マヨナカイダシ
「あら。
あなた、ごめんなさい。
明日の朝の食パンを買い忘れちゃって。
ちょっと出てくるわね」
コーヒーカップを片づけたあと、まかながエプエプロンを外しながら、呟く。
あれからあなたは、食事、くつろぎの時間、お風呂、就寝前の一時を過ごしていた。
時間は午後十一時半を回っている。
途中うたた寝などをしたため、もうこんな時間になっていた。
婦女子が徘徊する時間じゃない。
あなたは食事のお礼に、食パンを買いに出ることにした。
六月といっても真夏日を越える日も多い昨今だが、今日の夜は風があり過ごしやすい。
夜風の涼みは気持ち良さそうだ。
「あなた、いってらっしゃい。
気を付けてね。ありがとう」
玄関でまかなに手を振られながら、あなたは家を出る。
笑顔で見送られ、胸の奥が温かくなるの感じた。
寮を出て、近くの24時間営業のスーパーに向かう。
まかなは寮母さんで、あなたは寮生だ。
普段は出入りの業者が食事を宅配してくれるのだが、今日は定休日と言うことで寮母であるまかなさんが、手料理を振る舞ってくれたのだ。
早々ない幸運だ。
今日はツイている。
当日の夜と翌朝のセットで業者が宅配しているので、明日の朝も食事がない。
そのため明日の朝食も、まかさんが作ってくれる。
今日も明日もツイている。
あなたは口笛を吹きながら、歩く。
鼻歌を唄い、リズムに乗りながら歩く。
横断歩道の白い部分だけを歩き、歩道のへりを足取り軽く歩んでいく。
空を見上げれば、今夜は雲一つ無く、星々の輝きがよく見える。
夜風も涼しい。
満月に照らされながら、あなたは夜の散歩を楽しんでいた。
高架に差し掛かる。
ここを抜ければ、目的地の不夜城のスーパーだ。
頼まれた食パンを買い、家路に戻る。
これ以上ない単純な用事だミッションだ。