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ダイエー帝国の化け猫

ダイエー帝国。

どこぞのスーパーからイオングループに吸収され、傘下に入ったあのダイエーではない。

漢字読みは、大英帝国である。叉の名前をブリテン…………ブリテンだ。

西側最大の王国にして、数多の植民地を手に入れた最強の国だ。

股裂きー、なんて書いてあるが理解不能なので無視!

とりあえず機関車で、ブリテンに移動した。


「楽しみだね、お兄ちゃん!」


満面の笑みを向けてくる凜の頭を、俺は優しく撫でる。ルシファーの課題によって強制的に仲違いさせられた姉妹奴隷は、揃って元凶である俺を睨んでくる。悪かったです、すみませんでした。

あれから姉妹の様子はといえば、姉から謝って仲直りした。真実と仲違いさせた元凶を告発すると同時に。

おかげで凜ではなく、俺が泥を被ってしまった。この一件で凜が何か1つでも学んでくれれば、恨まれても文句は言わない。

でも、何も学ばなくて終わったので文句どころか、不満しかない。

さて、そんなこんなで大英帝国に着きました。


「私は一旦、ここの王様に挨拶しないといけないからな」


そんな事を言ったミレイは、傍観者仲間のレミを引っ張る。

ついでに………あらら、俺も?


「ちょっとお兄ちゃんを連れて行く必要があるのっ?」


凜が抗議してくる。


「対外的に勇者は男だってことにしておいた方が、何かと楽なんだ」

「勇者は私なの! お兄ちゃんは絶対に一緒に行かせないんだからねっ!」

「でも、お前は兄と一緒じゃないと駄目なんだろう?」

「あ、当たり前だもん!」


妹なんだからっ、と凜は赤ら顔で言う。

全く理解不能だね。妹だから、というのは理由にはならない。

ミレイが俺か凜のどちらかしか連れて行けない理由は、単にミオとミユに誰かがついていなければならないからだ。

だったら、レミを置いていけばいいじゃないか、なんて考えるけど、事はそう簡単ではない。

同盟国とは言え、一国の王女であるミレイにお供がいないのは不審がられるのがオチだ。姉妹は平民って扱いだから、王宮には入れない。

要約すれば、全員で行けたら苦労しない。

ここは俺が何とかしよう。


「凜、行っておいで」

「でも、お兄ちゃん………」

「偶には自立することが必要だよ、お兄ちゃん命令だから」

「あぅぅ………」


これを言われてしまえば、凜は逆らえない。

何でも言うことを素直に聞いてくれたり、いろんな表情を見せてくる妹は正直に言ってしまえば、可愛くてしょうがない。過保護になってもおかしくないだろう。

だが俺はシスコンではない!

行動はどうであれ、凜が俺がいなくても1人で生きていけることを願ってる。

ていうか、最初から「お兄ちゃん命令だよー」ってことで「自立するように」って命令すれば終わり、ということを思うヤツがいる。ソイツらは何も考えていない。

真に凜のためを思うならば、兄である俺が強制的に自立を促してるようじゃ駄目なんだ。

なんて考えてれば、凜が「わかった」と不機嫌ながらに頷いてくれていた。


「頑張れよ、凜。決して失礼な態度を取るんじゃないぞ」

「相手が下品な目で見てこなかったらね」

「そんな目で見てくるヤツがいたら、俺が殴り飛ばしてやるよ」

「はぁっ? べ、別にお兄ちゃんの手なんか借りなくても自分で何とか出来るもんっ」


あっそー。


「じゃあ、ミレイと……………レミ。凜を頼みます」

「今一瞬、私の名前を忘れたでしょうっ?」


はて、何のこっちゃやねん。

追求の手を休めないレミを無理やり送り出し、残ったのは姉妹奴隷と俺だった。

うん、すげー睨んでるね。


「とりあえず………すまなかった」

「どうして家族で寄り添うことを許容してくれなかったんですか?」

「それはだな………」

「ご主人だって、妹君に依存されてるのに」

「アイツが依存してるからな」


そこは間違えてはならない。

よくよく考えてみれば、俺は姉妹にとやかく言える立場では無かったのだ。これは同族嫌悪というヤツだろう。

姉妹で依存してるのが重なって、俺も似たようなもんだから気に食わなかったのだ。所詮、「依存はいけない」とか最もらしいことを言っておきながら、他人と自分が似てるのが許せなかった小さい人間だっただけのこと。


「すみませんでした」

「何で謝れるんですか?」

「悪いことをしたなあ、とか思ってるから」

「貴方は私たちのご主人でしょ? 下々の人間に示しがつかないので、ご主人は私たちのような人間に頭を下げる必要はありません」

「そうですか」


謝り損じゃねーか!

