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いるべき世界

 タマキは人差し指でオメガデーモンのことを指差す。


「お前はこの世界にいるべき存在じゃないんだ。俺と同じようにな」

「黙れ!」


 オメガデーモンは三日月形のエネルギーの塊をタマキに向かって撃った。だが、タマキはそれを正面からの拳で砕いた。


「まだわからないか」


 そうつぶやいたタマキはアミュレットを握る。


「仕方がない、行くぞサモン」


 タマキの体から漆黒のオーラが立ち上った。次の瞬間、タマキはオメガデーモンの目の前に現れる。


「!」


 何の反応もする間もなく、オメガデーモンは顔面を殴られ、さらに腕をつかまれると振り回されて地面に叩きつけられた。


「よいしょ!」


 タマキはそれを追って、一直線に両足で踏みつけを狙う。だが、それはオメガデーモンが横に転がったことでぎりぎり外れた。


「マシンガンアイスバイト!」


 タマキが腕を一振りすると、その軌道から無数の小さな氷の牙がオメガデーモンに向かって放たれる。オメガデーモンは腕の力だけで体を跳ね上げると、それをかわしてタマキとの距離をとった。


「もうわかっただろ。お前は俺に勝てないし、俺は何もお前を消したいわけじゃないんだ。おとなしく俺と一緒に来るんだ」

「なにを」


 何かを言いかけたオメガデーモンに横から火の玉が襲いかかった。そしてフラウトゥーバがその背後に立って、その手がオメガデーモンの首筋をつかむ。


「この程度とは、実に残念なことだ」


 次の瞬間には、フラウトゥーバの手から炎が発生し、オメガデーモンの体を包んだ。そしてその炎はフラウトゥーバの手から吸収されていく。だが、それが終わる前にフラウトゥーバは手を放して、大きく後ろに飛び退いた。


 そして、オメガデーモンの背中辺りの空間から剣が突き出し、空間を切り裂いた。


「外しましたか」


 落ち着いた声と同時に、皮の鎧に身を包み、眼鏡をかけた一人の女性が空間の裂け目から姿を現した。


「カレン、遅かったじゃないか」

「少し手間取ってしまいまして」


 そう言ってからカレンは膝を地面についていたオメガデーモンの肩に手を置いた。


「話は向こうで聞きましょう」


 それからカレンは自分が作った空間の裂け目に顔を向ける。


「お願いします」


 声をかけると空間の裂け目からチェーンが飛び出してきて、オメガデーモンの体に巻きつくと、その体を強引に裂け目に引っ張りこんでしまった。それから空間の裂け目は内側から閉じられた。


 それを確認してから、カレンは自分の剣を鞘に収めた。


「本当は早めに説得しておきたかったんだけどな」


 タマキはそう言ってからカレンに歩み寄っていた。だが、それよりも早くエリルがカレンに向けて走った。


「カレン様、カレン様ですね」


 普段とは違い、いささか興奮気味の様子でエリルは勢いよく話しかける。


「私はエリルです。以前お目にかかったことがあります」


 カレンはそのエリルを見て、すぐに穏やかな微笑を浮かべてうなずく。


「ええ、覚えていますよ。あなたが初めて城に来た頃に会いましたね。確かその時は眼鏡はしていなかったと思いますが」

「いえ、これはカレン様に憧れて」

「そうですか、伊達でも眼鏡をしておくと少しは素顔を隠せますからね。あなたの仕事には役に立つでしょう。さて、それよりも」


 カレンはそれからフラウトゥーバとエリオンダーラに鋭い視線を向けた。フラウトゥーバはその場から去り、エリオンダーラもそれを見て姿を消す。


「とりあえず一段落か」


 タマキはそう言ってからアランの方を向いた。


「とりあえず、落ち着いて話をしようか」



 それからしばらくして、タマキとカレン、アラン一行は焚き火を囲んでいた。


「さて、どこから話したもんかな」


 タマキは顎に手を当ててつぶやくように言った。そこでまずバーンズが口を開く。


「まずはお二人の話を聞かせてもらいたいのですが。これまでどうしていたのですか? それにあの時から全く歳をとっていないように見えるのですが」

「ああ、まあそれは話すと色々あるんだけど。この世界とはまた違うところで次元の管理人とかいうのに会って、それに協力してるんだ」

「次元の管理人?」


 アランが聞くと、タマキは顎に当てていた手を放した。


「まあ、例えばこの世界と俺の世界みたいに色んな世界の管理をしてる存在だ。とりあえず今は関係ないから気にしなくていい。で、俺とカレンが歳をとってないのは、この世界とは時間の流れが違うところにいたからなんだ」

「不思議な話ですが、タマキ様からお聞きすると納得できますね」


 バーンズはとりあえず納得したようだった。


「師匠!」


 そこにミラの大きな声が響き、ソラを後ろに連れて勢いよく走ってきた。


「おお、久しぶりだな」


 タマキは何気ない調子で立ち上がり、それを迎える。ミラはその目の前で立ち止まると、ずっと走ってきたらしく、タマキとカレンの顔を交互に見ながら肩で息をした。


「やっぱり戻ってきてくれたんですね!」

「ああ、こっちではだいぶ時間が経ってるみたいだけどな」

「そんなことは関係ありませんよ!」

「姉さん、とりあえず落ち着いて」


 ソラに言われ、ミラも落ち着いたらしく、一歩下がった。


「それより、今はアラン達と話をしている途中だったんだ。お前たちも適当に座ってくれ」


 それから、ミラとソラもアラン達一行と同じように焚き火を囲んだ。そこで立ったままのカレンが口を開いた。


「では、私から説明させて頂きます。まず、最初に言っておかねばならないのですが、私とタマキさんはあまり長くはここにいることはできません」

「それは、どういうことですか」


 真っ先にソラが反応してもっともなことを問いかけた。


「簡単に言いますと、すでにこの世界は私やタマキさんのいるべき世界ではないのです。次元の管理人という方によると、私たちの力は大きすぎて、一つの世界に納まるものではない、ということらしいです」

「力が大きすぎる。それはわかりますけど、それならいつまでここにいることができるんですか?」


 ミラが尋ねると、カレンは眼鏡の位置を少し直した。


「オメガデーモンはすでにこの世界から除くことができましたので、私達の用はほぼ済みました。ですが、まだ少しだけやり残したことがあります」


 カレンがタマキを見ると、それに応じてタマキはうなずく。


「そう、俺達はもうすぐここを去らなきゃいけない。でも、その前に」


 そう言ってタマキはアランの顔を見た。アランはなんとなく首をかしげてみせる。


「アラン、お前のことはエバンスからも頼まれたから、明日はちょっとつきあってもらうぞ」

「そういうことなら」


 アランがうなずくと、今度はエリルがカレンに向かって身を乗り出した。


「カレン様、私からお願いがあるのですが」

「はい、なんですか」

「魔族と戦う術を教えて頂きたいのです。私はまだ未熟なので」

「もちろんいいですよ。私があなたに教えられることがあるかはわかりませんが」

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