事前の会話
「ねぇ、それって本気?」
とあるカフェテリア。そこで俺は幸平と話していた。
「本気だよ。玲は阻止しようとするから、本当の狙いは君にだけ伝えるけど」
「凜ちゃんを兄離れさせたら、君がどうなるか前に言ったよね?」
「覚悟の上だよ。凜には普通の恋愛をしてほしい」
凜のブラコンはいわば生命維持装置みたいなもの。僕を好きでいることが、僕と凜を生き長らえさせている。僕も凜を好きでいなければならない。
どちらも生き残るために選んだ方法。僕と幸平と玲しか知らない真実。
だが僕はそれを壊す。どちらかしか生きれないならば、凜に生きていてほしい。そのために兄離れさせる。
「仮に成功したとして、貴方を好きな私はどんな気持ちになると思う?」
「悲しくなる」
「お願いだからやめて。玲が阻止する理由だって、氷雨に会えなくなるのが嫌だからよ」
だとしても、
「俺は全てを終わらせる」
「今のままでいいじゃない。君が無理してまで壊す必要がどこにある」
「無いよ。学校に行って部活に行けば、あの人たちとバカ騒ぎできるし……生徒会は辛いけど……」
ゲイの巣窟と化した生徒会では、夜な夜なお気に入りの男を連れ込んでは掘っているらしい。実際に被害に遭ったヤツは、ゲイの道に目覚めてしまっていた。
俺も掘られそうになった経験がある。うっかり生徒会長にカンチョーしてしまったがために、物凄い力で組み敷かれた。玲が駆けつけて助けられたが、もし来なかったら凜も俺も終わりだった。
「何で凜を助けたいワケ?」
「……家族だから」
「あの子さえいなければ、氷雨が両親に虐待されることもなかったのに」
「確かにそうだけど……」
「貴方が生き残る選択はないの?」
「あるにはある」
言ってしまっていいだろうか。別に問題ないか。どうせ僕の意思次第だし。
「凜を殺してしまえばいい、俺が」
「それ、本当?」
「だから、君らが出来る選択肢は現状維持かそれ以外」
「考え直して。現状維持がどれだけ周りを幸せにしてるか、解ってるでしょ?」
玲はアイドル活動しながら、楽しく暮らしている。幸平だって周りから慕われて、生徒会で頑張ってる。
僕は自由気ままに様々なことして、学校に迷惑を掛けている。あれ、僕だけ問題児じゃね?
「貴方にいなくなってほしいの」
「でも、このままでもタイムリミットがある」
「うっ……そうだけど」
「これは可能性だよ。運が良ければ、僕は目覚めるかもしれない」
「100%有り得ない事よ」
「まあ、いつかは目覚めるんだから良いんじゃないか。俺がアイツを殺したら、アイツは一生目覚めることはない」
この歪な関係を終わらせ、本当の兄妹に戻る最善策だ。
「これは賭けなんだ。どちらも生きるためのな」
「玲は……」
幸平がポツリと漏らす。
「絶対に阻止するわ。どんな事してでもね」
「説得するだけ無駄か」
それよりかだったら、何も告げないほうが最良かもしれぬ。
「じゃあ幸平、君が足止めして」
「無茶ぶりよ。あの子を止めるのは、至難の業」
「じゃあ逆に利用してやろう」
「勝手にしなさい。私は手伝わないから」
「手伝ってくれよ」
「嫌よ。そういうのは1人で頑張りなさい」
失敗は出来ないのに、協力者はゼロか。当然と言えば当然。邪魔しないだけマシか。
「1人でやるよ。絶対に起きてやるから」
「失敗するようだったら、最終手段で私が貴方だけを生き長らえるようにするわ」
「そうならないように気をつけるよ」
作戦開始の一週間前の話だ。
◇◆◇◆
何というか寝過ごした手前、起きるタイミングを失ってしまった。
なんかバッドエンドで終わりを迎えた感が否めない。寝たふりで居続けたばっかりに、起きた悲劇だ。
凜がまぁ、好きなヤツが出来てよかった。うん、よかった。
「そろそろ起きたらどうなのよ」
幸平にはバレていた。凜にもバレなかった渾身の演技がバレただと!?
「俺は植物状態なんだ。おとなしく眠らせて」
「バカ。普通に喋ってる時点で植物状態じゃないでしょう」
「バカとは何だ。俺は天より才能を賜った幸平にエッチなことしたいエロ助だぞ」
「いっぱいしてあげるから起きなさい」
やったぁー!
早速、飛び起きた俺はルパンダイブをした……のだが、鳩尾を蹴られた。
「おぅふ!」
「盛るなよ、gorilla」
「ヒドい。鬼嫁だ」
何はともあれ、
「成功か」
「賭けに勝ったようね」
「そっか」
ならば、やることは1つだ。
「凜が選んだ奴が、凜に相応しいかどうか調査してやる」
「シスコンになってるわよ」
「シスコンのなにが悪い。俺は妹が楽しそうに暮らす姿を見てハァハァ息を荒げるだけだ」
「目覚めなかったほうが良かったわ」
「先ずは凜と一緒にお風呂に入ることから、始めようかな」
そうしなければならない。起き上がった記念に一緒に風呂に入り、その瑞々しい肌と発育した体を堪能しなければ。
「阿呆!」
「いでっ」
金蹴り。何かが上にせり上がって、下りてこない。
お腹が痛い。
「しょうもない人ね、まったく」
「せっかくの人生だ。楽しまなきゃ損だ」
「そうよね。なら、私と一緒に風呂に入りなさい」
「よし、入ろうか」
「変わり身早いわ」
それが俺クォリティー。
起き上がった記念は、幸平と一緒に風呂に入ることとなった。
果たしてシスコンが悪化した彼が起き上がることにより、凜はハッピーエンドを迎えれるのか。
お兄ちゃんがあの手この手で邪魔してきます。虎視眈々と。
彼女が誰かとくっつけるかは、また別の話。




