死は快感
「力が、欲しい」
過去の経験をすべて再確認し、何とか現状の解決策を探す、走馬灯。
ゆっくり落ちる感覚に死の予感。
全身の負傷にも痛みを感じない無感覚。
世界とのつながりが切れた実感に、死んだなという確信。
やってやるぜ!!
などとの生命の息吹はゼロ。
バカはただただ淡々と事実を受け入れ始めていた。
無数の影に殺されかけ、それをセーラー服と日本刀に救われ、無数の影をぶっ飛ばし、調子に乗って大きな影に挑んで返り討ち。
拳は砕かれ、稲光を発する玉の盾にされ失神。
気が付けば、頭から落下している。
「力が、欲しい」
諦め半分、達観半分のそんなバカに声が聞こえる。
さっきは遠かったが、今度ははっきりと近くに聞こえる。
眼下ではセーラー服と日本刀が虎と激突し、大きく弾き飛ばされている。
その激突は何度も繰り返されるが、段々間隔が狭まり、セーラー服の動きがどんどん少なくなり、とうとう足が止まる。
止まったセーラーをサンドバックのように虎は一方的に叩き始める。
ここから見ても、セーラー服の劣勢は明らかだ。
負けるのは時間の問題だった。いやな女とはいえ命の恩人の危機に、淡々としていた意識が覚醒する。
「力が」
「オレも欲しいわ、ボケ。
くそったれー!」
食い気味にバカが叫ぶ。
ただ死にゆく自分を呪い、絶叫する。
その呪詛の叫びに、意識が光に吸い込まれた。




