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 言えなかった「ありがとう」も「ごめんなさい」も秘めたままの胸を押さえ続けていいると、ようよう痛みが収まってきて顔を上げる。


 アザミの花はまだ風に揺れている。


 胸に手をおきそっと深く呼吸しようとしたとき、どこか近所の家から風に乗ってテレビ通販の声が流れてくる。


――見てください! この洗剤を使えばお醤油だってケチャップだって、ほらこんなに泥だらけのユニフォームだって。


 吐息とともに落ちた涙が、皺だらけの手のひらに落ちた。


 ぽつり、ぽつり。 


――あんた、どこん部落ん人ね?


 隣のおじいさんが、誰かにそう尋ねる声がする。


――どんな汚れだって、ほらこのとおりまっしろ!


 胡散臭い通販の女の言葉を笑うように、アザミは揺れ続けていた。



 ぽつり、ぽつり。


 染みのついた手のひらに、涙が落ちる。



 アザミは揺れる。

 美しい赤紫の柔らかい針を集めたような花を咲かせて、いつまでも揺れ続ける。








(了)




あとがき……という名の言い訳。



 明治という時代は生活環境のあまりにも著しい変化のおかげで遠い昔のことのようですが、実は明治生まれの人が今もまだご健在というほど近い時代でもあるのですよね。

 私も現にご年輩の方がいらっしゃる飲み会なんかに行くと必ず「あんたはどこん部落な?」と聞かれたりしますし、人々の差別意識は平成の世においても根強く残っている問題だと感じることもあったりなかったり。そんなわけで同和問題はいつか書きたいと思っていたテーマでしたが、今回ピュアキュン企画の概要を見て「あ、これ行けるかも!」と思ってしまったのが間違いだったのかもしれませんね。

 主催の霜月さん、及び、騙された!とお思いのみなさまには伏して謝罪いたします。

 それでも謂われなき差別が一日も早くなくなりますようにと祈念しまして、このお話を締めさせていただきました。


 最後までおつきあいくださり、ありがとうございました!

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