バイーン
そこに現れたのは、淡く輝くバカの姿だった。
全身が淡い光を放っている。
宝玉の力が身体中を駆けめぐっている証だ。
スゴい。
正宗は思わず息を飲んだ。
宝玉の力の行使時に、部位が瞬間的に光るのはよくある光景だ。
だが、全身が発光するなど、伝承でしか聞いたことがない。
その昔、伝説の適合者は全身から発光したと聞く。
それにキレイ。
全身から溢れる光は、粉となり消え、また溢れては消えていく。
浜辺によせるさざ波のような光のゆらぎ、はかなく消える光の粉、感傷的になりそうな消失と、強い生命力を感じさせる止めどなく溢れる光。
消滅と再生を繰り返す光の躍動に、幻想と原始が入り交じる。
正宗は目を奪われ、心を奪われたのか、我知らず一歩、光に歩み出していた。
「殺す!!」
胸の火傷を、雷撃の麻痺を回復しながら、虎の怒号が大気を震わせる。
間単に吹っ飛ばされた事に、獣の誇りが傷つけられたのだ。
激高に真正面から、アスファルトを砕くほどの蹴り足で光に突っ込む。
光は交わす気配はなく、真正面に突っ立ったままだ。
間の空気が、突進の速度に押しつぶされ破裂音を鳴らす。
光に虎が激突する。
光がふわり、と弾き飛ばされる。
正宗は状況を理解できない。
虎の衝撃力に対しての反作用が少なすぎる。
受け止めるならば、その反作用を地面なりが受けアスファルトが砕けるなりするはず。
またはじき返すにしても同様だ。
自分で飛んで衝撃を殺したにしても、衝撃力と同様の速度での移動が必要だ。
なのに、
ふわり、と弾き飛ばされる。
その理由が理解できなかった。
虎は激情に身を任せ、突進を繰り返す。
理由など理解する必要もない。
ふわりと弾き飛ぶ相手に、何度も突撃を繰り返す。
前後左右真上真下から、何度も何度も何度も体当たりを繰り返す。
無限に衝突を繰り返すことのできる体力の回復能力に任せる。
ふわりと弾き飛ぶトリックが何だろうと、適合者の宝玉の力は無尽蔵ではない。
先に力が尽きるのは相手だ。
圧倒的な彼我体力差で、自分の気が済むまでゴリ押しを繰り返す。
光は衝突の度に息を吐く。
身体を緩め、虎の衝撃を拡散する。
呼気による、衝撃の拡散である。ロシアに伝わる武術システマの武技の一つだ。
身体を緩めることで、与えられた衝撃を全身に分散し、全身のクッションで衝撃を和らげる。
衝突の度に、光の全身は衝撃に波に震え、まとう大気をも震わせ、その威力を拡散させる。
全身とまとう大気とのクッションで、その運動エネルギーを激減させているのだ。
上下左右真上真下、全身のどこに衝撃を受けようが、ブリージングで激減させる。
虎は真綿にぶちかましを繰り返しているようなものだ。
そしてまた、緩められると言うことは。




