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ラッキースケベ&アクション2  作者: LSA製作委員長
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無差別格闘研究部

「無差別格闘研究部の部長様はいらっしゃいますか!?」

 部室の扉が勢いよく開かれた。

そこに現れたのは、走ってきた勢いで、大きめのメガネがずれ気味の房代。

切れる息に、大きな胸が上下している。

「まあまあ。落ち着きたまえよ、房子君」

 部長が顔だけを房代に向け、年上モードで返す。

目上に対してバカ丁寧な房代に対して、部長は面白がって必要以上に落ち着いた女性を演じる。

喉に指一本当てて、部員に指示を出す。

 部員は太股を揉む手をとめ、目隠しを外す。

傍らのテーブルに置かれていた新品のペットボトルを取り、房代へと差し出す。

栓は当然開けている。

部長の日頃の調教もとい、躾の賜だ。

「どうぞ」

「あ、ありがとう。ご、ございます」

 房代はまだ切れたままの息を、ペットボトルの水で流し込む。

喉を鳴らす。

よほど急いできたのか、ペットボトルを半分ほど飲み干して、房代はやっと一息つけた。

 マッサージを再開された部長は、顔だけを房代に向ける。

「もう大丈夫かね?」

「はい、大丈夫です。

無差別格闘研究部の部長様、ありがとうございます。

それに部員さんも、お水ありがとうございました」

 房代は深々と頭を下げる。

さきほど直したメガネがまたずれた。

 ちなみに房代が部長を長ったらしく呼ぶのは、

房代が、名前+部長で部長を呼んだ時に、部長が、

「私は君の部長ではない。

君は我が部に所属してないからね」

 と返したからだ。

確かに外から見れば役職を呼称するのは筋違いだが、その立場を明確にするため、役職混みでの呼称が一般的になっているのだが。

房代は部長に納得したのか、それ以来長ったらしく呼ぶようになった。

 閑話休題。

「走って来て疲れただろう。

校内は広いからねえ。

そこの椅子にでもかけたまえよ」

 部長がテーブルの横の丸椅子を勧めるも、房代は遠慮する。

事態は可及的速やかな対処を待っているのだ。

「いえ、遠慮致します。

お勧め、ありがとうございました」

 急いでいそうな割に用件を中々切り出さない房子に、部長が誘い水を出す。

 目上に対していきなり用件だけを切り出すのも、気が引ける性格のようだ。

その真面目さに好感を覚えつつ、目上として誘い水を出す。

風紀委員の房代が、ここ無差別格闘研究部を訪ねる理由は一つである。

「それで今日はどうしたのかね?」

「はい、例により助太刀をお願い致したく」

 房代は真剣な表情で、用件を切り出した。

 ここ学生都市での治安維持は、生徒主体で行われている。

警察機構に値するのが、房代ら風紀委員会なのである。

房代の腕章には、風紀の文字が記されている。

学生総数百万飛んで二千百九十八人の学生都市の平和は、房代ら風紀委員にかかっているのだ。

「相手は何人かね?」

「目視できているだけで五人です。

立てこもっている箱の規模から見て、十人以下だと思われます」

 部長の表情からさきほどまでの、のんびり感が消える。

代わりに現れたのは、剣呑な眼の輝きだ。

眼の奥に嬉しさがにじみ出る。

肉食獣のそれが暴力的な匂いを放つ。

 房代は部長の豹変に、毎回のことであるが、小便が小さく漏れそうになった。

 風紀委員の仕事は、学生数に対して委員数が絶対的に足りないので、基本的には見回りとなる。

校内を巡回して、問題があれば、問題行動を取る学生に直接注意するのが仕事だ。

 だが、注意ですめば問題はないのだが、世の中には口で言っても分からない輩が多く存在する。

 注意無効の場合には、武力行使の権利が風紀委員には許可されてはいるが、鎮圧するにはいかんせん数が足りない。

また自身が規則を守るのを主な得意とし、他人には言葉での注意を得意とした風紀委員がその数を多く占める。

そのような性格だからあえて風紀委員になっているのであるが。

 そのため、武力行使という暴徒鎮圧の、暴力的な匂いを得意としている風紀委員は少ないのである。

そのような場合には、武力行使を得意とする格闘系の部に支援を要請するのが習わしだ。

 学生都市第三高等学園風紀委員、エリアAー3見回り担当である、房代が頼りにするのが、ここ無差別格闘研究部なのであった。

「報酬は?」

「犯人が立てこもっている部室ではどうでしょうか? 無差別格闘研究部のこれまでの支援を考慮した報酬になっております」

 部長の問いに房代が答える。

依頼には報酬をもって答えるのも、風紀委員と助太刀の習わしとなっている。

「ここも手狭になったからねえ」

 倉庫を間借りした部室を見回し、部長は言うなり起き上がる。

Tシャツとスパッツの上に、ハンガーにかけていた胴着を羽織る。

壁に立てかけられた樫の木の棒を手に取る。

「では、引き受けるとしようか」

 自分の背丈以上の長さの棒を、その感触を確かめるように軽く回す。

狭い部室でも誰にも当たらないように難なく振り回し、風圧だけが部員と房代の顔を打つ。

房代の前髪が風に跳ねる。

 部長の目が爛々と光っている。

肉食獣のそれに、房子はまた少し小便を漏らしそうになった。

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