表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラッキースケベ&アクション2  作者: LSA製作委員長
12/34

舌で味わう

「あなた、出来上がりから食べていってね」

 カウンターキッチンの奥から、まかなが微笑む。

あなたは手を合わせ、命を頂きますの礼の後、箸に手を伸ばす。

まずはスープから一口頂く。

スプーンを使うのを忘れ、器を直に持ち一口味わう。

いつものくせに、まかなは笑みをこぼし、調理に戻る。

 あなたの口の中に広がる温かな液体。

丁度良い塩梅の塩加減が、浸透圧の調整機能を刺激し、快感を与えてくる。

一見薄味のカボチャのスープは、一見薄味故に抵抗無く舌に広がり、カボチャの味が消えた後の後味で、塩が少し強く効いてくる。

調味料の刺激に、舌が目覚める。

 スープの一口目から、これだ。

 前菜にメインディッシュ、箸休めの小鉢に、口直しのスイーツ。

これから続くであろう舌への美しい刺激の予感に、身体が震えるほどだ。

 あなたが、その美しさに言葉にならない嘆息を漏らす。

その間にも、まかなは料理、いや調理に動き続ける。

 肉を炒め、魚を焼き、鳥を蒸し、豚を煮る。

野菜を切り、きのこをほぐす。

 塩、砂糖、みりん、醤油、酒、胡椒など様々な調味料を使っては蓋を閉め、蓋を閉めては新たな調味料を使っている。

 フライパン、グリル、鍋、電子レンジ、蒸し器、フライなど調理道具を同時に駆使し、さらに皿への盛りつけ、あなたへの配膳、不要になった調理道具を洗っての片づけを同時にこなしていく。

何々しながら何々を繰り返し、待ちの空白時間を限りなく圧縮していく。

見事な手際、いやここまでくると、神業だ。

 のみならず、まかなは手元を忙しく動かしながら、あなたを見やる。

あなたの食べるスピードに合わせて、調理速度まで調整している。

 熱々のうちに、美味しく頂く。

 味が一番効く最高のタイミングで、食感を楽しみ、舌に広がる美しさに脳天に電流が走り、口の中に美しさが広がり、喉越しよく滑り、胃袋が温まっていく。

 あなたは、がっつきそうになるのを何とか自制心で抑え、咀嚼を多めに繰り返す。

噛めば噛むほど、美しさが広がるのだ。

先味、中味、後味。出汁により一つも単調な味のものはなく、その深さの恐れ多さに、一口で飲み込むなど勿体なくてできない。

 あなたの声にならない歓喜の叫びと咀嚼と恍惚が、小一時間ほど続いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