表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

56/56

丘の向こうにある森

……………………


 ──丘の向こうにある森



 私が一連の取材を終えてから、再びリリエルに会った。

 というのも彼女の方から伝えておきたいということがあったからだ。

 今回もクラウゼの案内でリリエルの家に向かい、そこで彼女に会った。


「君はルナリエンにかかわった大勢の人間にあって、大勢のことを知っただろう」


 リリエルは言う。


「だが、私たちエルフをそれだけで分かったと思わないでほしい。私は私自身の目で見たことしか語れなかった。ソフィエルが本当は何を考えていたのか。それについては憶測で話すしかなかった」


 今回の取材ではとうとうソフィエルというリリエルの盟友であり、ルナリエンの指導者であり、麻薬取締局(DEA)麻薬の皇帝(キングピン)と呼ぶエルフを直に取材することはできなかった。

 私の中の彼女の姿は心優しき友であり、血も涙もない化け物であるという矛盾したイメージがついてしまっている。


「私のように理想を信じたエルフもいる。信じなかったエルフもいる。積極的に否定したものも、そもそも無関心だったものもいる。エルフの数だけ彼らの事情があったと思ってほしい」


 彼女は静かにそう語り、私は彼女の言葉にしっかりと頷いた。

 そう全員が善人ではないし、全員が悪人でもない。

 それぞれの事情があって皆が生きていると。


「ルナリエンは再建が進んでいる」


 そこで不意にリリエルがそう言った。


「重機の音やハンマーの音がときどきここまで聞こえてくるんだ。彼らは再建に向けて歩みを進めている。私の耳は再建の音が確かに聞こえる」


 彼女はそう言って丘に登ろうと私に提案した。

 丘からはルナリエンの森がよく見えると言って。

 私は頷き、彼女とともに丘に登った。


「ほら。見てごらん。あそこにトウモロコシ畑があったんだ。今もトウモロコシを育てているのだろう。トウモロコシで作ったパンは今でも私の大好物だよ」


 最初の取材から数年が経ち、爆撃によって灰色に焼け焦げていたルナリエンにも回復の兆しが見られた。

 緑がよみがえり、その先にはエルフの集落がかすかに見える。


「森の方をじっと見ていると子供たちが笑う声が聞こえてくるような気がする。だが、今はどうなのだろうか。子供たちは今も笑っているのだろうか……」


 彼女のその問いに私は答えることはできなかった。


 麻薬取締局(DEA)の発表によれば今もルナリエンは『深刻な麻薬国家』であり、ソフィエルは麻薬の皇帝(キングピン)だそうだ。

 再建を進めるルナリエンがそうなのか確かめた麻薬取締局(DEA)の捜査官はいるのだろうか。

 いたとすればその人物はソフィエルに会ったのだろうか。


「またルナリエンに戻りたいと思いますか?」


 私はリリエルにそう尋ねたが、彼女はあいまいに笑うのみだった。

 ルナリエンは彼女の故郷であり、夢であり、そして苦痛と挫折の地なのだ。


……………………

これにて完結です。お付き合いいただきありがとうございました。

面白いと思っていただけたら評価や感想などお願いします。

また新作も始めておりますので、よろしければ覗いてみてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新連載連載中です! 「元軍人さん、ダンジョン探索者になる。」 応援よろしくおねがいします!
― 新着の感想 ―
お疲れ様でした、リリエルはこれからも長い長いエルフ生を複雑な思いを抱えて過ごすのでしょうね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