俺の名前
時刻 "15:45"
「こんにちわ、若様。わたくしは主様より賢者の称号をいただいております、エンシェントアラクネアのエネラと申します。」
俺を優しく抱きかかえながら自己紹介をしてくれたエネラ。
返事を返そうにも、わんっ!ぐらいしかいえないので、"よろしくな!"という思いを込めて鳴いてみる。
その思いを感じてくれたのかどうかはわからないが、クスッと頬を緩めて微笑む。
相変わらず、その笑みはどこか魅了される雰囲気が表情からだけでも感じ取れる。
『どうだ、我の息子は可愛いだろう!』
「ええ、とっても可愛らしいですね。うふふ、とってもモフモフしてて抱き心地も素晴らしいです。」
『そうだろう、そうだろう! がはははは!』
「ところで若様にお名前はまだつけていないようですが…」
『うむ、その事で賢者殿の元に来させてもらった。どうか良き名を与えてはくれないか?』
「わたくしがですか? それは至極光栄なお願いではあるのですが…」
『そうよ、賢者さん。せっかくだからとてもいい名前をお願いするわ!』
エネラは口元に手を当てる仕草をしながら悩んでいるように首をひねり、その後決心したように頷く。
正直、自分の子供の名前を別の人に任せるのはどうかとも思うが、名付け親が賢者ってのは案外悪くないかもしれない。
それにこんな美人さんに付けてもらうんだ。
やべぇ名前じゃなきゃ、一生大切にさせてもらいますわ!
「わかりました。では若様。少し失礼致しますね。」
そういうと、エネラの両手から白い光が発せられる。
その光に触れ、ゆっくりと子狼を包み込んでいく。
白い光に包まれた子狼はそのまま宙へ浮かされる。
エネラは瞼を閉じながら、何かを念じている様だった。
―ポンッ!
そして現れるポップアップ。
そこには
<貴方の名前を念じてください。>
"まさかのそっちでくるか!?"
<まさかのそっちでくるか!? でよろしいですか?>
"いいわけねぇだろうが!"
<消去しました。貴方の名前を念じてください。>
"むむぅ…。そうだなぁ…。前世での俺の名前は…"
と人間だったころの名前を思い出そうとする。
だが、まるで黒く塗りつぶされているかのように思い出せない。
"○○ ○○…なんだこれ…。ぐっ…思い出せない…。別に前世の名前を付けようとは思ってないんだが、これはちょっとおかしいぞ…"
幾つかの思い出が脳裏に映し出されるも、名前が書かれてある部分は真っ黒に塗りつぶされている。
呼ばれたりする場面を思い出せば、名前の部分に被せてテレビの砂嵐のような"ザーッ…ザーッ…"という音が反響して聞こえない。
これ以上思い出そうとするのは時間の無駄だと判断し、今度は今までのゲームで使ってた共通の名を付けることにしようとしたとき…
―――マーヴェリック。
ふとそんな名を思い出した。
確かネットで俺の事を指した言葉だったはずだ。
意味は孤高、一匹狼とかそこらへんだっけ?
確かに誰とも組まずにずっと1人"ソロ"でやってたしなぁ…。
んにしてもシャレた名前を付けてくれるじゃねぇか。
丁度今の俺は狼に転生してるみたいだし、これでいくか。
いや、でもそのまま名前にすると呼びずらいな。
…同じ意味合いで、アルフっていう単語があったな。じゃあそれでいこう。
"アルフ"
<アルフ でよろしいですか?>
"おう、それで頼む。"
<…………………登録完了しました。>
『どうだ、賢者殿?』
「……はい、若様の名前はアルフのようです。」
『アルフ…ふふ、とてもかわいらしい響きね。』
『アルフか。ん~…、良い名前だ!』
"おうおう、意味は孤高とか孤独とかって意味だぞ! どこが可愛いんだよ!"
とかいう突っ込みを心の中でしながら、無事俺の名前はアルフになった。
ヒロインが登場するのはも少し先。ただエネラがヒロインでもいい気がしてる。




