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【old】私が間違っているのですか? 〜ピンクブロンドのあざと女子に真っ当なことを言っただけ〜  作者: もーりんもも


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17 レリル様の学力

 掲示板の前の人だかりはなかなか消えなかった。

 授業開始前に、先生たちがこぞって教室に入るよう声をかけて、ようやく解消された。





 一組の教室に入ると、レリル様は何食わぬ顔で席に着いていた。

 私の席は彼女の隣なので、席に向かって歩くと、人によっては彼女に向かって歩いているように見えたのかもしれない。

 例の伯爵令息三人が、私がレリル様に声でもかけようものならタダじゃおかないとでも言いたげに、憎しみのこもった視線で私を牽制している。

 それってつまり、彼らもあの『対象外』は、レリル様が攻撃されると思うほどの、学園側の愚策だと認識しているってこと?


 


 今日の最初の授業は、よりによってエリック先生だ。

 私の中で彼は、『カリキュラムの違う二組から編入した経過措置として、今回は対象外とすべき』と進言した一人なのではないかと推察――というか、ほぼ確信している。


 教室内の雰囲気は特にいつもと変わった様子はない。

 高位貴族にとっては、男爵家の令嬢の成績がどう扱われようと興味がないのかな?

 全てにおいて優秀な彼らは、試験の結果が悪ければ二組に落とされるかもしれない、などという不安とは無縁だろうし。


 私やシャーリーはレリル様と同じ下位貴族で、同じ土俵で戦っているからこそ、彼女を無視できないのかもしれない。

 あぁー。そう思うと何だか悲しい……。


   ◇◇◇   ◇◇◇


 翌朝。

 掲示板から試験結果が撤去されていた。

 これまで掲示物は一定期間掲出されていたのに、重要な試験結果が一日だけの掲載だなんて……学園側もやっぱり後ろめたいのかもしれない。




 珍しいことに、ランチタイムが始まると同時に、二組の女生徒が数人、一組の教室に入って来た。

 先頭きって教室に入って来たのはジゼル様だ。


「一組の皆様にご挨拶申し上げます。二組のジゼル・メラノでございます」


 ん? ジゼル様が私を見つけて微笑んだ?


「実は昨日我が家で祝い事がございまして、たくさん作り過ぎてしまったため、手付かずのものを持参いたしました。一組の皆様とは孤児院の慰問イベント以来ですが、今後も何かと連携することがあるかと思いますので、親睦の品としてお受け取りいただけると嬉しく思います」


 ジゼル様の後ろにいる二人の生徒が、それぞれにホールケーキをもっている。

 すぐに事情を察知した一組の生徒が、中央付近の机を並べてケーキを置けるように準備した。


「ご配慮いただきありがとうございます」


 ジゼル様がお礼を述べた。

 私は何が起こっているのか近くで見守りたくて、いそいそと中央の机の側まで進み出た。

 よく見ると、ケーキは既にカットされていた。一つは六分割に、もう一つは八分割に。


「あ! そういえば、一組にはレリル様がいらっしゃったんだったわ。いつも素敵なお菓子を差し入れてくださったことを覚えております。レリル様、いらっしゃいますか?」

「ええ、ここに」


 話題の中心人物から声をかけられたのが嬉しいらしく、レリル様は返事をしながらジゼル様の向かいまでやって来た。


「まあ、レリル様。お久しぶりですわね。もしかして、今日も何かお持ちになりました? 私としたことがレリル様のことを失念しておりまして……。事前にお尋ねするべきでしたわ」

「今日は特に持ってきてはいないわ」

「まあ、そうでしたか! 被らずに済んでよかった。それではレリル様。私たちはあなたからいただく一方でしたので、今日はそのお返しと思って受け取ってくださいますか?」

「ええ、もちろん」


 ジゼル様の瞳が光った。


「コホン。この後はランチですし……レリル様。大きなケーキと小さなケーキのどちらがよろしいでしょうか。六分の一と八分の一がございますが」

「まあ、だったら小さい方がいいわ。六分の一をもらうわ」


 ……え? 何を言っているの?

 小さいのがいいんでしょう? どうして六分の一を選ぶ――はっ‼︎ まさか‼︎


「ええと、レリル様。一組では高位貴族の方が多いので、遠回しな表現をなさるようですが、私は察することが苦手ですので、どうか鈍感な私にも分かるようにはっきりおっしゃってくださいませんか?」


 ……すごい。ジゼル様が悪い笑顔でダメ押しをしている。

 きっと、ここにいる人たちはみんな気がついたと思う。ただ一人、レリル様を除いて。


「え? 私は遠回しになんて言ってないよ? 小さい方がいいから六分の一をちょうだい」


 もう誰の目にも明らかだ。

 レリル様は分数を理解していない。

 六分の一が八分の一より小さいと思っている。分母の数字で判断しているんだ……。


「では、こちらをどうぞ召し上がれ」


 いつの間にか、個別のお皿に移し替えられたケーキが机の上に並んでいた。

 ジゼル様が、「こちら」と言って手に取った六分の一のケーキを受け取ったレリル様は、「え? 小さい方って言ったのに」と、ジゼル様に意地悪をされたような顔をしている。


 このままではまずいと思ったのか、レリル様を守るために伯爵令息の一人がたまらず叫ぶように割って入った。


「レリル嬢は小さい方を希望されたのだから、君も貴族の端くれなら、何も言わず小さい方を渡すべきなのではないか!」


 二人目の伯爵令息が続いた。


「そうだ。そもそもランチを食べる前にこのように大量のケーキを配るなど、配慮にかけている!」


 ジゼル様は糾弾されても涼しい顔だ。


「まあ、確かにそうですわ。私の配慮が足りませんでした。皆さま、どうぞランチにお出かけください。ここは私どもが責任を持って片付けておきますので」

「もちろん、そうする!」


 三人目の伯爵令息が鼻息荒くそう宣言すると、彼らはレリル様を連れて教室を出て行った。




 残されたジゼル様はとても満足げだ。

 それもそうだろう。彼女は目的を果たしたのだから。


 数学の試験を受けなかったレリル様。

 試験結果が対象外となり、おそらく最下位となったであろう事実がなかったことにされたレリル様。

 

 ジゼル様は昨日の掲示板を見て決意したのだと思う。

 今日のこの策を思い付いたのは、レリル様の実力を知っていたからこそだ。

 私も胸がすく思いだ。

 

「ジゼル様。お手伝いいたしますわ」

「まあ、メーベル様。ありがとうございます。二組の教室には簡単な軽食もございますが、よろしければ今日のランチをご一緒しません?」

「ええ、ぜひ! あ、こちら、シャーリー・エルドロンです。彼女もよろしいですか?」

「初めまして。どうかシャーリーとお呼びくださいね」

「まあ! それでは私のこともジゼルとお呼びくださいませ」


 この日私たちは、至福のランチタイムを過ごしたのだった。

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完結しました‼︎
【加筆修正版】私が間違っているのですか? 〜ピンクブロンドのあざと女子に真っ当なことを言っただけ〜
5万字の中編だった前作に4万字ほど加筆して修正した長編です。

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― 新着の感想 ―
ジゼルさん、めっちゃ勇気出してきたな。 勇気というより堪忍袋の問題かもしれない。
ジゼル様グッジョブ!!
算数苦手な娘よりひどいね。
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