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きまぐれな変わり者

 エクサの消失を見届け、エリルは光の剣を消した。それからアランの元に歩こうとしたが、そこで上空から拍手が響いてきた。


 その場の全員が顔を上げると、上空に一人の逞しい体をした短髪の男が浮かんでいた。その腰には一本の長い曲刀がある以外、特に武器は持っていない。


「ここまでできる連中がいるとは、楽しいことじゃないか」


 エリルは魔法槍を一つに戻すと、それを構える。


「どちら様ですかね?」


 男はエリルのことを見て、あごに手を当てる。


「そっちは魔法が得意な人間か。あれは見事だったな、あれだけ繊細で高度な魔法は初めて見たが、まあ今はいい」


 男はそれからアランに視線を移した。


「それよりも、そっちの精霊使いに興味がある。どれだけの力があるか、試してみたいんだが、どうだ?」


 立ち上がっていたアランは、真っすぐ空中の男を見て、二本のナイフを抜いた。


「僕でいいなら相手をしよう。ただし、他の人にも、この町にも一切手を出すな」


 男はその返答に笑顔でうなずく。


「いいだろう。俺の名はレモスィド、お前の名も聞いておこうか」

「僕はアランだ」

「アランか、始めるぞ」


 レモスィドは地面に降り立ち、曲刀を抜いた。それは不思議なことに鞘がついた状態だった。その鞘は無骨な造りのくすんだ青色で、柄の根元には竜の頭の飾りがあり、まるで刀身を飲み込んでいるように見えた。


「二重の鞘とは妙な剣ですね。それにあの男」


 エリルは多少心配気な様子でつぶやいた。


 二本のナイフを構えるアランと、鞘がついたままの曲刀を構えるレモスィド、二人の間には刺すような緊張感が満ちている。


 先に動いたのはレモスィドだった。曲刀を上段に構え、じりじりとアランとの距離を詰めていく。対するアランは姿勢を低くして、その出方をうかがっている。


 そのまま数十秒、二人の距離はすでに一手で互いの武器が届く距離になっていた。アランは低い姿勢から地面を蹴り、そのまま低い軌道で右のナイフを突き出した。レモスィドはそれを横にかわしながら片手で曲刀を振り下ろす。


 アランはすぐに体をひねり膝をついて踏ん張ると、左のナイフでそれを受けた。その瞬間、アランの体がぐっと沈み込む。すぐに右のナイフも加えて支えるが、それでも押し返すことはできない。


「ふむ、体に似合わない力だな。これは魔力か」

「そっちもすごい力じゃないか。まだずいぶん余裕がありそうだけど」

「それはそうだが、普通はこのレベルでも受けられる人間は滅多にいない」


 そしてレモスィドは曲刀を両手で握ると、さらに力を込めてアランを押しつぶそうとする。アランは徐々に押し込まれていくが、いきなり左手のナイフを手放すと、その手を曲刀に当てた。


「バースト!」


 爆発が剣をそらし、アランはその隙に転がりながらナイフ拾ってレモスィドとの距離をとった。レモスィドは剣をゆっくりと構えなおし、笑った。


「剣術は癖があるがいい動きだし、魔法もなかなかだ。それに、機転もきく。まだまだ成長の余地も十分にありそうだ」

「褒めてくれてありがとう。ついでにあなたの目的も教えてもらいたいな」

「目的? いいや、これといってないが、今はお前と戦ってみたくなっただけだ」

「なら、さっきのはなんなんだ。あれは魔族が力を与えたとしか思えない」

「さっきの? ああ、あれは違う。たぶん俺以外の誰かがやったんだろう。俺もまあ一応は魔族だが、そんなことには特に興味がない」


 レモスィドの言葉に、その場の雰囲気が重くなった。エリルは言葉の意味をよく考えてみる。確かにレモスィドはアランの要求通り、周囲に被害が及ぶような戦い方はしていない。しかし、だからといって信じていいかはわからなかった。


 アランもなにかを考えていたようだが、すぐに吹っ切ってナイフを構えた。


「信じるよ。あなたが僕と戦いに来ただけというのを」

「そうか、じゃあ続きだ」


 アランとレモスィドの二人はもう一度その場に張り詰めた空気を作り出した。それからアランはおもむろに左のナイフを鞘に収める。


 そして、アランは右のナイフを地面に突き立てた。それが引き抜かれると、凝縮された土が剣のような形をとり、ナイフをロングソードのようなものに変えた。レモスィドはそれを楽しそうな表情でそれを見てから、先に動いた。


 正面からしかけたレモスィドはまずは上段から激しく曲刀を打ち込む。アランはそれを右手の剣で受け流すが、レモスィドは片手で鮮やかに曲刀を振り回し、次々に斬撃を繰り出す。


 アランは押されはしているものの、攻撃は全て防いでいる。そして、レモスィドが繰り出した上段からの強烈な一撃を剣で受けようとする。


 だが、それを受ける直前で土の剣は崩れ落ち、レモスィドの一撃は空を切った。アランはそこから踏み込み、左のナイフを逆手で抜いてそのまま切りつける。避けられそうにないタイミングだったが、レモスィドは予備動作もなく、それを上空に跳んでかわした。


 そのままアランの背後に着地し、レモスィドは間髪入れずに地面を蹴る。そして、地面を撫でるような軌道から曲刀が振り上げられ、アランはそれを左のナイフで受けようとするが、ぎりぎりまで押し込まれてしまう。


 アランは咄嗟に踏ん張るのをあきらめ、右のナイフを自分の左のナイフにぶつけ、そのままレモスィドの攻撃の勢いを利用して横っ飛びしてから地面を転がった。


 レモスィドはすぐに方向転換し、アランを追って曲刀を振り下ろそうとした。だが、アランは体勢を整えるまえに地面に勢いよく手を叩きつける。その部分の地面が勢いよく隆起し、レモスィドの攻撃はそれに遮られた。


 隆起した地面はすぐに元に戻ったが、その隙にアランは体勢を立て直し、レモスィドも改めて曲刀を構える。そして二人が再び衝突しようとした時、突然その中心に氷の牙が突き立ち、その動きを止めた。


「そこまでだよ、君達」


 いつの間にそこにいたのか、長髪でローブをまとった男が少し離れた場所に立っていた。レモスィドはその姿を見ると、ため息をついて曲刀を鞘に収めた。


「お前か。久しぶりだが、何の用だ?」


 男はその問いに笑顔で首を横に振る。


「その前に、そっちのアラン君も武器を収めてくれないかな?」


 アランはしばらく男のことをじっと見ていたが、結局言われた通りにナイフを鞘に収めた。男はそれを確認してから、エリルとレノールに顔を向ける。


「そっちの二人も、武器はしまってもらいたいね。僕は別に戦いにきたとかそういうことはないから」


 エリルは疑わしそうな表情ではあったが、アランが武器を収めていたので自分もそうした。レノールもそれにならう。男はそれを見て満足そうにうなずく。


「これで話をできるかな。じゃあ場所を変えよう、ここじゃ落ち着かないだろ?」


 男はさっさとその場から歩き出す。レモスィドはすぐにその後を追い、アランも続いた。エリルはため息をついてからレノールのほうに顔を向ける。


「レノールさん、ここは頼みます。あっちのほうがだいぶ面倒なことになりそうなので」


 それだけ言うと、エリルも先に行った三人の後を追った。

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