表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラッキースケベ&アクション2  作者: LSA製作委員長
14/34

閉鎖中間にようこそ

 不意にあなたの鼻歌が止まる。

高架の直前、街灯が二車線の道路を白く照らしている中、妙な違和感を覚える。

 何かを教えるように、街灯が少し明滅したような。

 そんな気がして、街灯を確認するも明滅はしておらず、蛍光灯がいつものように白く輝いている。

 気のせいか。

 そうは思えなかった。

いつも通りの通り道。

見慣れた風景が、何だか違う気がする。

目に映る景色はいつものそれだが、何か別の世界に紛れ込んでしまったような感覚。

風景と音がすべて消えて失せていくかのように、実感を遠くに感じる。

 あなたは立ち止まり、辺りを見回す。

やはり住み慣れた街の景色、だが何かが違うような。

 疲れているのか?

 今日一日の出来事を思い返す。

 朝は唐子に蹴られ、昼に理香ちゃんにからかわれ、放課後は部長を過剰に意識し、下校時には静香と雑談し、夜はまかなさんの手料理に舌鼓を打った。

 刺激が多すぎて疲れたのか、そう自問しながら頭を振る。

違和感は消えないが、ここにずっといる訳にもいかない。

違和感の正体が判明する気もしない。

足は重いが歩き出そう。

一つ息を吐き出し、一歩踏み出しながら前を向く。

高架の先に目を向ける。

 視界の奥の暗闇に目を奪われる。

ここから見ると暗いだけで、近づけば街灯が照らしている高架内。

そんな偽の暗闇に、あなたの足が勝手に動き出す。

 あそこに行かないと。

 それだけが心占める。

引き寄せられるように、あなたは歩き始める。

 よく分からないが、あそこに行かないと。

 呼ばれているような、いや呼ばれている感じではない。

自らあそこに行きたいとの欲求、行かねばならないとの義務感に駆られる。

 足が勝手に進んでいく。

買い出しという目的など頭からすっかり消え、ただ歩く。

あそこに向かい進んでいく。

 高架に入る。

天井のアスファルトが閉塞間を生む。

人気はない。

前にも後ろにも誰もいない。

街灯が高架内を照らす中、歩き、歩み、足を運ぶ。

 ここの高架は上を複数の路線が走っているため、少し長い。

あなたはただ、ただ踏み出す。

 あそこに行かないと。

 その意識だけが強く、他には何も考えられない。

あそことはどうやら、高架を抜けた先のようだ。後50メートル。

40。

30。

20。

15、10、98765、4321、0。

 高架を抜ける。

あそこにたどり着く。

あなたは安堵に包まれる。

途端、目を覚ます。

違和感を強烈に感じる。

 音が聞こえない。

 高架上の線路を走る音、歩道横の車道を行き交う車の音、遠くの喧噪が聞こえない。

いや、正確には聞こえるが、いつもより遙かに遠い。

風景はいつもどおりだが、臨場感が感じられない。

モニター越しに見ているような、そんな感覚を覚える。

 頭を振るが、違和感は消えない。

慌てて、手足をぼぐす。

手足の感覚はいつも通りだ。

その事実に胸をなで下ろす。

だが自分の肉体以外が別の世界にいるような、感覚がおかしくなったのか、疲れているのか、息を一つ吐いても、額から汗がにじみ始めた。

 なんだ、ここは?

 自分を落ち着かせるため、短い息を何度も吐く。

 バースト・ブリージング。

 ロシア発祥の武術システマの武技アーツの一つで、短い息を何度も吐き出すことで、精神を落ち着かせる技術だ。

バースト・ブリージングの後、その場での軽いジャンプを繰り返す。

空中に一旦浮くことで身体全体の力を抜き、全身をほぐす。

 よく分からない状況に対しての防衛本能か、あなたは知らず知らず戦闘体勢を整えていた。

心を研ぎ、体を澄ませる。

後は技を発揮するだけの状態にコンディションを仕上げる。

 最後に身体全体を締めながら息を吐く。

息吹で丹田に熱を込める。

目に輝きを取り戻し、あなたは警戒に何気なく周囲を見回し、そこで気づいた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