過去の夢
番外編みたいなものなので、かなり短いです。
前述しておくけど、これは夢だ。それもかなりたちの悪い悪夢に分類される。
目の前には、過去の俺が幼なじみと一緒にいる。雰囲気としては告白を思わせるが、それは真っ向から否定せざるを得ないだろう。
これは俺が幼なじみを拒絶した日なのだから。
「俺はお前が嫌いだ。目の前から消えて無くなってほしいくらいに」
過去の俺が言い放った瞬間、幼なじみには茫然自失と立ち尽くした。
ショートカットの黒髪で、童顔で幼く見える顔立ち。モデルのようにスラリとした体躯を持つのが、幼なじみの桐生玲だ。
「なんで、そんなに妹が大事なの?」
責めるような口振り。
実を言ってしまえば、俺は玲と付き合っていた。その延長線といった感じで、玲に告白されて了承した。
楽しかったが、妹が許さなかった。
だから、俺は拒絶するしかなかった。
「うん、大事。だって唯一の家族で、妹が別れることを望んでるから叶えてやらないといけない」
「その妹が第一みたいな考えをやめてよ! ねぇ、私の何がいけなかったの?」
「愚問だ。全てがいけなかった」
何もかもがいけなかった。そもそも付き合ったのがいけなかった。
付き合わなければ、妹が暴走することも、張り合おうとして笑顔を振り撒いて痛い目を見ることもなかった。そして、逆恨みして玲にヒドいことをさせたのも。
付き合ったこと自体、そもそも駄目だったのだ。
「あ、そう。じゃあ何で付き合ったりしたの?」
「…………」
何も答えることが出来ない。
本音は胸の内に秘めていれば、それだけでいい。
悪いのは俺だけでいい。
「遊び半分だし、ちょっとした凜に嫉妬心を植え付けてもっと依存させてやろうとしたんだよ。いやー、本当に俺の妹は可愛い。なんで玲となんか付き合ったんだろうねー。どうかしてたよー」
笑いながら心にもないことを並べ立てる。
その後も玲に対して、嘘の理由を並べ立てる。惨めにさせるくらいに。
「本当に。なんで妹に劣る奴と幼なじみだったんだろうな」
―――パアァンッ!
渇いた音が頬に炸裂した。
さすがに惨めになったから、玲が平手打ちしたようだ。
何なんだろうな、頬の痛みとは全く違う痛みを感じる。
ズキズキと痛む頬をさすりながら、俺は玲を見る。
玲は泣きながら怒っていた。
「最低っ! このシスコンッ! だったら最初から付き合おうとしないでよっ」
「ノリで付き合いたかったんだよ。悪うござんすた」
―――ブチィッ!
この音はヤバい。なんでかって? これは堪忍袋の緒が切れた音だからさ。
「私もアンタみたいな最低なシスコン男と付き合ったこと自体、間違いだった! こんなイイ女と別れたことを後悔するくらい有名人になってやるっ!」
「やめとけ。妹に劣るお前が有名人になるのは不可能だ」
「精々そんなこと言ってるがいいさ」
それっきり。ケンカ別れした俺と幼なじみであった。
世界的に有名なアイドルとなったのだから、人って恐ろしいな。
ちなみにこの出来事をきっかけに、凜に兄離れさせたいと強く思うようにはならなかった。
それはまだ先の事だ。
なんでこんなにシビアな話題になり、シリアスな展開になったんだろうね。
これからは一喜一憂し、明るく話を展開していきたいと思う。
大体、上級悪魔たちが出てくるとギャグになります。彼らの存在自体、ギャグですので。
ヒロインたちのキャラをもっと個性を強くしていきたいと思う。