表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
受験生に魔法少女は荷が重い  作者: 発狂済みの受験生
2/6

受験生に魔法の話は荷が重い

思いついた設定をこれでもかって詰め込んだら、めちゃ長くなった。

 なんてことを頼んでくるんだ、過去の私。

 今日の模試は午前で終わるということもあり、早々と帰宅の途についた私だったけれど、家に帰るわずか5分の道のりを全力で遠回りしようと、近場にあるコンビニに立ち寄っていた。

 普通に考えれば、家に帰っても、にっこにこのどろどろした怪異が待っているなんてことは、きっと起こり得ないことだろうけれど、それとこれとは話が別なわけで。

 何買おうかなぁ、なんて現実逃避しつつ、商品棚を眺める。

 そうだなぁ、今朝のことが頭から離れなくて、全然集中できなかったし、気分転換にでも、


「今日くらい贅沢しちゃおうかな」

「いいねぇ、魔法少女就任祝いってことで、派手にパーっとやっちゃえば? 例えばほら、この焼酎とか」


 危うく、手に取ったばかりの高校生にはちょっとお高いパックジュースを取り落としそうになった。

 慌てて掴み直して、さくら色の猫が頬に押し付けてくる焼酎の小瓶を引っ掴んで元の棚に戻す。もう成人済みとはいえ、お酒を飲める年齢じゃない女子高生に何を買わせようとしてるんだ。

 いきなりすぎて心臓バクバクなんだけど。てか、受験前の心理的ストレスからくる白昼夢的な妄想じゃなかったかぁ……。


「なんでここに」


 お酒を取られたことが不満なのか、かなり激しめに尻尾をくねらせる猫に、割と間抜けな質問をしてしまった。いつの間にか肩に乗っていたので、首の後ろあたりにふさふさとした幸せな感触がビシビシと……ていうか痛い痛い痛い。見た目猫だし、なぜか肩に乗ってても質量を感じないから、この尻尾が割と怪力を発揮することを忘れていた。

 痛いのでこの猫を床に下ろす。ちょっと名残惜しいとか思ってない。ないったらない。


「別に僕は君の家で待つとか一言も言ってないんだよねぇ」

「私も魔法少女になるとか一言も言ってないんだよね」

「あはは、面白いこと言うねぇ」


 何が面白いの?

 まぁ、見た目は天使を通り越して神懸かっているとはいえ、本性があのどろどろのやつと人間の相手をするように意思疎通ができると考えること自体愚かなことだろう、普通、多分。

 まぁ、普通ならこんな怪異に「魔法少女になってよ⭐︎」なんて勧誘されることなんて、脳みそに電極刺して夢を見ない限りはありえないことなんだけれども。


「科学のディストピアへようこそってね、ははは」

「急に何言ってるの」


 やれやれ、みたいな顔して首を振ってるそこの猫よ、あんたにだけは言われたくない。


 ***


 なんか物を買う気も失せて何も買わずに店を出たけれど、店員さんも店内にいた客も誰もこの猫のことに気づかないし、私のことも認識していないみたいだ。何か魔法を使ったとしか思えない。

