僕だけの力
まだまだ慣れません、拙くて申し訳ないです。
「間に合ってるってどういう事だよ?」
「その通りの意味だけど? 僕は自分と身の周りの人達を護れる力があれば良いし、僕はその力を既に持っている」
「なんかお前すげぇな。そこまで堂々と言い放つ人間とか初めてだわ」
「まあ色々と頑張ったしね」
うん、僕は頑張った。
思い出そうとするだけで、吐き気がするぐらいだ。
「でもさ、ほら」
「もう学校行かないといけないから黙って」
「あ、はい、すみません」
元勇者を黙らせて、僕は学校に行く準備をする。
顔を洗って鞄に教科書と昼御飯のパンを詰め込んで家を出た。路地を通り抜けると大通りに出る。
学園に向かう多勢の生徒達で、大通りは埋め尽くされていた。超巨大学園、ルクレツィア魔法学園名物「生徒大海嘯」である。
「うぉう、何だよこの人波っ! すげぇな!」
はしゃぐ元勇者が煩い。
「俺こういう学校って所に行った事ないからな!」
「……君は普段は一体何してたのさ」
「ん? 一に訓練、ニに訓練、ひたすら訓練だな。寝る時間なんて殆ど無かったし。専門の教師が付いて毎日毎日訓練の繰り返し。死ぬ寸前まで追い込まれるなんてザラにあったな」
「……左様でございますか」
何と言うか、国家の暗部を垣間見たきがする。
確か勇者カインは、僅か3歳で女神から勇者の神託を受け、登城したらしい。それからずっとそういう訓練を受けていたと……
「まあ、俺の事なんて置いといて、お前の事を教えてくれよ!」
「何でだよ? 気持ちが悪いな、そういう趣味か?」
「違うわ! 魔王を倒すまで俺たちはパートナーだろうが! 相手を知らずしてどうする!?」
「いや、魔王を倒せとか意味分からない。それに何時あんたと僕はパートナーになった?了承した覚えなんてありませんが!」
「俺がお前の中に入りこんでから即決定でーす」
「うん、やっぱり教会に行くか」
「ごめんなさい、本気で嫌なんでそれはやめてください。調子に乗ってすみません」
元勇、面倒だからカインと呼ぼう。
カインはそれから何も喋らなくなった。
カインがまた煩く騒ぎ始めたのは、僕が教室に着いてからだった。
「おい、ここって教室なんだよな?」
「そうだよ?」
「な、なんで誰もいないんだよ?」
「そりゃ生徒が僕だけだからだ」
「はあ?」
僕が学んでいるのは魔法陣学だ。
はっきり言ってかなり人気が無い。
言語魔法が主流な今、魔法陣を使う事自体が寂れて来ている。しかし良いのだ、僕はこの魔法陣が大好きなのだ。この美しい幾何学模様に惹きつけられて、ひたすら知識を覚えて、数え切れないほどの思考錯誤と実戦を重ねて、遂に僕は自分だけの力を手に入れる事が出来たのだ。