた。となるとレベリングの際はやはり俺よりも若干レベルが高く、尚且つ倒せる範囲の敵を探してやればいい…というわけか。"
隠密で静かに忍び寄り、背後から致命の一撃を繰り出して大ダメージを与える。
それで倒し切れなかったら、そのまま遠吠えと鋭い眼差しで一定時間のデバフと情報を抜き取り、隙を作って対処する…。
"これを狼たちは群れで行うわけなんだよな…。うっへぇ、狼すげぇな。"
どうしてこうも動きにくそうな構造の生物を書くのか理解できない。
<ディアプニルの生態について>
・ランク:C
6本足の獣。主に深い森の中に住んでおり、草や木の実をなどを好んで食べる。
基本的には大人しいが、相手の気配に気が付くとその6本足を使って高速でその場から逃げる。
一度見つかってしまうと1回の瞬きの間に消えてしまうため、追撃は厳しい。
基本的に4~6体の群れを成して行動しているが、よく1~2匹が群れから外れていることがある。
はぐれディアプニルで注意する点があり、それはただのはぐれなのか、それとも番いのはぐれなのかだ。
これを見分けるには身体のどこかにある赤い斑点があるかどうかを見ることである。
赤い斑点のあるはぐれディアプニルは番いとなっており、このはぐれディアプニルを殺してしまうと雄のディアブロアという個体を殺すまで必要に狙われるため注意である。
冒険者ギルドでは、ディアプニルを狩ることは出来る限り非推奨とされている。
もし狩る必要が出た場合、腕利きの狩り人と十分な経験を積んだ盾持ち、そして厚い甲殻を砕くことのできる斧やハンマー等の武器を使いこなす冒険者とパーティーを組み、冒険者ギルドへと申請しなければならない。
誤って番のディアプニルを狩ってしまった場合、怒れるディアブロアまで狩る必要があるからだ。
もし怒れるディアブロアを野放しにした場合、狩った者を追いかけて町までやってきて暴れ、半壊する被害を出してしまう報告が後を絶えないという…。
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Lv:1
名前:無
種族:シルバーウルフ
HP:10/10
MP: 2/ 2
攻撃力: 10
防御力: 5
魔法力: 2
魔防力: 4
回避力: 8
隠密力: 7
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今回取得したスキル
・気配察知 Lv1
・隠密 Lv1
・致命の一撃 Lv1




