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ラッキースケベ&アクション2  作者: LSA製作委員長
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助太刀と失禁

「貴方達にはその施設の使用許可が降りていません。

施設の未許可使用は、注意対象になります。

速やかに施設から退去して下さい」

 房代が再三再四、通告を繰り返す。

部員と部長は房代に連れられ、ここ旧部室後の一つに来ていた。

 新入生の増加に伴い、部室の増築が完了するまでに建てられた仮設の部室。

建て増し後空き家となったったそれに、加害者達は立てこもっていた。

プレハブ作りとはいえ、電気も使え雨風をしのげるそれは、加害者達には良いたまり場となっていた。

 房代がまた通告を繰り返す。

それに答えるように部室の窓が開き、ペットボトルが投げつけられる。

中身の入ったそれは放物線を描きながら、十分な運動エネルギーをもって、房代へと飛来する。

 すかさず部長が、房代とペットボトルの間に入り込む。持ってきた棒、棍を回し弾き飛ばす。

 いつの間に前に入られたのか、ペットボトルを避ける運動神経を持たない、房子にその動きは見えなかった。

驚きに礼を返すのが精一杯だ。

「あ、あ、ありがとうございます」

 棍を弄ぶように、手、手首、肘、肩、首で順繰りに回しながら、部長は房代に確認する。

「今のは風紀委員に対する、公務執行妨害に値するかね。

確か校則では、風紀委員に対する暴力行為には厳罰が適正になっていたような」

 部長の目が怪しく光る。

その破壊的な匂いに、房代は慌てて言葉を返す。

「待って下さい。

もう一度だけ説得してみます」

 息を大きく吸って、軽く吐く。

大きな胸が揺れた、房代はもう一度叫んだ。

「貴方た」

 房子の必死の説得を遮り、今度は石が飛んで来た。

部長は飛来する石を棍の先で方向を反らせる。

後ろに控えた部員へとそれは流れ、部員が素手で石を受け止める。

 房代は遊びにしては過ぎた攻撃に、言葉を失い礼を言うのも忘れる。

 部員は無言で、受け止めた石を房代へと差し出す。

投げつけられた石は、拳大に近い大きさだった。当たればただではすまない。

 それでも房代は説得をやめなかった。

「貴方達には」

 今度はロケット花火だった。

煙を吹き出しながら、数本のロケット花火が打ち出される。

無軌道な軌道のため、幸いにも誰にも当たらず、部長、房代、部員の横を通りすぎた。

 すぐそばを通り過ぎた速度と爆発音に、房代は悲鳴とともにしゃがんでしまう。ずれた大きめのメガネの中の瞳が恐怖に閉じる。

「へえ。飛び道具とは、中々用意周到な連中だね。

この間合いじゃやられ放題だね」

 目測20メートルほどの距離の部室に、部長は現状を確認する。

突撃するにしても、三秒はかかる。

一、二発は被弾を覚悟しないといけない距離だ。

悠長な事を言っている間に、次の攻撃は容赦なく来る。

「部員!!」

 部長が叫ぶ。

言われるでもなく、部員は房代の前に飛び出る。

ロケット花火が連続して発射されてきたのだ。

 顔を両腕でかばい、直撃と火の粉を防ぐ。

胴体はがら空きだが仕方がない。

背中の房代を守るため、立ちはだかる。

 間近で花火が爆発し、火薬の匂いが鼻をつく。

数発が胴体に命中する。

刺すような痛みが走り、ジャージが燃えた焦げ臭い匂いが辺りに漂う。

ポリエステル繊維が熱に溶け、穴が空く。

 ロケット花火の連射が続く。

二十連発のミサイル攻撃に、部長は棍を回して弾き、部員は体を張ることで、房代を庇う。

やられ放題の状況がしばし続く。 

 撃ち尽くしたのか、次弾の装填に手間取っているのか、ロケット花火の猛攻が不意にやんだ。

「風紀委員、房代。どうすんだよ!!」

 部長の怒号が房代を貫く。

房代は閉じていた目を開く。

 自分を守る部員の背中。

散らばったロケット花火の残骸。

自分はどこも痛くない。

自分の無傷が助太刀の犠牲の元で成り立っていることを痛感する。

「風紀委員、房代。どうすんだよ!!」

 もう一度部長が檄で房代を貫く。

助太刀は力でしかない。

直接相手を傷つけるのは力である助太刀であるが、

その行使を命令するのは自分たち風紀委員だ。

風紀を守るため、間接的に相手を傷つける。

その覚悟を思い出す。

