自他より強い敵
「なんだあ、見たことねえ面だな」
振り抜いた先から、乱暴な声が響く。
気配の予想通り、遠くに影が浮かび上がってきていた。
招かねざる客の来訪である。
数は二十体以上。
小隊規模だ。
先ほどと数的には同じでも、真ん中に一際大きいのがいる。
小隊長クラスだ。武者震いに、刀の柄を握る手に力が入る。
刀身に大きな影の姿を映し、データベースに照合する。
刃の波紋に、検索結果の光が走り、情報が脳内に転送される。
異力二十三異の虎型人かつ人型虎の異虎。
正宗は驚きを飲み込んだ。
「草薙はどうした?」
大きな影の大声が耳を打つ。
ビビったら負けだ。
そう自分に言い聞かせ、何とか言い返す。
「天お姉様を気安く呼ばないで。
そっちこそ見たことない顔ね。
ルーキーかしら?」
知っている名前の出に、正宗は少し落ち着きを取り戻す。
何とか、首からの冷たい汗をせき止める。
「ああ、悪りい、悪りい。
俺に相対した奴は直ぐ死ぬからな。
覚えられないのも無理はねえ」
大きな影はそう言って、一人笑う。
その発言は言葉通りだ。
照合した情報によれば、初めて観測できたのは三百年前。
そこからの戦績は、一勝二十八敗一分。
生還率7パーセント以下だ。
一勝は数百年前の伝説の適合者、一分が十年前の天お姉様によるものだ。
自分との実力差は明白だった。
今日、ワタシ、死んだな。
正宗は開き直りを試みる。
がそう簡単には気持ちを切り替えられない。
死人にはなれない。
ならば背水の陣で、せめて一体でも多く道連れに。
力みが力みを呼び、全身が硬直する。
死の予感だけはするのか、脳裏に止めどなく、愛しのお姉様の姿が浮かんでくる。
身体も動かない。
頭もまとまらない。
自滅モードに正宗は強く頭を振って、蜻蛉(顔の横に両手で刀を真っ直ぐ天に突き刺した形。
上段からの最速最大の打ち下ろしに特化した構え)に構える。
何千何万何十万回と繰り返してきた構えでも、正宗の視野狭窄は治まらない。
その隙に大きな影は薄く笑い、指示を出していた。




