金色の同一人物(修正版)
ちょっと名前を変更します。
被ってしまい申し訳ありません。
俺と野鳥監察部の部長の結城彩華との出会いを語ろう。
そもそも最初から既存していた部活ではなく、新しく創設した部だ。
彩華が部長となって俺が部員。
設立目的は今でも解っていない。突然現れて入部させられたんだから、どうしようもない。
部は出来て高橋桜が変な因縁をつけて現れ、定期テストで俺が圧倒的な差をつけて勝った。その後、桜は入部した。彩華が全ての科目で赤点を取ったのは爽快だった。
まあ、彩華との出会いはゴールデンウイークが終わった2日後だ。
うろ覚えだけど、確か転校してくるんだっけ。
「ねぇねぇ、ひーくんの作った世界での私って、どんな役回り?」
必死に人が思い出してる時に話しかけるな。
モノレールによる通学だから、朝の通勤ラッシュと被ってしまう。
それでも女子高生が多く、痴漢と間違われないために両手をきちんと挙げておく必要がある。
そんな中で玲の質問に答える。
「玲をモデルにした奴か……気になるのか?」
「気になるよ」
「そうか……」
いちいち覚えてないんだよなー。
主要な人物たちは俺の知ってる人間で固めたハズなのに、ミレイやらレミ、ミユとミオ姉妹みたいな知らない人間が加わっている。特に姉妹は危なかった。うっかり「依存させるのはイイか」なんて考え始めていたからだ。
でも、確か玲の立ち位置は……。
「魔王を倒した後に出るラスボスだな」
「創造の神、みたいな?」
「まあ、会議に出席してなかったから存在してかは不明だけど」
「何その曖昧なキャラ! 私の喜びを返せ。でないと痴漢で捕まえる」
「ひでー脅しだ」
玲なら本当にやりかねないから、素直に謝っておく。
ここで俺のシナリオを簡単に言うと、凜が上級悪魔の課題をクリアしながら気持ちに変化が訪れ、どっかの国の王子に恋して次第に兄離れする感じ。最後に玲の課題を王子と一緒にクリアして使命を果たした時、好きだった王子と一緒に添い遂げると告げて異世界に残る、というのが俺の描いたシナリオ。
結果、全く上手くいかなかった。
なんで俺がでしゃばり、話を進める上で関係無さそうなヤツが仲間になるんだよ。
「本当、世界って計算外のことが起こるなー」
なんて年寄りみたいなことを感慨深げに呟いた時だ。
偶然にも痴漢の犯行現場を見てしまった。
女子高生の尻をスカート越しに触る中年男。下品な笑みが気持ち悪い。
痴漢って本当にされてる人って声を上げないことが多いんだよな。で、金を取ってこようとするヤツに限って可愛くなかったり、やたらと騒ぎ立ててくる。
人と人の間を縫うように移動するのは、満員の車内ではいろんな意味で難しい。
下手をすると痴漢と間違われる。
痴漢されてる女性と中年男の間に割って入ることが出来たことに、俺は歓喜のあまり涙が出そうだった。
さて、俺は笑顔で中年男の右肩を軽く叩いた。
「痴漢はれっきとした犯罪ですよ。解っててやってます?」
「な、何を言ってるのかね。私は何もしていない」
「まあ、シラを切るのは良いことですよ。認めたら、取り押さえなきゃいけないし。誰だって捕まりたくないでしょ?」
「当たり前だ。たかが痴漢ごときで」
「おや、痴漢されてたんですね」
「しま……っ!」
ニヤニヤとした笑みで俺は中年男と肩を組む。
「とりあえず『もうしません』と誓うんだったら、許してやるよ」
コクコクと中年男は頷いて逃げるように隣の車両へ移っていった。
いつの間にか隣に移動してきていた玲がコッソリ耳打ちする。
「ひーくん、正義の味方だねー」
「脅迫して金でも奪ってればよかった」
「そうなると逆にひーくんが捕まるよ。ついでに助けた女の子が共犯として疑われて、可哀想なめに遭っちゃうかも」
