21 エピローグ
最終話です。
「だろうね。他にも色々と証言してくれたよ。聖女に『どうして名前を言わないのか』と聞いたところ、名前を聞かれても答えなかったのは、『支援者にそう指示されたから』だそうだよ? コーエン男爵家の令嬢にね」
沈黙の中、「え?」と間抜けな声を上げたのは、殿下が話し始めてからずっとブルブルと震えていた伯爵令息だ。
「君がフード付きのマントや焼き菓子をある女性に渡して、貧民街で施しを行うよう依頼したことは知っている。フードを被ってショールで口元を覆えば、瞳しか見えない。その聖女は君と同じ緑色の瞳をしているらしいね」
「……」
「学園内で、君が本物の聖女かどうかに焦点を当てる者がいなかったのは幸運だったね。まあ、正面切って問われれば否定するだけでいい話だけどね。それでも謙遜だと受け取られ、聖女だろうと推察され、聖女の行いが君の評価となる。楽をして美味しいところだけ手にするとはね」
殿下は全てをご存じなのだ。
さすがのレリル様も何も言えないらしい。
「孤児院で、たまたま自分と同じ瞳の色を持つ女性を見つけただけで、よくもまあ、こんな手の込んだ茶番をやる気になったものだ。社交の経験もない君の手腕は大したものだ。何を狙ってそんなことをしたのか気になるところだけどね」
「……」
「貧民街の住人といえども立派な国民だ。その者たちを味方につけて何がしたかったのかな? それについては、私だけでなく王宮の方でも関心があるようだよ?」
「そ、そんな……」
王宮での取り調べを想像したのか、レリル様が顔色を失っていく。
「ち、違います! 王子とどうこうなるためにやったんじゃないわ! わ、私はただ、一組の生徒に相応しくあろうと――そ、それだけなんです!」
あまりに無作法な言葉遣いだけど、そんなことを問題にする前に、公爵令息がピシャリと告げた。
「レリル嬢。悪いが生徒会室に来てもらう。学園側と話す前に君に問うことがある」
「そんな……どうして……」
「立つのだ」
公爵令息がレリル様の腕を取って立たせた。
「うぅ。うぅぅ」
静まり返った教室で、彼女の嗚咽だけが聞こえていた。
◇◇◇ ◇◇◇
レリル様は、表向きは自主退学という形で学園を去っていった。
コーエン男爵家が王族に近寄ろうと意図したことではなかったらしい。
彼女が言っていた、「一組に相応しい生徒であるために、自分の評判をあげたかった」というのは真実だったようだ。
ついでに殿下とお近づきになれたらいいな、という淡い期待はあったかもしれないけれど。
勉強はできないけど一組に入りたい――そんな上昇志向があったのかな?
二組に対して偏見を持つ人なんていないのに。
現実を受け入れて学園生活を楽しめばよかったのに。
何だかなぁ。
「もう、メーベル!」
考え事をしていて、いつの間にかぼんやりしていたらしい。
シャーリーに人差し指で、頬をグイッと押された。
「ちょっと、シャーリー」
「せっかくのランチタイムに何て顔をしてんのよ!」
「だって……」
「いい加減、忘れなさいよ。もう会うこともないんだから。そんなことより、パーティーよ、パーティー! どうなの? アーチボルト様からお誘いはあった?」
「そ、それは……」
実は既に誘われている。
『メーベルの瞳の色を、ポケットチーフとボタンに使いたいんだ。君には僕の瞳の色を身につけてほしい。ドレスをプレゼントしたいんだけど、受け取ってくれるかい?』
シャーリーに、「誘われた」と答えたら、絶対に、「どんな風に誘われたの?」と聞かれるから、絶対に答えに詰まってしまう。恥ずかし過ぎて答えられないもの!
「あー。その顔は、誘われたな?」
「まだ何にも言ってないでしょ!」
「白状しなさいよー!」
「秘密!」
「この、このー!」
「だから、ほっぺはやめてよー」
新年を祝うパーティーは、きっとそれぞれが輝いて楽しめる場所だと思う。
誰か一人が話題を攫うよりも、その方がずっといい。
私もアーチボルト様と一緒に精一杯楽しもう!
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