日のない街1
遅れました。
ガンダムのゲームに夢中でねー。
来年からは、こんな感じの投稿は難しくなると思われます。
2日後。
蒸気機関車に乗り込んで東側にある通称「日のない街」に向かった。
何なんだろうな。新幹線とかモノレールとか電車にしか乗ったことがないから、蒸気機関車は初めてだ。
先ず音がうるさい。そして遅い。
これが昔は画期的な交通機関だったんだろう。排気ガスが凄まじいのは、当時の技術力に排気ガスをどうこうする力は無かったんだろう。
着いた頃には夜になっていて、街灯が照らされてたが動きたくないので次の日に持ち越した。
朝になりました!
妹が抱きついていたから、ビックリしてハイテンション!
とりあえず街中を散策していれば、道の真ん中を馬車が通り過ぎていく。
目を奪われたのは一瞬。
ギョッと目を見張った。
「うげっ!?」
気分が悪くなったのは、俺だけだった。
馬車が牽引しているのは、ボロく白い一体型の服を着た人々を乗せた檻みたいな荷台だった。
首と両手足に鎖が繋がれた姿は、まさに奴隷だ。
東洋人もいれば、アフリカ人もいるし、白人もいれば、魔族もいる。人種の見本市だな、これは。
元の世界では有り得ないことを、異世界では平然のようにある。
物珍しそうに眺めてたみたいだから、ミレイさんが訊ねる。
「奴隷が珍しいか?」
「あっちの世界だと奴隷は悪しき制度だとか何とかで、なんやかんやで廃止されたんだよ」
「奴隷は便利だ。私たちがやりたがらない仕事を率先してやらせれるからな」
「そういう考えは………まあ、いいや」
俺の常識は通用しないのは解ってる。
「王族は奴隷を買わないんだろう?」
「当たり前だ。薄汚い輩を城に入れれば腐る」
薄汚い格好を強要させてるのは、そっちだろうに。
なんて奴隷の話題はスルーしよう。どの道、俺には助けられない。
凜が平然としてられるのは、そもそも俺以外の人間に対して興味がないからだろう。
ただブラブラと街を彷徨えば、道端に行き倒れた人を見つける。
酒瓶が近くを転がってることから、酔っ払った挙げ句の路上睡眠なんだろう。
「ミレイさん、路上で倒れてる人がいるから運んであげれば?」
「何故、私が?」
「お前、人々を守る騎士じゃん」
「私は王国を守る騎士であり、王族だ。決して多くの人々を守るために存在してる訳ではない」
「これはお願いなんだ。引き受けてくれよ」
「………仕方ありません。後で何か報酬を要求しようか」
お願いして後悔した。妹からの冷たい眼差しが怖い。
ミレイさんが飲んだくれの所へ赴き、運ぼうとする。
「ゲッ! コイツはっ!」
声を上げたのは、その直後のことだった。
この飲んだくれに心当たりがあるらしい。
俺も含めた他3人も、飲んだくれの顔を覗いて驚愕する。
「ゲェッ!? 有り得ねー!」
ルシファーだった。
イケメン台無しの酔っ払い状態。
ゲヘゲヘ、と笑いながら酒瓶を抱き締める。
「もうやってらんねえぜ」
とかルシファーは呟き、酒をグビグビ飲む。
「酒臭いなー」
鼻を手で塞いで臭いを遮断。漂う酒の臭いは、手で仰いでレミとミレイさんのどちらかに飛ばす。
俺の声を聞いた瞬間、ルシファーは飛び起きた。
「その声はマイエンジェルじゃないかっ!」
おまけに抱きついてきやがった。
「いい加減、そのネタはやめろ」
「ネタだと? 俺はいつだって本気だっ」
「マジだったのかよ」
本気で迫ってきてるから、余計にタチが悪い。
抱きつかれたならば、引き剥がそうとする。女性だったら優しく引き剥がそうとするが、相手はホモ野郎だ。情け無用。
これがただ抱きつかれただけだったら、引き剥がすだけに留めた。しかし、奴はあろうことか接吻しようとしてきやがった。
「ギャー! なんなんだよ、マジでやめろォッ!」
「嫌よ嫌よも好きの内、というやつさ。本当はキスされたいんだけど、素直に求めれなくて拒んでるだけなんだろう?」
「全く違うからな。普通に男にキスされんのが嫌に決まってるだろうが」
「簡単な話だ。俺を愛すべき人間だと思えば……………うほぉっ!?」
突如、ルシファーは素っ頓狂な声を上げる。
ルシファーの背後には凜がいて、ちょうど何があったのか見えないから何も把握できない。
「やめろォッ! 女に掴まれて悦ぶ俺じゃねーっ!」
「凜、どこを掴んでるのかな?」
「男性の神経とかが最も集中してるとこです」
「今すぐ離せー。お前は数多の男たちを貫いてきた相棒を見殺しにするつもりかっ!」
「お兄ちゃんの貞操を奪いたいんだ。へー………握りつぶしてしまおう」
「お許しを~」
酔っ払った状態なのか、ルシファーはむしろ悦んでいるようにも見えてしまうのが不思議だ。凜に男のアレを掴まれてるのに、俺から一向に離れてくれない。
ついでとばかりにキスしてこようとするもんだから、俺は奴の口を手で塞いだ。
途端、手の平にヌメッとした気持ち悪い感触が伝わってくる。
「おー、これが愛しのマイエンジェルの味かー。食後の紅茶以上の香りと風味を出してくれる」
なんでこんなにキモいんだろう。
さすがに怒りの沸点が臨界点を突破しても、責められる謂われはない。
「いい加減に離れろっ」
タコ殴りの刑に処して、ルシファーをボコボコにした後、ゆっくりと引き剥がしてトドメに股間を蹴り上げる。
「おぅ、素晴らしい愛だ………」
それでルシファーは酔いが覚めた。
「で、君らはよくたどり着けたね」
「さっさと課題を出してくれないかな?」
凜がルシファーの首を締め上げながら、問い詰める。爪が食い込んできてるから、相当な力を入れてるらしい。
「解った。解ったから、落ち着け。いきなり課題を出せ、と言われてもすぐには無理だ」
「じゃあ殺す」
「凜、短気は損気だぞ」
凜を羽交い締めにして、なんとか殺さないよう踏みとどまらせる。
ハズだった。
「ひゃんっ」
可愛らしい悲鳴。何だろうね、凜ってお腹が弱点なんだな。
「お兄ちゃん、白昼堂々襲うなんて………凜はいつだって心構えができてます」
「うん、襲わないから落ち着けよ。でないと、胸揉むぞ」
「えっ………」
期待するような眼差しを向ける凜。
俺は微笑んだ後、
「ミレイさんかレミの胸を………」
「そんな事しちゃ駄目。お兄ちゃんの手が汚れるぅー!」
ミレイさんとレミはショックを受けて、傷ついた顔をしている。
勝手に巻き込んだ挙げ句、汚い扱いをされらねぇー………誰だって傷つくだろう。
閑話休題。
「ルシファーだっけ? さっさとお兄ちゃんのために課題を出して」
「まあ、イイだろう。先ずはコレを渡しておいてやる」
渡したのは、数枚ほどに束ねられた書類。
奴隷名簿だった。
「今日の夜から奴隷売買が始まるから、何を買い取るかが俺の課題だ」
そう言って、ルシファーは笑いながら消え去った。
それにしても、早くリンカーンが現れてくれないかね。
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