初めての出会い
時刻 "9:18"
洞穴内部に差し込む光に当てられて目を覚ます。
気が付けばアダントの姿はなく、隣でエフィがアルフを優しく舐めながら毛を繕っているようだ。
『あら、アルフ。おはよう、良い夢は見られた?』
"おはよう、母さん。只管エネラさんの胸を前足でフニフニしてた夢なら見れたぞ!"
「わおんっ」
『あらそうなの。うふふ。』
…大丈夫だよな?
俺の今の思考は読まれてないよな?
と若干焦りを感じているためか、滝の様に汗が流れる。
そんなアルフの心情なんて知らぬが顔の如く、ゆっくりと立ち上がると洞穴の外へ出ていく。
『もうすぐで食事の用意ができるからね』
それからすぐ、アダントが昨日とは違うまた別の見たこともない生物を獲ってきていた。
この森に棲む野生の動物らしい。
見た目はというと牛に近い何かだった。
角は4本生えており、目は額に1つのみ。また大きさも3mぐらいとなかなか大きい。
"野生の動物というよりも明らかに魔物だよなこれ…"
『では食べましょう。』
その一声と同時に3匹は肉に食らいついた。
そのまま朝ごはんを終え、アダントは伏せるように体を寝かせる。
『ではアルフよ。このまま賢者殿の所に向かい、色々な事を学んでくると良い。』
『帰ってきたら戦い方を覚えましょうね。賢者様の所までの道のりは覚えているかしら?』
"マッピングはRPGゲームする上では必須スキルだからな。ばっちり覚えているぞ!"
「わぉんっ!」
『あらあら、うふふ。それは頼もしいことね。道中の安全は大丈夫だとは思うけど、それでも気を付けてね。』
"まあ、エンカウントしたらそれはそれでこの体の動きに慣れる練習ができるだけだ。"
「わぉーんっ!」
アダントとエフィに一鳴きした後、昨日のうちに脳内に作ったマップを思い出そうとしたとき…
―ポンッ
というサウンドと共に目の前にポップアップが表れた。
どうやら地図のポップアップのようだが、ほとんどが霧の様に塗りつぶされている。
だが一番最初に居た草原からエネラへのいる蜘蛛の間までの道、そこから自宅であろう洞穴までの道までがすでに鮮明に描かれてあった。
"多分これはあれだ。一度通った道は勝手に記憶されるあれだ。まあ実際これがなくても別にいいけど、ある程度戦えるようになったらマップ埋めもしてみたいな。"
そう思いながら、記憶を頼りにエネラの居る蜘蛛の間までテトテト歩いていく。
蜘蛛の間ってのは勝手に俺がそう呼んでいるだけで実際は違うかもしれないなぁ…。
そんなこんなで蜘蛛の間に向けて歩いて30分が過ぎた。
あの時は両端にエフィとアダントが寄り添っていたため、あまり景色を楽しむことはできなかったが…
"絶景って言葉しか出ないな…。ほんと、改めて見るがどこもかしこも人の手は咥えられてないせいもあって、美しいな…。"
立派にそびえ立つ一本一本の巨大な樹木、生い茂る草花は風に揺られ、どこか川の潺が聞こえてくる。
どれもかれも見たこともないモノばかりで、胸の高鳴りは続きっぱなしだった。
まるで未知の世界を冒険する少年のように。
"まあ普通に未知の世界なわけだが。"
一つ一つの景色を胸に刻み、気が付けば予定よりも30分も遅れていることに気づいた。
ちょっと進みを早めよう。そう思った直後、アルフの目の前に一匹の獣が現れた。
「ギュル…?」
その獣はまたもや見たこともない姿をしていた。
大きさは大体アルフよりも若干小さいぐらい。
目は3つあり、額に1つ、左右に2つ。大きな耳が生えている鼠だった。
ただ後ろ足は鳥足のようになっており、背中からこれまた小さな羽が生えている。
―ポンッ
そしてその獣を指す名前とレベルが表示されたポップアップが表れた。
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デビラード Lv3
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デビラード。悪魔のデビルと鼠のラット、そして鳥のバードが組み合わさったようなものか。
レベルは3と…序盤にしてはちょっとばかりレベルは高めだな。
「! ギュルルゥゥ…!」
どうやらデビラードもこちらの存在に気づいた様子で、アルフに威嚇するように腰を低くし呻っている。
とりあえず俺の戦闘系スキルは…
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取得スキル一覧
バトルスキル
・噛み付き 熟練度Lv1
・引っ掻き 熟練度Lv1
・体当たり 熟練度Lv1
・遠吠え 熟練度Lv1
・鋭い眼差し 熟練度Lv1
アクティブスキル
・なし
パッシブスキル
・魂を喰らう者
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まあこれが初期スキルってところか。
バトルスキルは思うがままに体で動かして扱えばよさそうだな。
アクティブスキルは多分念じることで発動するんだろう。
パッシブスキルは言わずもがな。
遠吠えと鋭い眼差しはどんな効果があるんだ…?
