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隣町に勇者

1日置きに投稿してる感じです。こういうのを保っていけたら、なんとなくイイなと思う。しかも8時投稿。


鬱な展開に注意です。そこまでヒドくないけど、ちょっぴり苦手な方は注意が必要かも………。



13人の勇者。

名前は違えど、似たような名前が映画にあった。

勇者とは、魔王を倒す適性(?)みたいなものを持った人間を意味する。

凜が勇者になったのは、その適性みたいなものを持っているからだろう。

で、肝心な魔王について。

全ての魔族の頂点に君臨する存在。超強いらしい。

魔王には、6人の上級魔族が付き従っているから、ソイツらを倒さなければ魔王へ辿り着けない。


「道のりは険しいな、凜」

「うん。でも、私にはお兄ちゃんがいるから頑張れるっ」


凜の満面の笑みに対して、俺はぎこちない笑みを返した。

今は王国から馬車を使い、それなりに離れた都市に来ていた。隣町、と表現するには少しばかり距離が微妙だが、王国から一番近いのが今立ち寄っている都市部だ。

別の街に入る緊張からぎこちなくなっているワケでなくて、原因は凜にある。

俺の右腕に抱きつき、寄り添うように歩く頬を赤らめた凜の艶やかな姿。

妹なのにドキドキしている。

妹なのに余裕を無くしている。

これでいいのか?


「いいわけあるかぁっ!」

「わっ、お兄ちゃんどうしたの?」

「いや、何でもない。あまりにも嬉しいもんだから」

「私も嬉しい………!」


レミが凜の笑顔に「癒される」と言っていたように、確かに笑顔は素晴らしい。特に凜の笑顔は格別だ。

ヤバい、さすがにシスコンみたくなってきた。

気分転換に周囲を見渡していれば、ある異変に気づく。


「この街、女性しかいないなぁ」

「確かに」

「お兄ちゃん以外の男がいないんて………なんて幸福なんだろう」


なぜか凜は赤く染まった頬に手を当て、腰をくねらせている。

街の大通りを歩いてるハズなのに、男性の姿が目に入らない。RPGだったら、そこらにいる女性から話を聞けるのだが、これはゲームじゃない。

どうしようか迷っていれば、沈黙を貫き通していたレミが動き出した。


「あの、ここには女性しかいないんですけど、何かあったんですか?」


すれ違おうとした女性に話し掛けたのだ。

女性は「旅の人?」と尋ね、頷くと答えてくれた。


「皆、原因不明の病気で倒れたのです。王様までもが倒れ、次々と街中の男たちが原因不明の病気みたいなものを患って倒れたのです。ここ2、3ヶ月くらいずっと治らないで寝たきりだから、心配なんです」

「なるほど。………ええと、リン様?」

「んー、何かな?」


普通に凜が返答しただけなのに、レミはあからさまに安堵した表情を浮かべる。

間が悪かっただけなのに、この会話の流れで普通に話し掛けても邪魔者扱いしないのに。ビクビクし過ぎだろ。

凜はアルバイト先で培った営業スマイルを使って、俺から離れて応じる。


「ここの街の調査をしてもよろしいですか? 私、道案内の他に各地の調査も命令として承っているので」

「うーん………お兄ちゃん、どうすればいいかな?」


俺に聞かないでほしい。

凜からしてみれば、頼れる兄なんだろうけど、それが苦痛でしかない。いつからか解らないけど。

だが嫌がる素振りを見せないで答えてあげる俺は、一体何がしたいんだろうな。


「道案内の人がいなくなるのはマズいからな。凜も手伝った方が良いんじゃないか?」

「うん、わかった」


気乗りはしてないのが、若干引きつった笑みの表情から理解できた。

苦笑いしながら、俺は凜の頭を撫でた。


「むー。いつもこれで流されてる気がする」

凜が頬を朱に染めて、そんな抗議をしてくる。他の人ならば、とんでもない勢いがあるのに、それが無い。

もし勢いがあったら、死にたくなってくる。


「では、手伝ってくれる?」

「そういうことだ。凜もだよな?」

「お兄ちゃんも手伝ってくれるの?」

「そうだけど」


なんだ、悪いのか?


