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受験生に魔法少女は荷が重い  作者: 発狂済みの受験生
3/6

受験生に変身は荷が重い

思ってた3倍重い設定になった模様

「うぅ、今回は振るわなかったなぁ」


 まぁ、原因は分かりきったことだけれど。ホラー的存在に突然「魔法少女になってよ」なんて言われたら、集中できるわけがない。

 3日間続いた模試が終わり、自己採点をしたものの、点数の伸びの悪さにため息しか出ない。

 苦手な数学の点数が結構上がっていたのはとても嬉しかったけれど、代わりに得意教科だと思ってた英語や情報、こっちは普通に苦手なのだけど、化学や世界史の点数が下がってて、結局プラマイ微成長、って感じ。

 模試の次の日が土日だから復習しやすいのは助かるけど。

 模試の復習のために机に向き合っていると、タッという軽い衝撃音と共に、視界にさくら色の艶やかな毛並みが入ってきた。


「起きてからずっと勉強してるね」

「受験生だからね」


 午前10時くらいだけど、すでに4、5時間は勉強している。

 志望校に受かるには、休日12時間勉強を目指すしかないのだ。

 今日も模試の復習が終わったら、来週の授業の予習や過去問演習、苦手な数学の演習などをするつもりである。

 私は朝型なので、早起きして午前中いっぱい勉強し、集中力が切れてくる午後にちょっとした気分転換をすることが多い。主に読書やお気に入りのユーツーバーさんの動画を見るなどして、いつの間にか結構な時間が経ってて絶望するまでがセットである。


「息抜きに団子買いに行こうよ」

「またぁ? 昨日も買ったでしょ、サクヤ」

「この酒を美味しく味わうために団子は必須だと思うんだ」

「またお酒買ったの?」


 さくら色猫ーーサクヤは、私が魔法少女になることを承認してから、家に居着いているのだけれど、これがかなりの飲兵衛で、すでにこの部屋には酒瓶が何本か転がっている。アルコールの匂いも充満していて、こんな寒いのに窓を開けて換気する羽目になった。

 魔法少女ものの妖精枠が飲兵衛って……幻想がガラガラと崩れ落ちる音が聞こえる。


 ちなみに、魔法少女になると言った時に、さくら色猫の名前も聞いたのだけども。


『名前? 別になんて呼んでもらってもいいけど』


 とのことだったので、毛の色がさくら色ということもあり、色々と考えた結果、『木花之佐久夜毘売このはなのさくやひめ』から名をとって、「サクヤ」と呼ぶことにした。女神だけど、まぁ「サクヤ」ならどっちの性でも変にはならないでしょ、という考えもある。


