力の反動
幸運は、いつの間にやら直立していた。
淡い光は失われている。
正宗は幸運に近づき、声をかける。
「宝玉の再生に、XY染色体にも関わらず、宝玉との適合って、アンタ何者?」
幸運は答えない。
無言のままだ。
沈黙に耐えられない性格なのか、はたまた命拾いの安堵か、はたまた大金星な勝利の高揚感か、正宗は一人言葉を続ける。
「何よ、聞いてんの?」
幸運はそれでも無言のままだ。
ノーリーアクションのままだった。
正宗は何か思いついたかのように、はっとした顔を浮かべる。そして、ばつが悪そうな照れくさそうな感じで、言葉を続ける。
「ありがとう」
無言。
正宗を顔をひつくかせながら、何とか言葉を吐き出す。
「ありがとうございます。
助けて頂いて、ありがとうございました。
ワタシ一人なら勝てませんでした。
本当にありがとうございました」
大げさに頭を下げる。それでも無言。
正宗が頭を下げたまま、しばしの時が流れる。
静かな夜の空気が辺りを流れる。
「ア、アンタ。
こ、これ以上どうしろって言うのよ!」
流石に耐えきれず、正宗が幸運に詰め寄る。
肩を掴んで揺さぶろうとした寸前、正宗は言葉を失った。
幸運は、白目をむき、鼻水と涎を垂らしていた。
そう、幸運はずっと気絶していたのだ。
初めての力の行使に、心身ともにオーバーヒート、メモリオーバー、ショートしていたのだった。
独り相撲をとっていた事実に、正宗は顔を真っ赤に染める。
また適合時に見とれてしまった姿と、この残念な姿とのギャップに、怒りさえ浮かんできた。
正宗は振りかぶって、その臑を大きく蹴り飛ばした。