「初めての共同作業だね?」

「えっ、いや、いつも共同作業やってるけど?」


何故「初めて」をレミをチラ見してから、強調したのかも知りたい。

疑問は尽きないけど、どうせ訊いても解らないから何も尋ねたりしない。

ここの国とは同盟関係にあり、レミが自らの素性を話すと王宮に入れた。ここでも女性が警備に当たっているから、少しばかり不安になる。


「しかし、最初の王宮とは違って小さいな」

「ここは我が国とは違って経済力は弱いから、必然的に王宮の建設費も安くなる」

「どこもかしこも同じなんだな」


経済力というのは、そのまま国の豊さと強さに反映される。この世界だと、王宮の造りに反映されるらしい。

応接間に案内されると、程なくしてスーツにも似た男物の軍服を着た女性が入ってくる。

中世ヨーロッパの時期かなと考えていたけど、ここに来て産業革命を経て近代化を歩む時代の服を着た人間が現れる。時代設定がおかしい。


「私は第2王女のミレイだ。よろしく」


和名でも通じそうな名前。凜とした佇まいは、軍人として教練を積んできたからであろう。長い金髪は綺麗で艶やかだ。

気品のある人だ。


「レミ・アルジェリアです」

「逢坂凜です」


俺は勇者でも何でもない付き添い人だから、名乗らなくても問題はない。

レミの隣に凜がイスに座り、対面にミレイさんが座る。俺は凜の後ろで壁に寄りかかる。

それがミレイさんには、お気に召さなかったらしい。


「おい、そこで突っ立ってるお前。名を言え」

「別に名乗らなくてもいいだろ? 俺はコイツの兄なんで」

「だから、名を言えと言っている」

「別に名乗るほどの者じゃないって」

「言わなければ、斬るぞ」


剣を突きつけられ、焦って両手を上げる。

だがこの行為は危険だった。


「お兄ちゃんに何してるかな? この阿婆擦れは」


凜は聖剣を抜き、ミレイさんの剣を横合いから斬りつけてへし折る。

逆に切っ先をミレイさんの首筋に立ててしまった。


「ねぇ、殺していい?」

「阿呆か! 大問題に発展するぞ!」

「些末な問題だよ?」


無邪気な笑顔で返すもんだから、なんか空回りしてるような錯覚に陥る。

でも、凜がやろうとしてることは人殺しだから、なんとしても止めさせなければならない。

あまり気乗りしないが、奥の手を使うしかない。


「凜、人を殺したら俺たちは赤の他人になるぞ。要するにお前の兄じゃなくなる」


鈍い金属音を鳴らし、凜の手から聖剣が落ちた。

凜の目は死に、全てが無くなってしまった絶望しきった表情となった。


「お兄ちゃんが凜のお兄ちゃんじゃなくなるお兄ちゃんが凜のお兄ちゃんじゃなくなるお兄ちゃんが凜のお兄ちゃんじゃなくなる――」


矢継ぎ早に同じ言葉を、呪詛のように呟いている。

レミは怯えて動けず、ミレイさんも呆然として動けない。

多大な罪悪感に苛まれるこの「お兄ちゃんじゃなくなる」発言。

効果抜群。ただし甚大な精神的被害を被る。

中学生の頃、俺と幼なじみの関係に嫉妬した凜がヒドいことを他人を使ってやらかしたことにより、俺が激昂して言い放った以来だ。結果として幼なじみはいなくなったし、俺には罪悪感と憂鬱な気分が残された。

あの時の凜の暴走………というか何というか、ヒドいものだった。トラウマアルバムに永久保存される。

この発言をした後の対処法は、簡単なことに抱き締めて囁いてあげる。


「冗談だよ。俺がお前のお兄ちゃんじゃなくなることは有り得ないから」

「………本当に?」

「本当だって」

「本当の本当に?いなくなったりしない?」

「そうだって。俺はいなくなったりしないよ」


最後に頭を撫でてやって、凜はようやく泣き止んで明るい笑顔を取り戻した。

こっちから抱き締めたのに、逆に凜が抱き締めて放さないから、俺は抱きつかれた状態で謝るしかなかった。


「ミレイさん、すみません。何分、コイツは俺に依存してる節があって過剰反応しちゃうんです。許してもらえませんか?」


尻餅をついていたミレイさんは立ち上がり、乱れた金髪を撫でた。


「こちらもイライラしていたことがあって、つい他人に当たってしまったようだ。お互い様だ」


謝ってくれたりしなかった。

凜を座らせ、ミレイさんも座り直す。

仕切り直した。

レミが尋ねる。


「先程、イライラしていたとありましたけど、やはりこの国の異変と何か関係があるんですか?」

「ご明察だ。父上も兄上も原因不明の病で倒れてしまったのでな。それが王族だけならまだしも、国民や騎士たちにも広がり、事態収拾の目処が立たなくてな」

「何か心当たりがありそうな事とかは」


原因不明なんだから、心当たりとか無いだろう。

そんな指摘したいけど、凜が笑顔で腕に抱きついているから、そっちの対処に集中していた。


「1つだけ………知ってそうな奴ならいる」

「あるんかい!」


思わずツッコミを入れてしまった。

コホン、と咳払いして笑って誤魔化して事なきを得る。


「町外れに廃棄された古びた城に吸血鬼が潜んでいる。ソイツが何か暗躍してるかもしれん」

「わかりました」


何が悪いのか気になった。けど、聞かない。

そう決めたのに、レミが耳打ちする。


「この国の異変を取り除きたいんですが、吸血鬼退治をしにいっていいかな?」

「いいんじゃないかな? あんまり気乗りしないけど、凜は?」

「お兄ちゃんが行くなら、凜も行くー」


えへへー、と凜は華やかな笑顔を振り撒く。

レミは「羨ましい」と見惚れているが、ミレイさんは全く動じていなかった。

ミレイさんは手を叩き、場を仕切る。


「吸血鬼退治をするんだったら、道案内も兼ねて私も同行しよう」


仲間が1人増えた。

どうでもいいけど、そろそろ凜は腕を放してくれないかね。恥ずかしいんだけど。




年齢について。

凜とレミ、15歳。

俺、17歳。高校三年生。

ミレイさん、17歳。

皆して設定年齢が若いですね。しかし、あまり現実的に見てしまうとつまらないので。それに個人的には、若い人がイイなと思う。

これだと、まるで年老いた爺さんのセリフじゃないか!


コホン。


次回は吸血鬼を退治します。

男たちを突然襲った病気の正体とは一体………!



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