太もものモチモチ感
「あん、そこそこ。
気持ちイイわ。
あん。どこ触ってんのよ」
部長は、床に畳を敷いてその上でうつ伏せに寝そべっている。
部員は、その足下に座り、膝立ちでせっせと部長のふくらはぎを揉んでいる。
「部長、いちいち声出さないで下さい。
せっかく見つけたコリを見失っちゃいます」
「吐息だけだと、ほんとにやらしくなっっちゃうから、台詞を付け加えてんの。
それにしても部員のマッサージは天国ね。極楽だわ」
太股の裏側を揉まれながら、部長はご満悦な表情を見せる。
「そこそこ、いいわ。
最高。
とろけちゃう」
抗議を無視し、全く声を抑えない部長に、部員はため息を付く。
諦めたのか、黙々とマッサージを続ける。
ふくらはぎ辺りで見つけたコリを、心臓方向へと持ち上げ、ほぐしていく。
部長の短パンは、ホットパンツよろしく丈が短い。
サイズはぴっちりでお尻のラインが丸わかりだ。
丸いお尻には振れないように、お尻の寸前でほぐしを止める。
「コリを取るためなら、がっつりお尻まで揉んでくれていいのよ。
なんなら前のリンパもほぐしてくれる?」
「結構です」
部長の誘いを部員はむげに断る。
前のリンパとは足の付け根部分だ。
恥ずかしがる部員に対し、部長はあっけらかんとしている。
性的な部分を意識しすぎる思春期青春真っ盛り健康優良健全安全青少年の部員と、どこかに性的な部分を置き忘れきた部長の組み合わせ。
ここは、無差別格闘研究部の部室である。
部とは言っても部員と部長の二人きりの部で、またその名前のとおり汎用的すぎて、どこの体育連盟にも所属していない。
そのため試合にも出ないので部費も同好会扱いで、ここの部室も空いていた倉庫の一つを使っているだけだ。
なのになぜ部であるのか、それは学生都市第三高等学園の七不思議の一つである。
昔カリスマ部長がいたからとの噂になっている。
今日は人体の研究と言うことで、部長は部員にマッサージをさせているのだった。
部長は部室に来るなり、
「部員、マッサージして」
と畳を敷き、その上に寝っ転がったのだ。
マッサージは、皮膚、リンパ線、血管、筋肉、筋膜、腱、筋、関節、骨格、血流などに把握して、そのコリをほぐしていくため、人体の構造の把握には一番なのだ。
と部長の言。昨日も一昨日もその前の日も、人体の研究というマッサージが続いていた。
来月の体育祭を控えて、ここ最近体育の授業が活発なのが、この人体研究が続く原因なのだが。
部長のマラソンで疲れた身体に、部員は黙々とマッサージを続ける。
それも触覚神経の発達のため、部員は目隠しでマッサージを行っている。
視覚情報を遮断し、肌感覚のみを頼りに、部長の肉体のコリを探り当てる。
中国武術で言う聴勁である。
目を閉じアイマスクをかけたまま、真っ暗な暗闇の中、手探りで部長の肌に振れる。
視覚情報無しのため、直立歩行だけでもバランスが崩れやすい。
バランス感覚、三半規管も鍛えられるメニューだ。
触覚が研ぎ澄まされ、手のひらに伝わる部長の肉の感触が妙に艶めかしく感じる。
「あん」
時折漏れる吐息に、鼓動が高鳴る。
視覚を遮断しているので、聴覚まで敏感になっている。
普段なら気にもならない声も、妙に生々しく感じる。
足の指、裏、甲、アキレス腱から、ふくらはぎ、脛、膝、膝裏、太股へとコリをほぐす。
コリを一つ一つ、撫で、さすり、揉み、叩き、伸ばし、指圧してほぐしていく。
根気のいる作業に、部員の額が汗ばむ。
いや、女体に振れている行為自体に、身体に熱を帯びている。
時折息を吐いて、熱を鎮める。
それでも喉は乾き、女の肌をわしづかみしたい衝動は、断続的に襲ってきていた。
溶岩のようにどろどろした熱が、部員自身を高ぶらせる。
ギャンギャンになりそうなのを、下っ腹に力を必要以上に入れ、抑える。
「ヒマねえ」
唐突に部長が世間話を呟いた。
さっきまで漏れていた吐息とのトーンの違いに、部員の熱が急速に冷める。
自分の衝動と部長のテンションのギャップに、思わず苦笑が漏れる。
興奮しているのは自分だけだ。
その事実が何だかおかしかった。
あんなに鷲掴みにしたかった部長のお尻への熱意が、かき消えた。
冷静になった部員の意識がそこで、外の気配に気づく。
外の通路から足音が聞こえてくる。
足音と言うより駆け音は、段々気配とともに近づいてきて、部室の前で止まった。




