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【Episode M : A Whispering Dream, A Trembling Heart/囁く夢、揺れる心】

<Chapter1> <0>


【いっそ、出会わなければよかったのかな…それでも私は…】


甘くて心地よいバニラの香水が薫るとまだ思い出す。居なくなった彼を思い出す。そんなことをコーヒーの飲みながら考える。それが私の最後の恋だったんだと思う。


ありふれた日常が目まぐるしく変化したある日の事


「ありがとうございました。クロセ先生のアドバイス参考にしてみます」


そう言って、高校生の女の子は嬉しそうにカーテンを出る。クロセと呼ばれた者は小さなため息をする。


「今日も恋の相談がメインだったなぁ」


仕事は占い師をしているけど、占いよりも的確なアドバイスで口コミが広まり、恋愛相談のスペシャリストみたいな評価になっている。他の占い師より予約でいっぱいで、連日完売。けど、水晶もタロットカードも使用しない。話を聞いて、それに答える。そのアドバイスが好評なので、自分的には複雑だったりする。


同業者から冷やかしで

「いっそ、婚活アドバイザーに転職したら?」と言われる始末


年齢も10代から40代までと様々で、店長から大繁盛と言われても、胸を張って言えない。むしろ自分には学生の時から10年位彼氏もいないし、結婚相手だって居ない。


「私だって聞いてるようなドキドキするような恋愛したいよ…。」


逆にお見合いとかに行くと、全然思うように話が出来ないし、会話が続かない。他人のアドバイスが的確な人の典型的なタイプ。しかも、相手に自分の職業の事を聞かれて、占い師と答えると決まって微妙な反応をされる。


「これからどうしようかな…稼げてはいるけど、これからも同業者から後ろ指を指され続けるのは嫌だなぁ」


そんな事をぼやきつつ、最後のお客さんが来る。来たのは20代位の女性。座ってすぐに


「クロセ先生!職場の後輩に恋愛対象になってもらうにはどうしたらいいですか?」


切羽詰まっているらしいけど、自分は心の中で「またか…」と思いつつ、話を聞く。水晶もタロットカードも重いから次から持ってこなくていいかなーって思いながら。相談を聞きいて的確なアドバイスを始める。


最後の占い?が終わり自分のブースを出ると店舗のオーナーが待っていた。


「遅くまでお疲れ様。今日も隙間なく予約入ってて売上1位よ!あと給料日だから。それと、売上トップの特別手当ても渡しとくね。」


私は「ありがとうございます」と言って受けとる。他の占い師からは視線が痛いのだけど…


帰り道、ため息を付きながら帰る。オーナーとしては売上が上がっているので、文句は言われないけど…自分の未来を占わなくても、占い師としては複雑な未来が見える。


「あーあ、転職しようかなぁ。そういえば、あの製薬会社、受付募集してたっけ?」


最近、先代の社長が引退して息子が継いで、製薬会社の方針がガラリと変わり、今やトップ企業の仲間入りするぐらい。しかも継いだ二代目がカッコいいってのが広がり広告としても人気だった。


「もしかしたら、働けば、二代目とも交流ができてあわよくば…」


「こんばんは、今夜は月がキレイですね。」


いきなり声をかけられてビックリしそうになる。妄想に入りすぎていた。目の前には黒いコートを来た男?が立っている。不審者と思い後ろに下がる。


「夜分に急に声かけたら怖いですよね。失礼しました。」


黒いコートのフードを取り、顔が見える。白髪で丸メガネをかけた男で顔が美形!?私は少しモジモジしていると


「驚かせるつもりは無かったんですすいません。少しお時間頂いても大丈夫ですか?」


美形…いや、美形であっても警戒はしなくてはいけない…とても美形でも…


「はい、何でしょう?ただ、夜道なのでその場で聞かせて下さい。」


「すみません。では手短に。今日の貴女の出会いは運命を変えます。ただ、強い力は貴女を取り込んでしまうでしょう。なので貴女にはこれを持っていてほしい。ここに置きますね」


