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さらなる敵

 結局それから三日は何も起こらずに過ぎていった。そして四日目の朝、アランがバーンズと一緒にトルビン邸を出ると、門の前にマントに全身を包んだ妙な男が立っていた。


「誰だ」


 バーンズは背中の剣に手をかけてアランの前に出た。妙な男もそれに応じるように一歩を踏み出す。


「お前達がオメガ様の邪魔をしているものか」

「それならどうだっていうのかな」

 アランがそう言うと、妙な男は一歩後ろに下がった。

「顔を見に来ただけだ。我が名はエリオンダーラ、また会おう」


 それだけ言うと、エリオンダーラと名乗った男は足早に立ち去っていった。それを見送ったアランはしばらくして口を開く。


「あれも魔族かな」

「おそらくそうだと思います。敵が増えましたね」

「そうだね、中々大変なことになりそうだ」

「一度戻って相談をしたほうが良さそうですね」

「そうしよう」


 二人はトルビン邸に引き返していった。


 そして、仲間達全員が集まって、アランとバーンズの話を聞いた。話を聞き終わると、ティリスが立ち上がった。


「それならぐずぐずしてる暇はないだろ。むしろこっちから攻撃してやるべきじゃねえか」

「相手がどこにいるかわかっていないんですよ、焦ってもいいことはありません」


 エリルがたしなめると、ティリスはむくれて座った。


「それはそうだけど、何もしないわけにもいかないね」


 アランがそう言うと、エリルもそれにはうなずいた。


「確かにそうですね。さらに強力な敵が増えたとなれば我々も無策でいるわけにもいきません。もちろんティリスさんのように先走るのはいい手ではありませんが」

「それならどうするんだよ」


 ティリスがそう反応すると、アランが腕を組んで口を開いた。


「僕達が囮になるのが手っ取り早いかな。街の外でキャンプでもするのがいいかもね」

「それはいいかもしれませんね。しかし、我々全員でそうするのは危険なような気がしますが」

「それなら、ミラさんやソラさんが独自に動いているようだし、大丈夫なんじゃないかな。僕達は僕達でやればいいと思うよ」


 アランの意見にはレンハルトやロニーもうなずいた。


「それはいいんじゃないか。俺達だってそのほうが思い切ったことができるしな」


 ロニーの言葉にエリルも賛同するように口を開いた。


「確かにそうかもしれませんね。ではすぐに出発しましょうか、物資は後から運んでもらえばいいわけですからね」

「よし、じゃあさっさと出発しようぜ」


 ティリスはもう一度立ち上がった。今度はエリルもたしなめたりせず、立ち上がった。


「そうですね。そうと決まれば急ぎましょうか」


 それから一行はすぐに出発の準備を整えると、街を離れた。



 その日の夕方、街の外には小規模なキャンプが設営されていた。その中心で、アランは焚き火をいじりながら、食事の用意をしているエリルと向かい合って座っていた。


「さて、これからあいつらはどう動いてくるかな」

「おそらく私達の動きは見ているでしょうから、すぐに動き出すかもしれませんね」

「だからっていきなり攻めてこられても困るかな」

「なんだよ、そのほうが面倒がなくていいじゃねえか」


 後ろからティリスが口を出してきたが、エリルは首を横に振る。


「できれば各個撃破といきたいところですね、無駄に苦しい状況になりたくはありませんし。ですが、ティリスさんの期待している通りになる可能性は高そうだと思いますが」

「そうか、じゃあ歓迎してやんないとな」


 ティリスは自分の拳を合わせるとその場から離れた。アランはそれからロニーとレンハルト、バーンズのほうに視線を移した。


「あの二人も頑張ってるね」

「そうですね。見たところ成果も出ているようですし、あの調子なら何かあっても大丈夫でしょうね」

「そうだね、頼りになりそうだ」


 二人はしばらく黙っていたが、いきなりティリスが騒ぎ出してそれは中断された。


「あいつらだ! 近くにいるぞ!」


 アランとエリルはすぐに手を止めて立ち上がった。それとほぼ同時に、キャンプの周囲に火柱が立った。


「みんな伏せろ!」


 アランが叫びながら両手を地面につけると、その背後から水が噴出し、火柱に向かって降り注いだ。それによって火は鎮火したが、一行は誰も気を抜かない。


「さすがだな」


 フラウトゥーバの声が響くと、いきなりアランの数歩先に降り立った。そして、そのアランの背後にはエリオンダーラが降り立つ。アランとエリルは背中合わせに立った。


「今日は君達二人だけかな」


 アランが聞くと、フラウトゥーバとエリオンダーラは同時に空を見上げた。そこには右半身も生身のようになっていて、前回よりも力を蓄えた様子のオメガデーモンの姿があった。


「今終わりにしてやろう」


 オメガデーモンが手を上げると同時に、二人の魔族はその場から飛び退いた。次の瞬間、オメガデーモンの頭上に巨大なエネルギーの球体が発生し、それがアラン達に落とされる。


「エリル!」

「わかっています!」


 まずはアランが地面に手をつき、球体に向けて数本の柱のようなものを伸ばす。それは球体に衝突するとすぐに消滅していくが、多少は勢いを弱めることに成功した。


 さらに、魔法槍を組み上げたエリルは数秒構えてから、それを頭上に投げた。アランはそれを確認すると柱を伸ばすのをやめる。


「プロテクションドーム!」


 魔法槍が空中で静止し、そこを中心として仲間達全員を覆う大きな魔法の盾のドームが出現した。数秒後、球体がそれに激突する。


 魔法の盾は球体を受け止めたように見えたが、すぐにそれは動き出し、ドームは押しつぶされていく。エリルは歯を食いしばってそれを維持しようとするが、魔法の盾のドームは砕かれ、霧散してしまった。


 そして、エネルギーの球体はアランたちに向かって落ちた。


 しかし、その球体はいきなり砕け散り、空に向かってその破片を散らした。


「なに!?」


 オメガデーモンは思わず似合わない驚愕の声を出した。そして、エネルギー球の破片をさけながら、下に注意を集中する。


 球体が砕け散った衝撃で土煙が立ち昇るなか、そこにはマントらしきものを手に持った一人の男のシルエットがあった。


「久しぶりだな、とは言っても覚えてないかもしれないか」

「貴様、貴様は!」

「そうだ、久しぶりだな、って言えばいいのか? 分身のお前にあっちの記憶はないはずだしな」


 男のシルエットが手に持ったマントを振ると、土煙が全て吹き飛び、シルエットではなく、その姿が明らかになった。


 そこにあったのは、マントを手に持ち、皮のジャケットを身にまとう、不適な笑みを浮かべた若い男の姿だった。一見したところ変わったところもないが、その体は地面に足をつけずに空中に浮いている。


「タマキ様!」


 バーンズが普段の様子に似合わない驚愕が入り混じった声を上げた。

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