 今朝のことといい、魔法少女うんぬんなんて話をちょっとは聞いてみてもいいような気もしなくもない。それで何かに巻き込まれるとかいう王道展開は、今だけは勘弁だけど。

 ほんっっっっっとうに、今じゃなければなぁ。

 今日何度目かわからないため息を吐きつつ、自室のベッドに荷物をどさりと放り投げ、自分も椅子にどかりと座り込む。


「で、魔法少女って何?」

「やっと話聞いてくれる気になったぁ?」


 我が物顔で私の部屋に入り、しれっとベットの上で顔を洗っているさくら色猫に、鋭い(自分比)視線を向ける。やっぱり猫の姿には弱いよ。

 最後に自分の手をひと舐めしたさくら色猫は、その若葉色の瞳で私を射抜いた。


「君の冬は終わらないーー君が魔法少女となって、魔法を倒すまで」


「……は?」

「つまり、君はこの晩秋から春までの期間を延々と繰り返すわけだね」


 ……………。


「……私は魔法少女ってなんなのかを聞いたつもりだったんだけど?」


 このスープに入ってる具はなんですか、って聞いたら、このスープはみんなのお腹を満たすためのものですよ、って答えられた気分だ。

 当の猫は私の疑問などどこ吹く風といった態度で飄々と三又の尻尾を揺らしている。


「魔法について語らないと、魔法少女についても語れないからねぇ」


 曰く。

 魔法とは、どこにでもあってどこにもない存在、いわば概念である。

 その存在を信じる者の前に現れ、様々な現象を巻き起こす。

 例えば、怪奇現象とか都市伝説とか奇跡とかいう名前で知られる現象などが、それに当たる。

 しかし、その存在を信じない者にとっては存在していない。


「……なんかわかるような、わかんないような」

「魔法のなかには、神様として信仰されてたり、悪魔やら妖怪やらとして恐れられてるものもあるかなぁ」

「……なるほど」


 背もたれが、私の全身の疲労感を受けてギシつく。


「つまり、魔法少女は、神様だとか悪魔だとか妖怪だとかと戦って、あまつさえ倒さなければならない、と」


 人間が神様を祀るのは、人間が神様に勝てないからなんだけどなぁ。


「まぁ、そういうことじゃないんだけどね」

「は?」


 胡乱げな視線を向けた先で、若葉色の瞳とぶつかった。


「ただこの世に存在して世界を回す歯車みたいなものなんだよ、魔法の本来の姿って。魔法っていうのも便宜上つけた名前でしかないしねぇ」

「……というと?」

「世界そのもの、とでも考えればいいんじゃないかなぁ。要するに自然現象さ」

「……それって科学の物理法則と何が違うの?」

「科学ってのは人間が自然現象を人間なりに都合よく解釈したもののことだよ。

 魔法ってのは元々ただそこに在るだけだった。どんな動物も魔法を魔法と認識することなんてなかった。なんせ魔法そのものの上に暮らしていたからね」


 ただ、とさくら色猫は続ける。


「人間が自然現象を認識したことで、自然現象も自らを認識した、とでも言えるのかな。

 人間が自然を神と崇めたことで、自然現象それ自体に意思が芽生えた。

 意思を持った自然、それが魔法だよ」


 そこまで話した猫は、そこで一旦話を区切った。

 それにしても、なんかめっちゃ壮大な話が出てきたなぁ。

 意思を持った自然、ねぇ。


「日本の神道が自然に神を見たのとおんなじように、自然の方も自分が神だーって自覚した、とかそういう話?」

「まぁ、簡単に言えばそういうことだねぇ。

 ついでに言えば、どれだけの人間がその魔法を信じているか・・・・・・が、魔法の強さにもなる。相当強い魔法は自我すら持つ。

 例えば、太陽の化身、天照大神あまてらすおおみかみはかなり強いね。日本人なら誰もが一度は聞いたことがあるでしょ?」


 まぁ、日本人なら、信仰してるかは別にしても、知らないはずはないよね。伊勢神宮に祀られてるんだっけ。

 それからも意味がよくわからない話が長く続いたので、ざっとまとめてみた。


 曰く。

 魔法の強さとは、どれだけ人に影響を与えられるか、ということであり、それは人がその魔法の強さをどれだけ信じているかによる。

 例えば、神様は実際に存在すると信じているとしたら、神様と呼ばれる魔法はその人に干渉することができる。ご利益とかいうのは、つまりそういうことだ。

 逆に、妖怪が実際に存在すると信じて恐れているとしたら、妖怪と呼ばれる魔法もその人に干渉することができる。災いとか、呪いとかいうのも、つまりそういうことだ。

 しかし、神様や妖怪なんて非科学的なもの存在しないと信じている人には、魔法の方もその人に干渉することができない。そういう人には、ご利益も呪いもあったもんじゃない。


「魔法ってのは、信じている人にしか効かないんだよ」


 そしてそれはその人の「魔法への干渉力」にも関係するという。

 魔法は人々が認識することで初めて存在できる。だから、魔法のあり方というのには、人間の、その魔法への認識が深く関わってくる。

 人が「この神様は人想いで優しい」と信じていれば、魔法はそういうふうに振る舞うし、人が「この妖怪は人を食う」と恐れていれば、魔法は実際に人を食べる。

 魔法とは、人々が想像した形に、世界が変化して生まれたものなのだ。


「人々の認識は様々だ。だから「魔法への干渉力」で「魔法からの干渉」に抵抗できる人間もいる。

 中でも想像力が強い人間は、魔法を使役することすらできる。

 それが、魔法少女さ。

 君は、神様は存在するかもしれないけど、自分に何か利益をもたらすこともない、って思ってるよね?」


 な、なんか、はたから聞くと全然夢がないなぁ、その考え方。

 確かに私はこれまでの経験と読書遍歴を通して、そういう結論を出したけれども。


「そういう考え方をする人には、魔法は干渉しにくいんだ。

 けれど、魔法の存在を否定しているわけでもないから、君の方は魔法に干渉できる。

 とは言っても、魔法は概念だから、概念でしか干渉できない。

 つまり、魔法を使って魔法に干渉するってわけさ」

「……ここまでは、まぁわかった。多分。

 でも、それがなんで私が魔法少女になる理由につながるわけ?