 ずれたメガネを直し、房代は立ち上がる。

大きく息を吸い、大きな胸を揺らせ、高らかに宣言する。

「風紀委員、房代の名において、助太刀、無差別格闘研究部部長ならびに部員に発令します。

加害者達の無効化を許可します」

 房代の宣言に部長の口角が上がる。

「なお、無効化行動における損害に関しては」 

 房代の宣言を最後まで聞くことなく、部長は叫んで突撃を開始する。

「部員、房代は任せた!!」

 そう声を張り上げるやいなや、部長は地面へと倒れ込み、そうな勢いで落下速度を利用して始動する。

転倒しそうなほどの勢いを上手く利用できるのは、足首の柔軟性とバランス感覚の賜だ。

 数歩でトップスピードに乗り、疾走を開始する。

狙いをしぼらせないように、ジグザグに部室へと向かう。

避けるのではく、当たらないように機動しているのだ。

数発放たれたロケット花火は、部長と交錯し、後方へと消えていく。

 窓からロケット花火を放つ加害者に近づく。

棍がいくら長いといっても、まだ突いて届く間合いではない。

だが部長は攻撃を開始する。

棍を片手に一旦引く。

「一の型、突」

 部長はそう叫ぶなり、やり投げよろしく棍を投げつける。

踏み込みから下半身を先行させ、残った胴体を伸張反射でつなげる。

また胸から肘も伸張反射でつなぎ、胸から肘が遅れて出てくる。

蓄えられた力の反動で、連関加速してきた肘が前方でしなり、棍を発射する。

 本気で投げたら、コンクリートさえ穿つ。

 部長の言葉が真実かどうかは分からないが、棍がロケット花火の狙撃手に炸裂する。

胸板に直撃し、狙撃手を仰け反らせる。

棍が衝突に、宙に跳ねる。

跳ね返ってきた棍を、部長は跳躍して受け取る。

「二の型、撃」

 その落下の勢いのまま、とどめの一撃を加える。

樫の木の棒が、狙撃手の首筋を思いっきりしばく。

 狙撃手はあまりの痛みに、神経系がパニックを起こし、声も上げずそのまま沈んでいく。

「部員!!」

 部長が後方を振り返りながら、その場から離れる。

言われるまでもなく、部員は腕を大きく振り上げ、足を大きく頭上へと上げたワインドアップを取る。

 先ほど投げつけられた石に、ロケット花火の痛みと、房代への理不尽な暴力への怒りを込めて、大きく振りかぶる。

足を垂直にまで上げ、極限まで前に踏み込む。後は先ほどの部長よろしく、伸張反射の連関で投げる。

 本気で投げて致命傷。

どうなっても知るかボケー!!

 肘がしなり、手首がしなり、最高速度で石が解き放たれる。

石が空気を突き破り、モルタルの壁に激突する。

 轟音とともに部室が揺れる。

見ると、モルタルの壁に石がめり込んでいる。

 その容赦ない攻撃に、加害者達はたじろぐ。

大げさに死の恐怖を感じる。

 直撃すれば、粉砕骨折は確実で、内蔵損傷。

当たりどころが悪ければ、死にかねない。

遊び感覚の気持ちが急速に冷えていく。

ロケット花火を撃っていたときの嬌声も霧散し、部室内が静まりかえる。

 沈黙に耐えられず、誰かが何かしゃべろうとすると同時、ドアが吹き飛ぶ。

 施錠されていたドアが、付け根の金属がはがれ、根元から吹き飛ぶ。

押し倒されたドアの向こうに現れたのは、部員。

20メートルを全力疾走した勢いのまま、肩回りを硬め、タックルをドアにぶちかましたのだ。

 その脇をすり抜けるように、一つの影が部室に入り込んでくる。

加害者達は、次々に手元を叩かれ、胸を突かれ、顎を割られ、脳天を砕かれ、関節に引っかけられて転がされていく。

 問答無用とばかりに、最後には必ず首筋をしばかれ、昏倒させられた。

 最後の一人が言い訳をしようとするも、部長は容赦なく昏倒させる。

部員は加勢する間もなく、部長は瞬く間に七人を制圧していた。

 両端のどちらでも打突できる、片方で打っては逆で打つもよし、手元で回転させて連撃させるもよしの、棍ならではの芸当だった。

 部員に遅れて房代が、部室内へと入ってくる。

「部員。

掃除は不要物を廃棄してから、掃除掛けをしようするか」

 物言わず身じろぎせず昏倒する加害者達の輪の中で、部長は新部室の掃除について部員と笑み混じりに話す。

 足下に転がる屍間近達を意にもしないその姿に、房代は暴れる力の持ち主の凄まじさをかいま見た気がした。

小便が少し漏れた。

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