思念話術
時刻 "13:00"
デビラードを食べ終えたアルフは、その足取りでエネラの待つ蜘蛛の間へと向かう。
とりあえずあのスキルはオフにしておいた。
どの種族がどのステータスにボーナスをくれるのかわかっていないため、むやみにボーナスを手に入れたくはない。
蜘蛛の間に着くとエネラが満面の笑顔で出迎えてくれた。
「ようこそ、若様。ふふ、どうやらデビラードのお肉は堪能できたようですね。」
「わぉんっ!」
「それはよう御座いました。実は若様の戦いをわたくしはこっそり見ていたのですよ?」
"おおう、マジか。"
「若様を迎えに行った時、若様のお声が聞こえたので急いで見に行ったら丁度若様が戦い始めた頃でした。万が一の時のためにわたくしの子たちを周囲に配置させていたんですが…とても素晴らしい戦いでしたよ。」
エネラ曰く、デビラードは序盤で出会う敵の中では強敵の部類に入るとのこと。
理由としてはまず巣食う病魔のスキルにより、近接攻撃の全てに相手に毒にさせる効果が付与されていること。
そのために盾や防御などで防いでも毒になってしまうとのこと。
更にはその尻尾で繰り出される攻撃の速度がかなり速いらしく、避けようとして微かに当たってしまい毒になりやすい。
そして第3の眼から放たれる闇の視線光。
闇の視線光は全攻撃の中でも一番火力が高い上に、当たると一定時間"視界"を奪われてしまう。
たとえデビラードの子供や弱い個体であったとしても一瞬の油断でやられるらしい。
そのため、デビラードを相手にする際は必ず光属性の魔法"アンチデフ"を覚えるか、状態異常を回復する手段を持ってから戦うのが推奨されているとのこと。
「なのに若様はそれに臆することなく、勇猛果敢に戦い、すべての攻撃を往なし、攻撃のチャンス時には確実にダメージを与える。ああ、とても素晴らしい戦いぶりでした…。」
エネラは両手を合わせて感傷に浸る。
"確かに序盤ではそんなデバフの塊みたいな敵とは会いたくねぇな…。あの巣食う病魔っていうスキル、やっぱり近接攻撃にデバフ効果を付与する系の能力だったか。"
デビラードと戦った記憶を思い起こし、自らの動きを振り返る。
今のこの状態であそこまで立ち回れたのは上々ってところかな。
でもまだまだ動きに無駄があるし、何よりもぎこちない。
"改善する点も多いし、問題も山積みだなこりゃ…。"
「では若様、これからわたくしの持つ知識を一つ一つ学んでいきましょう。最初は"話術"を覚えてもらいます。」
「わおん?」
「わたくしは上半身が人間のためにこうして普通に喋ることができますが、他の種族の一部ではできません。若様はそのできない種族なので言葉ではなく、己が考え、それを相手に伝える業、思念話術<テレパシー>を覚えてもらいます。」
"なるほど、あれらは思念話術を使っての会話だったのか。"
「若様は今その身で色んなことを思い、考えておりますが、今度はそれを相手に伝えるための術を身に付けましょう。きちんとした思考話術を覚えていないと、考えていることや思っていること全てを包み隠さず相手に伝えることになってしまうので気を付けてくださいね。」
"やべぇなおい…"
「ふふ、若様ならすぐにできるようになりますよ。では始めましょう。」
そうしてエネラとアルフの実習講座が始まった。
やり方としては、相手の目を見て伝えたい言葉を脳裏に浮かべ、そして相手の目を見ながらその言葉を強く念じる、というもの。
その際、エネラがアルフに触れ、スズメの涙程度の魔力を注ぐ。
そうすることにより、体の中に流れる微量の魔力がその言葉を汲み取り、アルフの目から溢れ出る。
アルフが念じた言葉をくみ取った魔力がエネラに触れることにより、その魔力に込められた思考を感じ取り、理解する。
これがエネラから教わった、簡易的な思念話術の仕組みである。
ただこれができるのはほんの少しの魔力適性を持つ種族のみ。
まぁもっともたまに魔力適性を持っていても思念話術が扱えない者たちもいるらしいが…
俺がエネラさんに対して念じている言葉は、
"これからもよろしくお願いします"
この一言である。
エネラさんには色々とお世話になったし、これからもお世話になるのだ。
礼に始まり、礼に終わる。
こういうところはちゃんとしておかないとな。
ただずっと互いの目を見つめ合うってのが結構ドキッとする…。
エネラ先生相手だとなおさらだ…。
それからどれほど見つめ合ったのか。
時間も忘れてひたすら思考話術についての実技演習を行っていた。
―ポンッ
目の前に小さなポップアップが表示される。
<スキル"思念話術 Lv1"を取得しました。>
"へぇ、スキルの入手方法はポイントで消費するやつ以外にもあるわけか。"
ポップアップが消えてエネラのぽかんとした表情が目に映る。
"あ、やべ。今の聞こえちゃったか?"
と焦りだすも、ぽかんとした後すぐにエネラはとても優し気な微笑みを浮かべる。
「…本当に若様はお優しいお方なのですね。ふふ、わたくしも改めてよろしくお願いしますね」
どうやら一番最初に念じていた、"これからもよろしくお願いします"という思いが伝わったらしい。
これ以上にないほど胸の高鳴りが感じる笑みを見たのは初めてだった。
照れくさそうに、
"お、おう…!"
と返事を返す様に念じてみる。
それが伝わったのかどうかはわからないが、エネラはクスッと笑った。
とうとう俺は会話方法を会得した。
====================
Lv:1
名前:アルフ
種族:シルバーウルフ
HP:10/10
MP: 2/ 2
攻撃力: 10
防御力: 5
魔法力: 2
魔防力: 4
回避力: 8
隠密力: 7
====================
今回取得したスキル
・思念話術 Lv1




