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炎の激突

「くらいやがれえええええええ!」


 ティリスは突進しながら拳を突き出すが、フラウトゥーバはそれを軽くかわした。しかし、ティリスはすぐに地面を蹴って方向転換すると、再び殴りかかった。


 だが、その拳はフラウトゥーバの拳で受け止められ、二人はその体勢で睨みあった。


「やるじゃねえか」

「生意気を言うものだな」


 フラウトゥーバはティリスの拳を振り払うと、その体の中心に前蹴りをいれた。ティリスはなんとか片腕で防御したが、勢いよく吹き飛ばされる。


 ティリスは地面に着地してから体勢を立て直し、足に火をまとわせるとそこから一直線にフラウトゥーバに向かって飛び出した。


 それは上空にかわされるが、ティリスはすぐに地面に四つんばいになって勢いを殺し、上空のフラウトゥーバに向かって跳躍した。


「落ちやがれえええええ!」


 ティリスは肩を前に出して体当たりをくらわせようとした。しかし、フラウトゥーバが指を鳴らすと、その体が炎に包まれる。それでもティリスはかまわずそれに体当たりをしたが、何の手ごたえもなく、後ろに突き抜けてしまった。


「どこを狙っている?」


 フラウトゥーバの姿はいつの間にかティリスの真下にあった。そのティリスに向けられた手から人間一人ぶんくらいの大きさの火の玉が放たれる。


「クソッ!」


 ティリスは腕をクロスさせてそれを正面から受け、爆発に巻き込まれた。衝撃で体は上空に投げ出され、フラウトゥーバは追撃のためにそのさらに上まで急上昇した。


 そして、ティリスの背中に踵を落とす。


「ガハァ!」


 ティリスは息を一気に吐き出し、体を逆くの字に曲げて地面に叩きつけられた。フラウトゥーバはゆっくりとその前に着地する。


「グ! やってくれるぜ」


 ティリスはみぞおちを押さえながら立ち上がった。その表情はダメージよりも、湧き上がる闘志を強く感じさせた。


「面倒な人間だ」

「けっ、勝負はこれからだぜ」


 ティリスは口の中を切ったのか、血が混じったつばを吐き捨て、構えた。


「さあ来いよ、この程度じゃあたしは殺せないぜ」

「そこまで死にたいと言うなら、付き合ってやろう」


 そう言ったフラウトゥーバは一瞬でティリスの目の前まで移動していた。だが。


「見えてるんだよ!」


 ティリスはフラウトゥーバの右の拳を左腕でしっかりとガードしていた。そして、右の拳をカウンターで叩き込んだ。


「おしかったな」


 フラウトゥーバの左腕が伸びたが、その拳はぎりぎりのところでティリスの顔面には突き刺さらず、交差するようにティリスの頭がフラウトゥーバの顔面にめりこんでいた。


 フラウトゥーバの体は勢いよく後方に吹き飛んだが、地面を転がることはなく、しっかりと二本の足で着地して顔を上げた。その顔には確かにティリスの頭突きの跡があったが、血は流れていない。


「さあ来いよ! 一発食らって怖気づいたか!」


 そのティリスの挑発にフラウトゥーバは無言で両手に火の玉を発生させた。そして、まずは右の火の玉が放たれる。


「こんなものが!」


 ティリスはそれを拳で打ち砕いたが、散った火の玉が全て爆発し、その場の視界を無くした。


「チッ!」


 ティリスが舌打ちすると同時にその目の前に火の玉が現れる。


「クソ!」


 回避は間に合わない。そう判断したティリスは腕をクロスさせて防御の姿勢をとった。だが、後ろからの強い衝撃を受け、その火の玉に自分から突っ込んでしまう。


 派手な爆発が起こり、中心で巻き込まれたティリスはその場に倒れこんだ。フラウトゥーバがゆっくりと背後から近づき、頭の側まで来た瞬間、ティリスの腕がその足をつかんだ。


「よう、待ってたぜ!」


 そう言うと同時に、ティリスは足をつかんだまま素早く立ち上がった。そして逆さまになったフラウトゥーバを振り回して目の前の地面に叩きつけようとする。


 しかし、そんな状態でもフラウトゥーバは落ち着いた様子で手をティリスに向けた。


「馬鹿力だけでどうにかなると思うな」


 構えた手から小さな炎の矢が連続で放たれ、ティリスの腹を直撃した。


「チィィィィ!」


 ティリスはダメージであとずさるが、それでも掴んだフラウトゥーバの足を離さずに強引に地面に叩きつけた。


 衝撃でティリスは手を放してしまい、自由になったフラウトゥーバはすぐに起き上がってティリスと距離をとった。


「貴様は離れては何もできないようだな」


 それから再び火の玉を作り出したが、それは水の矢で打ち消されてしまった。


「ティリス! そいつの飛び道具は僕に任せてくれればいい!」


 ティリスが振り返ると、右手だけを構えたアランが立っていた。


「助かるぜ、でも無理すんなよアラン、左手は使えないんだろ」

「そういうことは言わないでおいて欲しいね」

「ああ、そういえばそうだな」

「まあ、相手はそのくらいのことはわかっているはずだけど」


 ティリスとアランはフラウトゥーバの姿を正面からとらえた。そして、その注目されているフラウトゥーバは静かに腰を落とした構えを取った。


「いいだろう。すぐに片付けてやる」


 フラウトゥーバは一気に加速し、ティリスに迫る。


「大地の精霊よ!」


 しかし、アランが作り出した土の壁に阻まれその勢いがいくらか殺された。


「いくぜえ!」


 そこにティリスが正面から突進し、フラウトゥーバと激突する。だが、すぐにフラウトゥーバの左の拳がティリスの顔面に打ち込まれた。


「この程度よお!」


 ティリスは一歩も下がらずに耐えると、右手を伸ばしてフラウトゥーバの首筋に手を伸ばし、ニヤリと笑った。


「我慢比べといこうぜ!」


 そう叫んだティリスは左の拳をとにかく連続でフラウトゥーバに叩き込み始めた。綺麗に決まった攻撃はなかったが、右手でがっちりと掴んでいるので、フラウトゥーバは逃れることができずに、拳を打ち込まれる。


 もちろん、フラウトゥーバがやられっぱなしということはなく、すぐに右足でティリスの脇腹を蹴った。


「なめるなあ!」


 ティリスは咆哮してそれに耐えると、右手を離さずにさらにフラウトゥーバに打撃を加えていく。フラウトゥーバも拳と足の打撃でそれに応戦し、凄まじい殴り合いが展開されることになった。


「これじゃ直接手は出せないか」


 アランはそうつぶやいたが、二人との距離を詰めてから、地面に右手をついた。


「でも、少し細工はさせてもらうよ」


 アランが何をしているのか、それがわかるのはアランしかいない。


「ガアァァァァァァァ!」


 数十秒後、ティリスがアランの隣まで吹き飛ばされてきた。


「クッソ! タフな奴だぜ!」

「ティリス、君も相当なものだよ。それより、まだいけるかい?」

「もちろんだぜ! あいつをぶっ倒すまではな!」

「それなら」


 アランがティリスに耳打ちをすると、ティリスは真面目な顔で一回だけうなずいた。


「ああ、わかった。お前を信じるぜ、アラン」

「僕も信じてるよ、ティリス」

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