「世知辛い世の中だなー」
「法律は守ろう」
そうだね。
俺は痴漢に遭っていた少女を他の男性から守るように立つ。
「さっきの痴漢、捕まえたら良かったんだけど、なんかゴメン」
「いえいえ、こちらこそ助けてくれてありがとー」
チラッと顔を確認しようとしたら、玲の後頭部でちょっとした見れなかった。
それでも、ビックリ仰天だ。
金髪に蒼い瞳。
間違いなくミレイにそっくりの女性だった。
「わぁー、可愛い! どこの国の人?」
「ガリアです」
「ふーん、そうなんだー」
絶対に判っていないな、玲よ。
ガリアはゲームにも出てたけど、現在のフランスのことだ。
そして異世界のミレイやレミがいる国の名前と同一だ。
「留学生?」
「はい。近くの鳳神館学園に通う予定です」
当て字も甚だしい鳳神館学園は、俺と玲が通う学園だ。
ちなみに俺の記憶では、こんな金髪美少女と出会ったことも学園にいたなんて記憶も無い。
なんて思ってると、玲が驚いたように声を上げる。
「同じ学校じゃん! これから仲良くしよう!」
「はい」
「お前ら、周りの迷惑だから声を小さくしろ」
「ゴメンね、ヌリ壁くん」
「その認識はやめようか」
そんなに平べったくない。
まあ、金髪少女の笑った顔が可愛くて声が出なかった。
「笑った顔も可愛いねー。ねぇ、名前は?」
完全にナンパしてるようにしか見えない。
「アリアス・シエナです。普通にアリアスと呼んでください。あの、あなたがたは」
「桐生玲だよ。よろしくー」
女子は仲良くなるのが速くて結構。
アリアスの視線を感じるけど、気にしない。
そしたら、玲に脇腹を指で突かれる。
「腋は性感なんだから突くな。で、なんだよ」
「アリアスに自己紹介するの」
「はいはい」
アリアスのほうを向くと、改めてミレイに似てると思う。
「逢坂氷雨……だ」
自分の名前を言って衝撃を受けた。
今まで下の名前は言っても、全て「―――」になって誰にも聞き取られなかったからだ。
感動のあまり泣きそうだ。
「ワオッ! いきなりどうかしたんですかっ?」
「いや、自分の名前を言えたから嬉しくて」
「変な人です。……やっぱり」
やっぱり?
どういう意味なのか気になるが、モノレールは目的の駅に辿り着いた。人ごみに流されるがままに降りて結局、問い詰めることは出来なかった。不意にポケットに違和感を感じて、中を探ると小さく折られたメモ用紙が入っていた。
『昼休み、図書室に来てください。大事な話です。アリアス・シエナより』
何だろうな。
息切れ状態の玲が合流してきて、メモ用紙を覗き見た。
「まさか、告白?」
「違うだろ。たかが痴漢されて助けられたからって、その相手を好きになるか?」
「イケメンなら有り」
「だろう? 俺、あんまり美形じゃないから惚れられるワケないんだよ。どちらかというと、痴漢と決めつけられる人間だからな」
「ひーくんだって充分……可愛いよ」
「うあー」
褒められても嬉しくない褒め言葉に頭を抱えた。
「じゃあ、告白じゃないんだったら何になるの?」
「アリアスって俺が作った世界にいた人に似てたんだ」
「面識のある人ってこと?」
「いや、全くない。そもそも、この世界で俺が知ってる人間は8人か9人くらいだ」
「異世界で面識はあるってことだよね?」
「うん」
「とりあえずアリアスに会ってみよう」
何故かついてくる気満々な玲。
「私だって知りたい。それにひーくんだけに背負わせたくない」
「判ったよ」
告白だ、と言い張っておけばよかった。
如何なる時でも冷静で論理的に動く、をモットーに掲げていたことが裏目に出るとは。もう後戻りは出来ないと実感した。




