トラタイガン
狙撃手が銃弾を放つ。
音速に近い弾丸を、流石の虎も目には捉えられない。
飛来する鉛玉を、野生のカンという第六感でおおざっぱに見切り、避ける。
狙撃手はその回避運動を予測し、次々に引き金を引く。
無数の薬莢が地面に降り注ぐ。
虎はゲリラ豪雨に等しい弾幕に、狙撃手との距離を詰めようにも詰められない。
どころか、むしろ遠ざけられる。忌々しさに喉を鳴らす。
先に曲がり角が見える。そこに逃げ込み、
いや身を隠し、一旦狙撃線を消す。
視界から消えることで間をとって、再アタック。
この恥辱は、肉片の一つさえ残さず食らうことで返す。
喉を唸らせ、虎は大きく跳躍し、曲がり角へと消える。
消えた尻尾を見送り、狙撃手は呼吸を緩める。
酸素借により、どっと汗が吹き出る。
毎秒三発の四分間連続発射。
計七百二十発の薬莢が地面に転がっている。
にも関わらず、虎に与えた損害は体毛をかすめた程度だ。
虎の野生カンによる予測力、それを生かし切る敏捷性。
一丁では当たる気配も無かった。
次は、二丁拳銃での十字砲火にしよう。
狙撃手は、熱くなった機関銃の砲身に、感謝するようにふっと息を吹きかける。
インカムで仲間に連絡を取った。