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ラッキースケベ&アクション2  作者: LSA製作委員長
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ホワイトアウト

「な、な、なんだ、て、てめら!!」

 驚きに大声を上げてしまった。

周りにいたそいつらの姿に、声を張り上げ震えを吹き飛ばす。

 いつのまにか周囲を無数の影が取り囲んでいた。

文字どおり、影は影で人をまるごと黒く塗りつぶしたような、そんな物体があなたを取り囲んでいる。距離は有効射程距離外。

殴れる間合いでも蹴れる間合いでもない。

絶妙に届かない距離だ。一番近いので五、いや六体。

「な、なんなんだ、てめら!!」

 もう一度叫んでしまった。

包囲の外を見ると、影が地面から浮かび上がって来ていたからだ。

 緩慢な速度でそれは地面から浮かんでくる。

頭、肩、腕、胸、腹、腰、下腹部、太股、膝、足とゆっくりゆっくりと浮き出てくる。

緩緩とではるが、確実に影の数が増えていく。

囲い込んだ影もじわりじわりと、自分に近づいてきているのに気づく。

 とにかくやばい。

警告! 警告! 警告!

 心臓が警鐘を鳴らす。

鼓動が速まり、脈拍が加速していく。

額の汗が噴き出てくる。

すぐにでも全力疾走で逃げ出したい恐怖に襲われる。

 脱出口は?

 無策な衝動をかみ殺し、辺りを見回す。

激しく首を振り、360度全周囲を確認する。

左斜め後ろが比較的手薄だ。

包囲も少なく、その先も数体しかいない。

影の数はどんどん増え、包囲も狭まって来ている。

迷っている時間はない。

振り返り、ロケットスタート。

買い出しに履いていた突っ掛けを脱ぎ捨て、

裸足で地面を蹴る。

 加速のまま影と影の間に、放課後よろしく体当たりをぶちかます。

二体は弾かれたように吹き飛び、その間を駆け抜け、包囲の先もすり抜け、全力疾走で逃げるはずだった。

 体当たりの手応えは十分。

どうやら影は体重も質感も人間と同じようだった。

跳ね飛ばした後、まるで長距離長時間低速走行ロングスローディスタンスを三時間ほどしたような膝の抜け方に、混乱しながらも何とか転倒を防ぐ。

だが足に力が入らない。

急には走れそうにない。

気力で何とか立ち上がる。

 肩と背中が異様に冷たく感じる。

そこから強烈な虚脱感が襲ってくる。

影を吹き飛ばした部位が、ひどく冷たい。

しびれるような麻痺したような、そんな感覚に差し込まれる。

背後に影の気配を感じる。

包囲網がこちらに向かってきている。

包囲網は抜けたままだ。

逃げるチャンスはまだ残っていた。

 奥歯を噛みしめ、息を止める。

呼吸を止めることで、瞬間的に筋肉のリミッターを外す。

裸足で道路を蹴る。

爪が肉に食い込み血が滲んだ。

 ゴー、ゴー、ゴー。

 無呼吸で走る。

影が手を伸ばしてくる。

大きく避けられるほど体力は残ってはいない。

すぐ横をすり抜ける。

間近で見ても影はやはり影だった。

全身を黒く塗りつぶされた影だった。

 一体目、右にすり抜けて回避。

ニ体目、右への慣性を殺し左へすり抜けて回避。

足の裏の皮がアスファルトにめくれ血が滲む。

急激な方向転換に足をくじいた気がするが無視。

三体目、真正面。

頭が浮かび上がってきている。

歩道横のブロック塀を三角跳びし、その頭上を飛び越える。

抜けた。

 漏れそうになる息を飲み込み、駆ける。

前に転倒しそうな体勢を、腕を思いっきり振ることで立て直しながら、激走する。

後先考えず、全力疾走。

息が続くまで、体内の酸素を使い果たすまで、全速力で突っ走る。

影をぶっちぎる。

「ラストー!!」

 残った息を吐き出し、ラストスパート。

余力がなくなるまで、死力を尽くして走り抜ける。

意識が遠のき、真っ白になった。

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