表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/44

危機回避

定期テスト。

学校に通う者ならば必ず経験する鬼門。期末テスト同様、赤点取ったら補習がプレゼントされる。

まだ学校に入ったばかりで1ヶ月も経ってないのに、定期テストをやるんだから楽勝じゃないか。

それなのにウチの部員たちは、


「なんでそんなに死にそうなんだよ!」


部室に集まるゾンビもしくは干からびた死体が転がってる。

これが学園では上位に入る美少女たちなのに、あまりにも残念すぎだ。

テストまで一週間を切ったので、今はテスト週間で部活は原則活動禁止だ。

だがまぁ、ここは活動してもしなくても一緒なのでこうして集まっている。

ダラケていては、一向に学力は身につかない。

それでも机の上に勉強道具を広げているのは感心する。


「玲、勉強しなくていいのか?」

「無理。こんなの覚えれるハズがない」

「第一、逢坂さん。学年主席に私たち赤点組が勝てるハズがないでしょう?」


机に寝そべってゲームをやってるアリアスが言う。

アリアスのあの諦めムードは、俺の受験生だった頃を思い出す。

勉強もしないで遊んでばっかりだった中学三年生。学力は落ちもしなければ上がりもしなかったから、この鳳神館学園に余裕で合格した……。

というのが凛と一緒にいた世界での俺の受験活動。


「というワケで私はゲームでもして、現実逃避します」

「おい、廃部になっていいのか?」

「その前に赤点にならないようにしませんと」

『そうだそうだ』

「意識が低レベルだ」


総合点で勝つ云々以前に先ずは赤点を取らないといけない。

でも、勉強を教えるのは難しい。

俺は机の上にある教科書の要点を抜き出して、マーカーでチェックしておいた。

居心地が悪いから帰ろうとして、玲に袖を掴まれる。


「ひーくん、見捨てないで」


上目づかいに見上げる玲の瞳は潤んでいる。抜群の破壊力を発揮してる。


「俺、人に何かを教えるのは苦手なんだ」

「見殺しにしないで」

「要点だけでもまとめておくから、自分で何とかしろ」


罪悪感に苛まれながら、何とか部室から出ることが出来た。ああ、凛にも似たようなことしたっけ。

あれは凛が中学一年の期末テストの時だ。その時も要点だけまとめておいて勉強法とかは教えなかった。で、またキスされてる。

よく考えたら俺、実の妹とキスしまくってんじゃん!

うあー、やらかした。

頭を抱えて悶えてる。傍目から見れば、変人にしか見えない。


「何してるの?」


その変人に話し掛けるなんて、君も変人かもしれない―――グハッ!


「私を変な部類にカテゴリーしないで」


読心術に長けてる様子。

それにしてもボディブローはキツい。油断すると吐いちゃうかも。

名を明かそう。この暴力女は部を潰そうとする悪の化身、高橋桜だと。


「おや、今日はボーイフレンドがいない様子」

「その言葉に含みを感じるんだけど……」

「で、卒業したら結婚か。世は晩婚化してるというに早いな。さすがは幼なじみ」

「妄想も大概にして」


真顔で返されたので、精神的に居たたまれなくなった。

やはり俺の記憶通りに桜は苑馬のことを『幼なじみ』としてしか見ていない。

だが、それがヤバい。

元々、この茶番は苑馬が仕掛けたことだ。桜が俺に話し掛けようとしていたのが気に入らなかったらしい。

勿論そんな事実は確認されてない。むしろ話すキッカケを与えただろうが?

まあ、過ぎたものは仕方ない。

ここは某女優の交渉術を披露してやろう。


「あのさ、この戦いは不毛だと思うから、やめにしないか?」

「はぁ、なんで?」

「俺らが総合点で高橋さんに勝てないから」

「むしろ好都合じゃん」

「こっちは赤点を取らないようにするのが精一杯で……」

「じゃあ赤点取ったら補習は倍にしてあげるよう、先生と掛け合ってくる」


おや、悪化した?


「待って、待ってくれ! 俺を置いてくんじゃないジョニー!」

「私はジョニーじゃなーい!」

「じゃあハゲ茶瓶」

「死に腐れろ」

「ガハッ!」


優雅な脚線美を描いて蹴りが顔面にヒットした。

ああ、思い出した。

桜に蹴られたんだった。


「いったいな。お前は人を殺したいのか?」

「うるさい。変なことを言うな」


ですよね。解ってます、俺が悪かったです。


「ところで高橋さん。ここにいると前みたいに襲われるよ」

「ご忠告ありがとう。素直に受け取っておくわ」


やべ、手遅れになりそう。

去り際、桜がこちらに振り返る。


「ハンデをあげるわ」

「マジで」

「勉強を見てあげる」

「あ」


別に要らないんだよなー。


「ありがとうございます」


一応感謝すると、桜は満足して立ち去った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