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剣士の実力

「こっちだ!」


 ロニーが角を曲がると、そこには巨大な蜘蛛と向かい合っているエリルがいた。傷を負っている様子はないが、膠着状態にあるのは見てとれた。


「エリル! 助っ人に来たぜ!」


 ティリスが叫ぶと、エリルはなぜか少し嫌そうな表情を浮かべた。


「アラン様はどうされたんですか?」

「アランなら途中で出てきた奴の相手をしてる! それより、苦戦してるみたいだな」

「ええ、街に被害を出すわけにはいきませんから」


 そう言っている間にも、蜘蛛はエリルに攻撃し、それをかわされている。それからエリルはティリス達のところまで一旦下がってきた。


「あれは大した力はないようですが、いつでも小さく分裂するので厄介です。街中では大技は使いにくいですから、片付けることができません」

「じゃあまずは街の外に出さないと駄目なのか」


 ロニーがそう言ったが、レンハルトは少し考え込むような仕草をしてから、空を見上げた。


「あの魔物を空に上げられたら、どうでしょうか」

「空にですか。確かにそれなら大丈夫でしょうが、誰がどうするんですか?」

「それは私がやりますので、あれの注意を引き付けてください。止めはエリルさんがお願いします」


 レンハルトは静かに言ったが、その様子には不安そうな様子は微塵もない。エリルはその自信を感じ、うなずいてから前に出た。


「では、私が正面と止めを引き受けます。ティリスさんとロニーさんは横からサポートしてください」


 返事を待たずにエリルは蜘蛛の目の前に走った。ロニーとティリスもそれに続く。レンハルトは一人でその場に残り、盾を両手で前方に突き出すという変わった構えをとった。


 エリルは一瞬だけそれに目をやったが、すぐに蜘蛛に意識を集中させた。蜘蛛は足を振り上げて襲いかかるが、エリルはそれを軽くさばいてみせる。


 さらに左からロニーがポールアックスで切りかかった。それは蜘蛛の足を切るが、浅く足を両断するまでにはいたらない。蜘蛛は足でロニーを攻撃しようとするが、そこに反対側からティリスが殴りかかって、蜘蛛の動きを邪魔する。


 しかし、殴りかかった箇所は小さな蜘蛛に分裂し、決定打は与えられない。ティリスは蜘蛛の攻撃を受けそうになるが、それはエリルの攻撃で防がれ、ティリスはそこから離脱する。


 エリルはその位置、蜘蛛の直下から、炎をまとわせた魔法槍を突き上げた。しかし、蜘蛛は後方に跳んでそれをかわす。


「行きます!」


 そこにレンハルトが盾だけを持って走りこんだ。そしてエリルの横を抜けると蜘蛛の真下に潜り込み、盾を上に突き上げる。


「破!」


 凄まじい気合と同時に、魔法とはまた違う力が盾から発して蜘蛛の腹を撃った。その力によって蜘蛛の体はさらに上空に打ち上げられた。


 エリルは驚くより前に魔法槍を横向きに構えてから、それを上に投げた。すると魔法槍は空中で止まり、炎を発して回転を始める。


「ファイア! サイクロン!」


 エリルはその中心目がけて火の玉を放った。それは魔法槍に巻き込まれ、そこから炎の竜巻が生まれていく。その炎の渦は見る間に大きくなり、蜘蛛の巨体を飲み込んでいった。数秒間その炎の渦は燃え盛り、それが消えると蜘蛛は跡形もなく、黒い煤だけが落ちてきた。


 そして魔法槍の炎が消えると、それは自然に落下してエリルの手の中に収まった。エリルは周囲を見回したが、これ以上蜘蛛が出現する様子はない。


「どうやら、これで終わりらしいですね。では、アラン様のところに向かいましょうか」


 エリルはそれだけ言うと、すぐに歩きだした。ロニーはその後に続いたレンハルトを見て、何か言うべきか悩んでいる様子だった。


「何悩んでるんだよ」


 ティリスはその肩を叩いていった。ロニーは首を傾げながらその後を追うが、ふとエリルが振り向いているのに気がついた。


「話は後ですよ。それより、早くアラン様のところに案内してください。私は場所がわからないんですから」

「あ、ああ」


 ロニーは返事をしてから、走って三人の前に出た。


 それからしばらくして、エリル達がアランのいる場所に到着する。そこにいるミラの姿を見たエリルは、さすがに驚きの表情を浮かべた。


「ミラ様、なぜここに」


 ミラはそれに笑顔で手を振る。


「いいや、色々あってね。それより、初めて見る顔も沢山あるじゃないか」


 ミラはそう言って三人の顔を眺める。だが、その視線はティリスのところで止まりしばらくの間その顔を見つめた。


「名前は?」

「あ、えーっと、ティリスだ」

「よろしく。どうやら精霊の力を持っているらしいけど、どうも変な感じがするな」

「妙?」

「まあ私の弟が精霊使いだから、ちょっとわかるんだ。力が安定してないというか、乱れているというか、まあ後でじっくり見せてもらうとしようか」


 そこまで言ってから、ミラは何かに気づいたようで、改めてその場の全員を見回した。


「そういえば自己紹介がまだだったか。私はミラ、勇者様達の弟子で、アラン様のことは生まれたてのころから知ってる。で、この聖剣の使い手だ」


 ミラが腰の剣を軽く叩くと、そこに大きな足音が響いてきた。ミラが振り返ると、そこにはレモスィドが立っていた。


「聖剣とやらのことは知っているぞ、その上、勇者の弟子ということなら、これは期待できそうだな」


 エリルはその光景を見てため息をついた。ミラはとりあえずエリルに近づく。


「なんだあれ」

「おかしな魔族です。実は一緒に旅をしているのですけど、アラン様やバーンズ様にも勝負をふっかけていました。おそらくミラ様も目をつけられたのだと思います」

「ふーん、変わった魔族は一人じゃないってわけか。そういうことなら、さっさと済ませたほうがいいか」


 そしてミラはレモスィドのほうに近づいていく。


「あんた、名前は」

「レモスィドだ。お前はミラだったか」

「そうだ。相手をしてほしいんなら、今すぐでもいいけど」

「それは話が早いな」


 レモスィドはにやりと笑った。


「今から街の外に行くか」

「わかった」


 ミラも笑い、二人は歩き出した。アランとティリスはそれについていったが、他はエリルが止める。


「私たちは事後処理にあたりましょう。ミラ様ならあれと戦ってもまず大丈夫ですから。ところでレンハルトさん、あなたのことは後でしっかり聞かせてもらいますよ」

「ええ、わかっています。私もそのうち話そうとは思っていましたから」

「そういうことなら、よろしくお願いしますよ」


 そうしているうちに、兵士を引き連れたバーンズがこちらに向かってきているのが見えた。


 ロニーはその光景と、アラン達が行った先を見て、思わずぼやく。


「聖剣使いで勇者の弟子とか、レンハルトは妙にすごいことやるとか、何がどうなってるんだよ」


 エリルにそのぼやきは聞こえていたが、とりあえず無視していた。

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