決戦
前回のあらすじ。
全て終わらせると誓った俺は凜を泣かせました。
あれ、これだと悪い男にされちゃうよ。実際、女の子を泣かせる男は最低だから仕方ない。
そんなこんなで今は玲たちと対峙している。真田もいるけど、助けは期待しない。
玲の傍らにいるのは偽者の俺だ。彩華と白雪は知らん。
「何かな、ひーちゃん」
「俺がする事なんて決まっている。そこの偽者をブッ殺すことだ」
「へぇー、出来ると思ってるんだ」
「当たり前だろう。どっちが本物か思い知らせてやる」
声と足が震えているのは愛嬌だ。
人生初のガチで人殺しをする。トドメを刺してきたことはあるが、あれは人間じゃない。
今から殺すのは自分自身。
自分で自分を殺すのってなんて苦行だよ。
「でも、殺すっていっても直接手を下さないからな」
「どういう意味?」
「ロシアンルーレットだ」
武器を売ってる店で買ったリボルバー式の拳銃を2挺取り出す。
「はぁっ? そんなの許されるワケないでしょ!?」
すかさず玲が反論する。
下手したら2人とも死ぬかもしれないからだろう。
「スリルがあって楽しいじゃないか。普通に殺し合うのって退屈なんだよ」
「さすが俺だね。考えることは同じだ」
「違ってたらおかしいだろう」
「ハハッ、違いない」
本当に俺なのか怪しくなる。だって俺、あんなに裏表のない爽やかに笑わないし。必ず何か裏がありそうなニオイを漂わせる笑みしかしないからな。
互いに向かい合ってシリンダーを回してから、こめかみに銃口を当てる。
「なんか初めてのロシアンルーレットが自分自身だとは、世の中何が起こるか判らないものだな」
「そもそもコレをやる時って無いよ」
「いや、あるぞ。暇つぶしにはなる」
「さすが俺だ。考えることは同じだね」
撃鉄を起こした。
「じゃあ、いっせーの、で行くからな」
「うん」
今更になって怖い。
「いっせーの!」
バァンッ!!
轟く銃声。
ドサッと倒れる音がして目隠しの布を取れば、偽者の俺が倒れていた。頭を撃ち抜かれて。
運命の女神は僕に味方してくれたみたいだ。
「玲、僕の勝ちだ」
「そんな……でも、ひーちゃんの代わりはいくらでも」
「本物がいるから作れるんだろう?」
「だから、何よ……」
ニヤリと笑む。
「簡単な話さ。俺は本物を殺す」
「いきなり何言い出すの!」
「どうせ長く生きても無駄だからな。目も覚まさない人間なんて死んでるも同然だ」
真田が詰め寄った。スゴい剣幕だ。
「自殺志願者にでもなったつもり? ふざけんな!」
「凜は俺を本物だと言った。つまり俺も死ねば、これから偽者の俺が創られることはない」
「確かにそうだけど、氷雨が死ぬ必要はないじゃない!」
「さあ、知らん。俺は利用されるのは好きじゃない」
「そんな理由で死ぬなんて馬鹿げてる!」
大体の人間が下らない理由で自殺してるんだから、俺だって大して変わらない。
それを否定する権利は誰にもない。
「邪魔をするな。たかだか人が1人死ぬ程度でゴチャゴチャと……お前は見ず知らずの人間が死のうとしてるのを止めるワケでもないのに」
「少なくとも貴方は私の知り合いよ」
「同じ顔の人間だろう。要らん人間は消えなければならない」
「どういう意味よ!」
「こういう意味さ!」
答えなんて要らない。
いつの間にか凜が羽交い締めにして銃を奪っていたが、無理やり奪い返した。
「お兄ちゃんダメっ!」
「知らんな。俺は嫌気が差したんだよ。本当は眠ってた、とか知ったり偽者が現れたりとか……何なんだよ! ワケわかんねーのはこっちだ!」
「それでどうして死ぬの!」
「生きてたって意味がないからだ!」
「お兄ちゃんの分からず屋!」
「判りたくなんかないんだから、当たり前だろう」
ふぅ。改めて玲を見据える。
「玲はどうして俺の偽者を作ったりとかしてまで何をしたかったんだよ」
「えと……それは……」
煮え切らない返答。でも、ちゃんと答える。
「ひーちゃんが好きだから! ひーちゃんともっと一緒にいたかったの!」
「楽しかった?」
「楽しかったよ」
「なら、良かった」
「本気なの?」
「当たり前だ。本物とか偽者なんていなくならないと意味が無いからな」
何だか死ぬ前って喋りたがる傾向にあるのって本当だった。
でも、気分は悪くない。自分で決めたんだから、後悔も何もしていない。
興が醒めるとグダグダになるから、意を決して引き金を引いてしまおう。
3、2、1……。
「さよなら」
引き金を引き絞った。
今度こそアタリだったのか、弾丸が射出された。
これで良かったのかもしれない。




