禁句
どこかで失敗したらしい。
妹とミレイさんの仲が悪い。
原因は決闘にあるのは理解している。でも、決闘が原因となると首を傾げてしまう。
だって俺が無理やり決闘を中止に追い込んだんだから、妹はともかく、ミレイさんは俺を快く思わないだろう。だから、俺とミレイさんが不仲になるハズだった。
生きていれば予想外のことが起きるのは、至極当たり前だ。
そんなワケで今は、ミレイさんと凜の関係改善に尽力しようじゃないか。
決意したものの………何をどうすればいいかわからないから、先人たちの知恵を借りるべく図書館に来ていた。
さすが王族ご用達の図書館! 多くの本が揃い踏みだ。英語だけど、そこは補正があって読める。
漫画本の大元って絵本だからな。残念。
少女マンガみたいな文学を求め、かなり奥まで進んでしまった。
そこで出会ったんだ。
金髪オバケに!
「出たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
回れ右してダッシュ! すぐに右肩を掴まれ、逃げれない。ヒィィ!
「人をバケモノ扱いしておいて謝罪の一言も無しか?」
金髪オバケが喋った。撤回。暗がりだったから見えなかったが、声と喋り方から判断してミレイさんだった。
俺はミレイさんを睨みつけ、
「どうもすみませんでした」
「謝る気がないだろ!」
「お嬢さんが大声を出すもんじゃありません。はしたない」
「あれ? ええと………すまん?」
逆に謝らせることに成功。開き直りの達人、とまで呼ばれた俺の実力は健在だった。ていうか、ちょっぴりミレイさんは嬉しそうな………どうでもいい。
「ところでミレイさんは何を読みに来てたんですか? 墓場から人が出てきたように思えたよ」
「最後のは余計だ。それに歳はお前が上なんだから、さん付けしなくていい。というか、見て解らないのか?」
そういう「察しろ」とか言われても、俺は妹以外の人間となると途端に鈍くなるんだよ。
そう言いたかったけど、ミレイさん………じゃなくて、ミレイに言いたかったけど、幸いなことに見つけることが出来た。
ミレイは恋愛系の小説を持っていた。
元の世界で読んだことがあるから解る。あれは糖度100%の少女マンガよりも甘いラブコメ小説だ。
「ミレイさ………ゲホッ、ゲホッ………は、恋愛が好きなんですか?」
「まあ、そうだ。自分には無理だと思って諦めてるんだが、どうしても憧れるんだ」
そこは今も昔も変わらない。金持ちやら特権階級ってのは、子供の結婚は必ず親の威光が含まれる。身分違いの恋なんて所詮、創作上の夢物語でしかない。王族とか特権階級の人間の恋愛というのは、対等か近しくなければならない。
「妾から生まれた王族って言っても、政略の道具というワケか」
「私は母が死ななければ、平民でいられたのに………」
どこか遠くを見つめ、ミレイは嘆く。
この世界………平民も王族、どっちが幸せなんだろうな。
ここは人生の先輩として、失恋の経験もある頼りない人間として励ましてやろうじゃないか。
「ミレイって恋愛結婚したいの?」
「当たり前じゃないか。………あんな気持ち悪い人間となんか死んでも一緒になるか!」
気持ち悪い人間って………。どんな人間なんだろうな。気にはなるが、会ったら会ったで後悔しそう。主に嫉妬とか妹関係とかで。
「これまでの俺の浅い恋愛経験から助言しよう」
「浅いのか」
余計なことを言いやがって。
「恋愛は家族から認められないと、長続きしない。当人同士が盛り上がったってムダムダ」
「まだ解らないだろうが。初恋はまだだが、親に反対されてこそ盛り上がる恋がある」
「うわー」
17歳になって初恋がまだなのか。
ちょっと同情しちゃうような哀れむような目で見ちゃって、ミレイが不機嫌になった。
「イイ男がいなかったんだから、仕方ないだろうが!」
「えーっ。だって王宮の騎士って顔立ちが整ってて選り取り見取りじゃん」
「不思議とときめかなかったんだ」
「あら、残念」
イラッ、と怒りマークがミレイから見えたのは錯覚だろう。
様々な不興を買うのは、俺の専売特許なんで気にしない。このウザさは、男女両方から嫌われる悪癖だ。
どうだ、素晴らしいだろう!