罪悪感とか諸々の憂鬱まっしぐらの思いやら何やらが全て、ミユのセリフで吹き飛ばされた。非常に清々しいです。

なんて思っていれば、


「どうせ私たちはご主人を嫌いになるだけです」

「ギャバー!」


嫌い。

その言葉が頭の中を、ずっと反芻する。

長い時間が過ぎたようだった。

あんまり面と向かって「嫌い」なんて言われたことがなかっただけに、ミユの言ったことは深く俺の心を抉った。

態度で示されるよりも、ずっとツラい。


「そっか、嫌われたか。とりあえず街を見て回るか?」

「所詮、私たちは従者だから気になさらないんですね」


ミユが悲しそうな目で見上げる。

誤解されがちだけど、俺はかなりショックを受けている。俺はそもそも、感情表現が上手くない。


「ミオはまた、お姉ちゃんに抱きつくのか?」


あからさまな話題逸らしだった。


「まだお姉ちゃんに甘えたいもん」

「そうなんだ。でも、甘えれるのは今だけだよ」

「なんで?」

「将来的には、どこかに嫁ぐからだ。いや、嫁がせる」

『え………?』


それは姉のミユにも衝撃を与えた。

これは図書館知識だけど、奴隷が平民になるのは主人の了解を得れば成立、ならしい。要するに捨てられる、というワケだ。身分は保証されるから、後は自立しろって話し。

俺が言ったことは、この2人を捨てると言ってるのと同じだ。


「君らさえ良ければ、俺は解放してやってもいい」

「嫌です」


おや、即答ですか。


「どうせ既に解放してるから、聞いても意味無かったんだけどね」

「だとしても、私たちはご主人の傍を離れません」


な、ナンダッテー!


「メイドとして雇ってくれませんか?」


人を雇うなんて初めてだぞ。ていうかミユ、嫌いな人間のメイドになる必要なんか無いんだぞ。ミオもだけど。そもそも俺に収入がないから、賃金は払えない。

返答に困ってれば、ミユが更なる提案をする。


「もしくは私たちをご主人のところに嫁がせてください」


答えは決まった。


「賃金は支払えないけど、メイドとして雇ってあげるよ」

『ありがとうございます』


これからよろしくお願いします、と姉妹揃って深々と礼した。公園でやるようなことじゃない。

何にしても、姉妹とは仲直りできた。

その矢先。


「ニャ!? こんなところにカップルを発見ニャ!」


猫耳フードを被った出るとこは出てる美少女が、木から飛び降りてきた。尻尾もあるが、あれは本物に見える。


「羨まけしからんニャ! 連れ去って寝取るニャ!」


何やら美少女から聞いてはいけない言葉が飛び出したかと思えば、猫娘は俺を軽々と持ち上げた。


「な、なんなんだ! 離せ、降ろせ、変態!」

「変態じゃないニャ! ニャーはココアって名前ニャ!」


知らねーよ、語尾に「ニャ」を付けるヤツなんか。キャラ作りの一環か?


「ニャーは元々こんなニャー!」

「読まれた!?」


そしてニャーニャーうるさい!


「ミユ、ミオ、助けてー」

「あ、はい」


猫娘バーサス姉妹奴隷改め、姉妹メイドの仁義なき戦いが始まった。


「ニャニャ? ここは一時撤退ニャ!」


猫娘―――と言ったら睨まれるので、ココアは俺を担いだまま飛び跳ねた。

高いなー。富士山が見えるよ………って、ここはイギリスだから見えるハズがない。


「コイツはいただくニャン」


姉妹メイドに向かってココアは妖艶に微笑み、建物を飛び越えていった。

俺は意識が薄れていた。

妹以外に弱点が無さそうな俺でも、もう一つ弱点が存在する。

高いところが苦手だよ!


主人公にヒロイン性が表れた瞬間でした。

新年あけましておめでとうございます。

今年もお願いします。

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