「というか、お酒を買うお金ってどこから出してるの? 盗んだりしてないよね?」

「君の財布から」

「はぁ!?」

「冗談だよ。ちゃんと人間のやり方で買ってるし、そのお金も自分で稼いだお金だから」


 急いで財布を確認し、1円も減っていないことを確認してホッとする。

 それにしても、お金を稼ぐ妖精枠って……すでに瓦礫と化していた幻想が木っ端微塵になって霧散したのがわかった。

 そもそも、このさくら色猫を妖精と呼ぶのにも無理がある。猫の見た目は妖精みたいだって最初は思ったけど、本性に難がありすぎる。

 これは、いたいけな少女を騙して過酷な運命に嗤って引き摺り落とす、魔法少女アニメの中でも鬱アニメの方によく出る悪鬼の類だと思った方がいい。


「お酒を自分で買えるんだったら、団子も勝手に買ってくればいいじゃん」

「息抜きついでに魔法少女の変身の仕方も教えようと思ったんだよ。

 まぁでも、いざ魔法と戦うってなった時にぶっつけ本番で変身するのでもいいよぉ、できるならねぇ」


 なんて言って、小馬鹿にするような笑みを浮かべる悪鬼サクヤ。

 変身の仕方ねぇ……正直見当もつかないので、事前に練習させてくれるっていうんならありがたいけど。

 それはそれとして、イラっとしたのでサクヤの柔らかいほっぺを引っ張りつつ、椅子から立ち上がった。正直集中力が切れてきていたのも確かなので。


「わかったよ行くよ。ただし、お代はあんたが出してね」

「ケチだなぁ。まぁいいよ」


 ***


 近くのスーパーでみたらし団子を買って、今は人通りが少なくて割と広い公園に来た。

 早速魔法少女に変身するか、と思ったけど、その前に早速みたらし団子を食べつつお酒を空けるらしい。

 サクヤが尻尾を器用に使ってお酒を瓶から直飲みしているのを尻目に、私も自分用に買ったみたらし団子を頬張る。久しぶりに食べたけど、美味しい。


「んぅ〜、美味しいねぇ」


 サクヤは、尻尾で団子の串を掴んで、お酒と交互に口に運んでいる。残る一本の尻尾がピンと立っていて、本当に嬉しそうだ。

 こうしてみると、飲兵衛のおっさんみたいだ。飲んでるのが猫の姿をしていなければ、だけど。


 背もたれに背を預けて、なんとなく上を見る。少し雲が見える晴天の青の中、鳥が飛ぶ姿が見える。

 雲が流れて、太陽が照ってきた。座っているベンチにかかる木漏れ日が暖かい。

 風が吹いた。登校する時間帯の刺すような冷たい風とは違う、日差しを浴びた柔らかい風。


「……なんか、こういうのいいな」


 最近は自分の成績が志望校のレベルに届かないことで焦ってばかりで、こういうふうに息抜きをしたことってなかった気がする。好きな読書をしたり、動画を見るときでさえ、焦りと不安を誤魔化していたように思う。

