泥棒猫
はい、今日は調子が良かったので連続投稿です。
視点は別の人間が担当します。
『ニャハハハ、お前の兄ちゃんは貰ったニャー』
私の本へ届いた手紙には、そのふざけた文が書かれていた。
冗談も甚だしい。何が『怪盗キャットアイ』だ。パクリをしてるから、余計に苛立つ。
とりあえず、この手紙を届けた泥棒猫は殺処分だ。
「どうかしたのか?」
振り向けば、冷や汗だらだらのミレイがいた。この女は私とお兄ちゃんの仲を引き裂こうとする邪魔者だ。
その更に後ろでは、引きつった笑みで青ざめてるレミがいる。こっちはヘタレでただのバカだから、特に警戒する必要はない。
ていうか、なんで一様に冷や汗を流してたり、青ざめてるのか理解不能だ。
それよりも、
「貴方たちは何をしてたのかな?」
湧き上がる殺意を必死に押しとどめて訊いた相手は、恐怖のあまり全身を震わせるミユとミオの姉妹だ。
どいつもこいつも人を恐怖の対象として見てくるから、気分が悪い。お兄ちゃんはそんな対象として見てこないから、素直に嬉しい。
私はこんなにも優しい人間なのにねー。
「力及ばず、申し訳ありませんでした」
「謝んなくてもいいよ。事後だし」
俯き今にも泣き出しそうな姉妹を、私は今すぐにでも抱きしめたい。もう可愛くてたまんない!
お兄ちゃん以外の人間に対して感情表現が出来ないから、それが伝わるハズもなくね。
傍から見れば、私が姉妹を責めてるようにしか見えてない。
「あのね、お兄ちゃんを攫ったこそ泥はどこに行ったかな?」
「あぅ………その………わかりません」
「ふぅーん」
キャットアイ、なんてふざけた名前を名乗ってるから、逃げ足が速い。
「特徴とかは」
「獣人族です」
なるほどー。
中学3年のゴールデンウイークの最中にお兄ちゃんが、無理やり入らされた部活の部長から手渡されたアニメにケモノ耳を生やしたキャラクターがたくさん出るヤツがあった。中年のムキムキのオッサンがケモノ耳を生やしてたのは、最早トラウマである。
語尾とか笑い方に「ニャ」を付けてるから、恐らく泥棒は猫耳を生やしてるんだろう。
ネコ耳、ねぇー。
絶対に私のほうが似合ってるし、それにお兄ちゃんを萌えさせるのは私だけなのに………! ただでさえ、お兄ちゃんが所属する部活には、とてつもなく可愛いロリ美少女がいて立場が揺らぎつつあるというに。
ここに来て更なるライバルの登場に、私は一層険しい表情を浮かべる。
私は生まれつき目つきがヤクザ以上に悪いから、鋭く睨んでるように見えてしまう。
皆、私はこんなにも優しいのに敬遠されちゃうんだよねー。
「まあ、いいわ。しょうがないから奪還しないとね!」
「咎めないんですか?」
「あ………」
そんなビクビク震えていられると、さすがの私でも罪悪感で一杯になっちゃうって!
気づけば、私は深々と溜め息を吐いていた。
「お仕置きしたいけど、今はお兄ちゃんを助けたい気持ちで一杯だから後にしてちょうだい」
「はい」
ミユだってなんやかんやで誰に対しても、無表情でいるよね。私と似てるから、何となくそこだけは嫌い。
そう思ってれば、私たちがいる宿の窓に人影が現れる。
ネコ耳と尻尾………。間違いない、ヤツだ!
すぐに抜刀するが、斬りかかったりしない。
「ニャハー、元気ー?」
笑顔で言ってくる泥棒猫は、軽快な動きで私の目の前に近寄る。
「お前の兄ちゃん、でーべそー」
ブチッ!
「殺ス!」
だがミレイに羽交い締めにされて、泥棒猫の首を斬ることが出来なかった。
「離してっ。ヤツを殺せない!」
「落ち着け。まだ殺すな」
「そうだニャー。私を殺しちゃったら、お前の兄ちゃんを取り戻すことも何もかも出来なくなるニャ」
「先ずはそのあざとい喋り方を正しなさい。わざとやってるでしょう?」
「ニャッ!? これはわざとじゃないニャ!」
わざとに見えるもんだから、そう言われても仕方ない。
ていうか、
「ここに来たんだったら、さっさとお兄ちゃんの居場所を吐きなさい!」
「嫌ニャ」
大丈夫。私は拷問めとか得意だから…………って、違う。ここは抑えなきゃ!
「んー? そんなに教えてほしかったニャ?」
泥棒猫は冷や汗を浮かべながら、能天気な笑顔で尋ねる。
「そうニャニャー」
腕を組んで考え始める。
しばらくして、泥棒猫は手を叩く。
「私が出す課題をクリアしちゃったら、兄ちゃんを返してやるニャー」
そう来たか。
「イイじゃない。受けて立つわ」
「自信満々ニャ。では、早速………」
パチン。
泥棒猫が指を鳴らした瞬間には、周囲は黒く何もかも見えなくなった。
「それでは課題開始ニャ。ヤるべきこととか自ずと解ってくるから、精々足掻くニャ」
ニャハハハ、と泥棒猫の高笑いが遠くから聞こえてきた。
イライラして腹立たしい。
武器も持ってないし、誰もいない。私だけがいる真っ黒な空間。
突如、光が差して場所が広がる。
「ここは………」
私とお兄ちゃんが通ってた中学校の中庭だった。
過去に起きた真実を知ることによって、凜は何を思うんだろうね。
しばらく主人公は、ココアに捕らわれたままで動けないから、まだまだ凜の視点が続きます。