 別に魔法って、信じない限り、害があるものじゃないんでしょ?」

「それがそうでもないんだよねぇ」


 今度は何?

 話を理解するのにすごいエネルギーを使って、もうオーバーヒート寸前なのに。あーもう、おやつ食べて糖分補給したい。


「初めの方で、君が魔法を倒さない限り、君の冬は終わらないって言ったでしょ?」

「……あー、そんなこと言ってたっけ」


 それこそ意味わかんないんだけど。


「自我を持つ強い魔法が、この冬が終わらないようにしてるんだよねぇ」

「……なんで?」

「理由なんて知らないよ」


 それで、なんて猫は言って、スッと目を細めた。


「君が魔法少女になって、その魔法に冬を繰り返すのをやめさせないと、君は永遠に受験勉強で苦しむことになるんだけど」


 どうする?

 そう猫は聞いてきた。

 私はちょっとの間考える。


「その繰り返しの中で、記憶って引き継がれるの?」

「引き継がれないと思うよ、多分ね。現に今の君に前回・・の記憶なんてあるのかい?」


 当然私に繰り返しの記憶なんてない。

 ちぇ、記憶が引き継がれるなら、志望校に合格できるくらいの学力をつけてから、って思ったんだけどな。

 ……我ながら、受験戦争に毒されてるな。


 私にだって当然、魔法少女になってみたいという願望はある。

 子供なら誰しも一度は想像したことがあるだろう。

 日朝の某女児向けアニメの冒頭のように。

 ある日突然、退屈な日常が非日常に染まる朝を。


 そう、受験戦争で身を削るような勉強の日々の真っ只中でなければ!

 私だって!!

 魔法少女になってみたいのに!!!


 しかし、今の私は受験生。

 しかも志望校に合格できるくらいに成績を上げなければならないのに。

 でもなぁ……刺激に飢えているのも本当なんだよね。


 ちょっと、いやかなり心が揺れているのを悟ってか、にやぁっという効果音が付きそうな笑顔を浮かべるさくら色猫に、思わずほおが引き攣るのを感じる。


「繰り返す記憶はないとしても、デジャブは残るかもしれないねぇ。勉強しても勉強しても、受験本番でどんだけいい点を取っても、志望校に受かっても、全てが無意味にーー」

「もういいよ! やるよ! 魔法少女なるよ!」


 このにっこにこの猫の手のひら、いや肉球の上だとしても。

 勉強しても勉強しても無に帰す無限勉強地獄に陥るよりはマシだーー

記:11/28

共通テストまで残り49日


神様とかの超常の存在は、昔の人が「そういう存在がいるに違いない!」って考えて作り上げた虚構、かもしれない。

けれど、宇宙の成り立ちとか、生命の神秘とか、物理法則の不思議なほどの整然さとか、いろんなことを知ってみると、「実は神様が全部一から計算して組み立てたのかもしれない」って考えたくもなってくる。なら、神様がいたとしても不思議じゃないよね? って考えるのが主人公。


それは別にしても、例えば神社にお参りして「志望校に合格できますように」と願い事をしたとして、実際に合格できた時に、「自分が頑張ったから」と考えるのか、「神様が合格させてくれた」と考えるのかは人それぞれ。

神様がいると思う人は「霊験あらたか」な現象、と捉えることでも、いないと思う人はそもそも「神様のおかげ」とか考えない。

実際にはいつも起こっていることだけど、ちょっといつもと違うことがあったら、そのことと結びついて強く記憶に残っちゃう、みたいな。それが積み重なったものが、信仰になるのかもしれない。

マーフィの法則と似たようなことかも。


とりあえず、今のところは、

魔法=超常ふしぎ現象を自在に使う生き物(?)

って認識しとけばおーけー。


……こんな設定詰めてる暇があるなら、複素数平面でも勉強しろって? わかってますって、ははは。(現実逃避)


多分、魔法は哲学とか嫌いな人には絶対に見えない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