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ラッキースケベ&アクション2  作者: LSA製作委員長
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ブラックアウト

 気が付くと、道路に転がっていた。

足がもつれ、そのまま前に転倒したようだ。

身体を丸めた前受け身で、衝撃は和らげたようだった。

所々擦り傷はあるようだが、痛めたところはなさそうだった。

 どこまで走ってきたのか、とにかく影は見あたらない。

地面に大きく転がり、大の字に寝そべる。

 息が爆発的に漏れ、むせる。

激しい鼓動を感じる。

肩、胸であえぐ。

激しい息切れに身体が震える。

無数の毛穴から汗が浮かび、玉となり、つながって流れ出る。

全身が重い。

指一本動かしたくない。

首筋から汗が滝のように流れる。

 しばし荒い呼吸が続く。

時折むせる。

横になっては、大の字を繰り返す。

 足が痛い。

背中が痛い。

胸も苦しい。

額から流れる汗が眉毛を越える。

目に沁みる。

 このまま眠りたい。

 そんな欲求に襲われる。

気晴らしに周りを見回す。

その存在に、乾いた笑いが漏れた。

横になり、上体を起こす。

手をつき、緩慢な動作で立ち上がる。

 周りには、影が浮かび上がってきていた。

膝に両手を乗せ一休み。そこから上体を持ち上げる。

いつの間にか、先ほどと同じように、影に取り囲まれている。

逃げる体力は到底ない。

乾いた笑いが漏れ、両手をガードに上げる。

 ゆっくりな動作で影は包囲を狭める。

小細工する元気もない。

重い足を前の影にぶつける。

踏み込んで膝から先をしならせる。

 前蹴り。

素足での激走に血の滲んだコシ(指を上にのけぞらせた足指の根本の関節部分)が影の胸元を蹴り飛ばす。

振り向きざまに、背後の影を裏拳で殴り倒す。

 蹴られた影は後ろに倒れ、横殴りにされた影は横に倒れる。

他の影は何の躊躇も反応も見せず、包囲を縮めてくる。

掴む速さでなく、触れる遅さで手を伸ばしてくる。

 蹴った足と殴った裏拳の虚脱感を無視し、影の手を足で半円を描き払う。

 活面脚。

内側から半円を描いた踵の外側で手を左に弾く。

空いたガードに、右ストレートをぶち込む。

蹴った足の虚脱感に膝の力が抜ける。

右ストレートの威力は激減。

それでも何とか影を押し倒す。

 右拳の虚脱感。

これで両手両足すべてが、しびれたような、麻痺したような、何かを根こそぎ奪われたような感覚に支配される。

重いのか軽いのか何も感じないのか、四肢が動かない。

バランスを保って、立っているのがやっとだ。

淡々と背後から手が伸びてくる。

 左肩に虚脱感。

膝が崩れる。

 もう片方にも。

アスファルトに膝を着く。

 背中に。

両手を地面につき、何とか倒れないように。

 背中に無数。

肘から崩れ落ちる。

顔を道路に打ち付ける。

口の中が切れ、鉄の味が広がる。

 静かに地面に押さえつけられる。

腰、お尻、太股、膝裏、ふくらはぎ、二の腕、肩裏など背面の至る所から虚脱感。

みじろぎさえできない。

 地面に突っ伏す。

恐ろしさが心を占拠する。

 このまま死ぬのか?

 殺されるのか?

 よく分からない相手に?

 これは悪い夢だ。

そうに決まっている。

こんなの現実にあり得ない。

 このまま死ねば、何もしなくていい。

何も考えなくていい。

 全身が鉛のように重い。

強烈な眠気が襲ってくる。

目を一度でも閉じれば、二度と開けることができないような。身体が自由に動かない怖さ。

予感が心に忍び寄る。

 嫌だ、嫌だ、嫌だ。

 這い寄ってきた悪寒がすぐに心をからめ取る。

何かを自覚、確信させる。

 死にたくない、死にたくない、死にたくない。

 叫ぼうとしたのどに影が触れる。

身体の自由に加え、声さえも奪われる。

 交通事故なんかで突然死んだ人間は、今日自分が死ぬなんて一ミリも思っていなかったんだろうなあ。

 瞼に触れられる。

視界がブラックアウトする。

 嫌だ、死にたくない。

 涙さえ出ない。

意識が急速に遠のいていく。

 死にたくない。

死にたくない。

死にたく、な。

 影の手が頭部を覆い尽くし、意識さえ奪われた。

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