アイツもアイツで様子見しているのか、未だこっちに手を出してこないみたいだし…。
ならもう少しだけ待ってくれ
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スキル:遠吠え
効果内容:その声を聞いた存在は恐怖に駆られ、一定時間動けなくなる。
ただし己よりもレベルが離れている相手には効果は薄い。
また優先的に狙われるようになる。
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ヘイト稼ぎと若干の範囲デバフ付与スキルか。
結構使いやすいな。多分これは愛用していくことになるだろう。
んで、もう片方の奴は…っと。
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スキル:鋭い眼差し
効果内容:その鋭い眼光にて、一定の確率で相手の弱点がわかる。
また、相手の詳細な情報の一部が判明する。
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偵察系のスキルだな。
これも遠吠えと同じでかなり使いやすい部類のスキルだ。
結構序盤にしてはなかなかのスキルが揃ってるわ。
うん、シルバーウルフは普通に強いわ。これならたとえLv3相手でもできるわ。
"んじゃあさっそく…"
そう念じ、肺いっぱいに空気を溜める。
そして意を決して、肺に溜めた空気を思いっきり吐き出すように声を上げた。
「ワォォォオオオオン!!」
その遠吠えがきっかけとなり、アルフの初めての戦いが始まった。
デビラードを自分でもわかりやすいように絵で描いてみたけど、描けば描くほど動きにくい構造してんなぁと思った。
<デビラードの生態について>
・ランク:C
後ろ脚が鳥、背に翼を生やし、額には第3の目が付いているネズミ型の魔物。
基本的に4~6体の群れで行動しているが偶に群れから逸れ、単独で行動する個体もいる。
小さな翼を生やしているが長時間飛ぶことには向いていない。
木から木へと飛び移ったり、大きな崖を超えたりする際に使われている。
第3の目からは魔を感知する機能があるようで、高い魔力を持った相手ほど隠密や擬態等を見破り、襲い掛かる。
また通常の鼠よりも長いとされている尾をもって鞭のように打ち、また先端部分は爪のように硬いため、
尾先を槍の様に突き出して刺してくる。
これがなかなかのリーチを誇るため、うかつにデビラードに踏み込めば痛い目に合ってしまう。
そして何よりもデビラードの代名詞とも言える攻撃はその瞳にある。
瞳に魔力を集め、それを光線のように放つことも可能で、この光線にはバッドステータスを付与する効果があり、一たび浴びればそのデバフによって戦いに大きな支障をきたすであろう。
冒険者ギルドではこのデビラードに対して近接戦に持ち込むことは非推奨とされており、盾持ちで槍尾による攻撃、瞳の光線を防ぎつつ、後方から弓や魔術といった遠距離攻撃での撃破が安全とされている。




