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ラッキースケベ&アクション2  作者: LSA製作委員長
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乾坤一擲

 バカは真正面から突っ込む。

助走の勢いのまま前に倒れ込み、左足を踏み込む。

 踏み込んだ足が助走の慣性を股関節の回転へとつなげる。

関節がてこの原理で連関加速し、胸鎖関節へとつなげ、肩甲骨を発射する。

 発射されたエネルギーを腕の内への回転、内旋で集約し、拳へと伝える。

 最大最強最速の右ストレート。

 バカは、自分の拳が光って消えたようにさえ感じた。

 破裂音と共に、バカの右腕が押し戻される。

大きな影の無造作に伸ばされた手が、バカの拳を捉えていた。

 有り得ねえ。

 ここにきてやっとバカの動きが止まる。

 パンチを受け止める、確かにバトルマンガにはよくある光景だが、現実にはあり得ない。

何度も試したことはあるが、あり得る状況は二つだけ。

 まず一つ目はパンチが届かない距離。

それなら減速したパンチを手で受け止めることは可能。

 もう一つはこれもある意味同じだが、相手のパンチが届かない距離まで飛び退いて、減速したパンチを掴む方法の二つだけだ。

 その場にいて、加速中のパンチを掴むなど、掴めるという事は、先に放たれた加速中のパンチよりも、後追いの手が加速度で遙かに上回る必要がある。

 当然掴むためにはパンチの方向性を見切る必要もある。

完全に見切り、後手で圧倒的に速度を上回る。

一滴の汗もかかずに勝利すると同様に、あり得ない現実だった。

 だが、真正面から潰されたパンチの衝撃力が、拳の皮を破裂させている。

その事実があり得ない現実だった。

 真正面から跳ね返された衝撃に、肩が外れる。

咄嗟に腕を引こうとするバカを、大きな影は許さない。

一つ笑って、そのまま握りつぶす。

拳が砕け、折れた骨が皮膚を突き破る。

「チェスト!!」

 正宗がその隙に襲いかかる。

大きな影は右手でバカの右腕を掴んでいる。

あえて塞がっていない左から切りかかる。

 奴等は、人間と比べれば、遙かに高い能力を持っている。

視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚の五感はもちろん、異界特有の特殊能力まで有している。

人間など奴等から見れば、ただの餌だ。

 だがそれゆえに、奴等は人間を舐めている。

真正面からの力押し、ゴリ押しでも、自分達に傷一つつけられない人間を舐めている。

そこには、慢心、過信、自意識過剰などの心の隙が生まれやすい。

そこを突いて奴等を撃破してきたのが、我ら人間の最後の希望、適合者なのだ。

 正宗は跳躍し、さらに電柱を蹴って、天高く飛び上がっていた。

満月を背に、二十三異に頭上から襲いかかる。

落下の勢いを利用し、大上段から刀を振り下ろす。

予測通り、二十三異は左腕でガードする。

 右腕はバカを掴んだままだ。

気にしている余裕はない。

刃と腕が交錯する。

瞬間、影であった腕が毛むくじゃらに変身する。

影の皮を突き破って、そこから現れた。

柔らかく握っていた柄を、しっかりと握り締める。

 鋼の刃が堅い体毛と表皮を突き破り、刀身が腕の半ばにまでめり込む。

筋肉で減速させられ、骨で急停止させられる。

 正宗の不意打ちは失敗。

腕の切断さえも叶わず。そう二十三異は笑う。

だが、それこそが正宗の狙いだった。

「チェスト!!」

 正宗の気合いに答えるように、目釘(刃と鞘をつなぐ釘。

刃と鞘は刃の根本に穴を空けて、目釘でつながられる)として柄に埋め込まれた宝玉が光を放つ。

正宗は空中を蹴る。

物理限界さえもねじ曲げる宝玉がそれを可能にする。

一気に蹴られた空気が圧縮し、爆発する。

 その衝撃力を足から背中、背筋から腕、刀身へとつなげ、腹筋を締め上げる。

止められた刀身に力をつなげる。

動き出した刀身が骨を数瞬の間削り、その抑圧をバネに一気に解放される。

 骨を切断、腕をまるごと切断し、二十三異の首筋へと襲いかかる。

一撃目とは比べられないくらいのスピード、零距離からの攻撃。

威力は十分。

避ける時間などない。

 穫った!

 正宗の確信を、異力二十三異は上回る。

腕一本、牙一つが地面へと落ち、静かに黒く消えた。

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