「どこに自慢げになれるところがあるんだ?」
「あるだろう? 恋愛経験が皆無の貴様など所詮、恋愛経験も男女の付き合いがある俺からしたら赤子も同然」
「………男女の付き合い」
何故、顔を赤らめた。
って、何を口走ってんだ俺ェェー!
「さっきの発言テイセイ! お前が思うようなエロいことはしてないから! せいぜいキス………接吻止まりだよ!」
「ここは図書館だ。静かにしろ」
「おぅ………」
注意されてすっかり意気消沈。
ミレイはクスッと笑んでから、本を戻す。
「ところでお前は何を読みに来たんだ?」
今更?
「凜とミレイが不仲だから、仲直りさせるために先人たちの知恵を借りようとねー」
「1つ言い忘れてたが、アイツと私は最初から仲良くなんてない」
「最初の頃より険悪な様子だったから」
そう言ったら、ミレイに溜め息を吐かれた。なんで呆れ果てたような目で見る!
「お前、妹以外のことは何も知ろうとしないんだな」
「なっ、失礼な。こんなにも察しの良いお兄さんは世界広しと言え、俺しか存在しないというのに………!」
「随分とおめでたい頭なんだな。私が、あんな自己チューと仲良くするワケないだろう」
他人の客観的な目で見れば、そういう評価なんだろう。大抵の人間は、凜の圧倒的な美貌によって気づかれないんだよな。気づかれても黙殺されてしまう。
ここに凜の美貌に圧倒されないで、凜自身を見る人間が現れた! ワッホーイ!
「ワッホーイ!」
「ワッホーイ?」
「………………」
口に出た。ついでに心臓も飛び出してきた。こっちは未遂。
コホンッ。
咳払いで誤魔化し、追求を逃れて話を逸らす。
「凜が嫌いなのか?」
「嫌いというワケではないんだが………」
おや、嫌いではないんだ。でも、好きではないと。そこに嫉妬なんて野暮なもんは存在しない。
俺は珍しい物を見る目で、ミレイを見てしまった。ミレイが怪訝な顔で見てきたので、すぐに表情を引き締める。
「何がそんなに珍しいんだ?」
「ええ、まあ、凜のことを好きでも嫌いでも無いことだよ」
「はぁっ? そんなに珍しいか?」
俺からしてみれば、かなり珍しいんです。
「凜の周りにいた人間って皆、憧れだったり羨望だったりで中間は居なかったから」
「奴から仲良くしてこようとしないんだから、私からどうすることも出来ない」
「笑顔、振り撒いてんじゃん」
「あれは誰も寄せ付けないようにも見えるんだが」
ええい、鋭い………! 連邦のモビルスーツはバケモノか………!これは違うか。
動揺していたらしく、俺は苦い顔でいた。
そこへ。
「お兄ちゃん、どこー?」
凜が俺を捜していた。
これ幸い、とミレイがいるという事を忘れて凜を呼ぶ。
「俺は図書館にいるぞー! ミレイも一緒だよー」
はい、最後のは余計でした。
冷気を漂わせた凜が、無表情で歩いてくる。
これはアレだ。
正に氷雪の女王だ!
凍え死んでしまう程の絶対零度の冷気が、周囲を氷漬けにしていく。
「なんでミレイさんがいるのかな?」
「いやー、偶然にも図書館で出くわしたんだよ。本当に偶然だからね」
凜は聞いていなかった。
凜は涙目になって禁句を口にする。
「お兄ちゃんなんか嫌いっ!」
視界が真っ黒に染まった。
としないんだから、私からどうすることも出来ない」
「笑顔、振り撒いてんじゃん」
「あれは誰も寄せ付けないようにも見えるんだが」
ええい、鋭い………! 連邦のモビルスーツはバケモノか………!これは違うか。
動揺していたらしく、俺は苦い顔でいた。
そこへ。
「お兄ちゃん、どこー?」
凜が俺を捜していた。
これ幸い、とミレイがいるという事を忘れて凜を呼ぶ。
「俺は図書館にいるぞー! ミレイも一緒だよー」
はい、最後のは余計でした。
冷気を漂わせた凜が、無表情で歩いてくる。
これはアレだ。
正に氷雪の女王だ!
凍え死んでしまう程の絶対零度の冷気が、周囲を氷漬けにしていく。
「なんでミレイさんがいるのかな?」
「いやー、偶然にも図書館で出くわしたんだよ。本当に偶然だからね」
凜は聞いていなかった。
凜は涙目になって禁句を口にする。
「お兄ちゃんなんか嫌いっ!」
視界が真っ黒に染まった。