 行きたい大学とはいえ、難関大の薬学部なんて難しいところを志望しているのだから、焦って勉強するくらいでないとダメだ、なんて思ってすらいるけれど。


「それじゃあ、やってみる?」

「あ、うん」


 いつの間にか食べ終わっていたらしいサクヤの声で、我にかえる。

 私もいつの間にか食べ終わっていて、二人の分のゴミを片付ける……って、またお酒一本空けてるし……

 素知らぬ顔のサクヤはベンチからタッと軽やかに降りて、機嫌良さげに尻尾を一振り。


「魔法少女は魔法を使役できるっていうのは、言ったでしょ?」


 ゴミをレジ袋に詰め込んで、酒瓶から漂うお酒の匂いを封じ込めるために、レジ袋の口をキツく閉めて、息を吐いていると、そんなことを言われる。


「それなんだけど、「魔法を使役する」って何?」

「まぁまぁ、まずは聞いて」


 そう言いつつ、サクヤは歩き始める。私も袋を持って着いて行く。


 曰く。

 概念存在である魔法は、人間の想像力に強い影響を受ける。

 とはいえ、普通の人間たった一人の想像で、大勢の人間のイメージでできていると言っても過言ではない魔法に影響を与えられるわけもない。

 加えて、人間に力を貸してあげようなんて考えられるような強い自我を持つ魔法なんて、人間一人の影響を容易く受けるようなものでもない。


「でも、それができちゃうのが魔法少女なんだよねぇ」


 魔法少女になれるような人間は、想像力がとても強い。たった一人の想像で、強い自我を持つ魔法を上書きできるほどに。


 そこで、サクヤは振り向いた。


「君にはそれができる。だからーーぼくが力を貸してあげるよ」


 一陣の風が吹いた。


「え、それってーー」

「全く、もうちょっと時間かかると思ったんだけどなぁ」


 サクヤが肩に飛び乗ってくる。右肩に重みが増す。

 言いかけた私の言葉を遮るサクヤの言葉、そして。



「ゔぁあぁおぉぁぅぉあぁぁ」



 戦慄という言葉って、こういう時に使うのかな、なんて一瞬思って。

 そんな思考はすぐに、背後から迫る冷たい恐怖に塗りつぶされた。


「ぇーー」

「力が弱い魔法は人の思念にすぐ影響される。とは言ってもかなり強い思念でなければ、影響を与えることはできないけどね」


 振り向いたら、終わる。

 本気でヤバい。

 そんな心の声が足を絡め取っているように、体が全く動かない。


「これは、結構強い思念だねぇ……何人食ったのかな?」

「ねぇ、何が、いるの?」


 かろうじて口を動かすことができた。

 息が震えるのがわかる。

 そんな私を揶揄うように、サクヤの尻尾が私の鼻をくすぐる。それだけが私の正気の糸を繋ぎ止めている。毛先が柔らかい……


「あれは、俗に幽霊とか怨霊と呼ばれているものだよ。弱い魔法に、人間の強い未練や怨念が混ざったものだ。

 あぁなると、混ざった人間の思念の種類によっては、他の人間に危害を加える奴もいるね」


 まぁ、魔法に影響を与えられるほど強い思念なんて、大体他者への恨みつらみとかで、そうなると大体の場合攻撃的になるんだけどねぇ。

 なんてサクヤが言うもんだから、恐怖がいや増す。


「大丈夫。君にはあれを浄化する力がある」

「浄化……?」

「あれは、俗世に囚われている悲しき魂たちの塊。君は魔法に絡まった魂たちを解放してあげればいい」

「そんなの、どうやって」


 簡単さ、とサクヤは言った。


「イメージしてーー君は、春を運ぶ風。冬の淀を吹き飛ばす春の嵐」


 長い寒さで固められた雪を溶かし、長い冬の終わりを告げる、暖かな春の風。

 春の陽射しの柔らかな光が溶け込んだ風に、背中を押されたような気がして、私は振り返った。

 すぐに、どろどろした塊がにじり寄るように移動してくるのが目に飛び込んできた。

 サクヤと初めて出会ったあの信号での光景を思い出す。でも、それはゴミ溜まりの悪臭が漂っていそうな、この世の穢れが凝縮したみたいな色をしていて、サクヤのさくら色とは比べ物にならないほどよくない色をしている。

 しかも、サクヤはせいぜい私の身長の半分くらいの高さに、横幅が1メートルくらいだったのに対し、それは私の身長の2倍くらいの高さに、それの2倍くらいの横幅で、自身が通った道中にあるあらゆるものを飲み込み、自身をも溶かしながらゆっくりとこちらにやってきている。

 はっきり言って、キモいを通り越して、悍ましい。

 でも、私の目がおかしいのかもしれないけど、なぜだか私には、あれが苦しんでいるように見えた。


「君は魔法少女。あれを浄化して、黄泉へ送ってあげて」

「私がーー」


 目を瞑り、想像する。

 凍てつく冬の空気を吹き飛ばす春の風。

 陽気に照らされた、雪解けの水が全てを押し流し、海に帰る様。

 風に乗って空を飛ぶ綿毛。

 若葉の色を引き立てる柔らかな陽射し。


 光に包まれたような気がして、目を開ける。


「えーー」

「よくできました」


 服装からすでに変わっていた。


 着物のように前で合わせて帯で締め、下はふんわりしたスカートのようになっている。

 雪解け水の流れに、さくらの花弁が浮かんでいるような色合い。

 髪色もさくら色に変わっていて、下ろした髪が風にたなびいて時々白銀に光る。

 そして、いつの間にか両手に握っていたのが、要に房飾りのついた扇子ーーいや、これは、鉄扇?


「面白い武器になったね」

「これでどうやって戦うの?」

「心配しなくても大丈夫。きちんとイメージしさえすれば、今の君はなんだってできる」


 なんだそれは。こちらに丸投げすぎじゃん。

 そうこうしているうちに魔法は目の前に来てるし、結局ぶっつけ本番だしで涙目になる。


「とりあえず、あの魔法を吹っ飛ばせばいいんだよね?」

「そうだね。魂を、あの魔法から押し出すイメージで、風を叩きつけてやればいいと思うよ」


 怨念に型取られた魔法はやっぱり恐ろしくて。

 それでも、どこか苦しそうな魔法を見据えて、覚悟を決める私であった。

足りないな

語彙、表現に

描写力

ルーだけ入った

カレーの如し


思いつくままに書いただけの、別にうまくもない一首

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