美形の男はポケットから結晶を取り出して、自分の立っている近くのポストの上に置く。この距離だと黒い石にしか見えない。


「それは何ですか?」


「これは“虚星核カテナ”と言います。貴女の強い力を制御出来るものです。貴女のお守りとして持っておくだけでいいです。必要なときに貴女を守ってくれます。」


話が少し噛み合ってない気がする…


「私も職業柄、こういうのは少しわかりますが、後で高額請求とかされたりしたりとか、違法な物だったりとかじゃないんですか?」


「そうですね。貴女にはまだ意味はわからないですよね。もちろん貴女を脅かす物ではないです。高額請求もしません。プレゼントとして受け取っていただければ。今日はお試しで受け取ってもらって後日、不要であれば、自分はこの道の先の雑貨屋で働いてるので返却してもらっても大丈夫です。」


「まあ、そこまで言うなら受け取りますけど…ちなみにその出会いって、今日なんですよね?」


「はい、“他の人が目覚めてる”ので、次は“貴女”になります。明日の朝、理解していただけたのなら、何でも質問にも答えますよ。」


信用できるかと言われたら微妙なだけど、まあ1日預かって明日返せば何の問題もないし、明日もあの美形に会えるなら…


「あの!詳しくは今聞けないんですよね?」


「はい、今聞いても不要な情報として“覚えれない”ので明日にお話します。」


「じゃあ、いったん1日だけ受け取ります。そこに置いといて下さい。あとで受け取ります。ちなみに…ちなみになんですけど、貴方のお名前は?」


ちゃんと受けとる。後日話を聞く。必要な事かもしれないので、名前も…


「私は“サクラ”と言います。そこの雑貨屋“月灯堂げっとうどう”で店主をしています。」


サクラさん…素敵な名前…いや、しっかりしろ私!まあ身元がわかっているなら問題はないよね。するとサクラさんが


「意味のわからない事ばかりですいません。私はこれで帰りますので、これをお願いします。」


そう言って雑貨屋の方向に歩いていく。居なくなったあとポストの上の黒い石を手に取る。名前何だったかな?“アリン”だったっけ?黒く不気味だが、中がキラキラ輝いている。キレイ…


「それにしてもカッコいい人だったなぁ…“黒髪のロング”で美形だった…サクラさんかぁもう一度会える約束したからいいよね!」


私はウキウキしながらもらった石をポケットに入れて家に帰る。


家に着いて、服を脱ぎ捨ててお風呂に入る用意をする。服が床につく時、ゴンッと音がして、石の存在を思い出す。そうだった。サクラさんからもらった謎の黒い石“コリン”。石の中には液体でも入っているようにキラキラして吸い込まれそうな不思議な感じ。


「あっ!こんなことしてる暇ない。こんな時間だから早くお風呂入ってご飯つくろ」


でも、折角だから石もキレイにしなきゃと思い下着も脱ぎ捨てて石と一緒にお風呂に入る。石はキラキラし続けて見た者を魅了する不思議な感じ。湯船に浸かりながら石を見ながらサクラの事を思い出す。


「すごい整った顔立ちだったなぁ。芸能人みたいだった…“青色のセンターパート”で珍しい髪型だったけどよかったかも。でも帰り道に雑貨屋あったかな?名前は確か“太陽輪たいようりん”だったよね。まあ、明日行くから大丈夫よね」


お風呂を出て、ささっとご飯を食べて寝る。明日は仕事の前に雑貨屋に行くから…元々、寝付きの悪い私がスッと寝れたのは久しぶりの事。



私は見知らぬ光景に立っている。これが夢だと直ぐに気がついた。もちろん自分には予知夢、明晰夢めいせきむなどを見たりはしないのだけど、たまにこの場所は訪れている。しかも夢であることがわかる謎の風景。起きれば覚えてないのだけれども


「今日は珍しく霧がかかってなくて向こうの山までしっかり見えるかも」


そんな独り言を呟きながらゆっくり歩いていく。何もないただ広い草原。


数分歩くとまだ先なのだけれども、緑色に光る何かがある?普段はただ歩いて終わりなのに?光を見つけてから数十分歩くと人のようなだと感じたときには近くまで来ていた。


しかし人ではなく明らかに異形の者であることがわかった。その者は影に覆われてしっかりと姿はわからないが緑色角が2本ある鬼のようだった。遠くから見えた緑色の光は角から発生していたのだとこの時初めて気がついた。


夢とはいえ怖くなり離れようとすると影がこちらを向いて


「ようやく、来たと思ったのに…なんだ女か…」


言葉がわかるけど…女って…ちょっと頭にきて


「何よ!いきなり私の夢に現れたくせに女って何よ!気に入らないなら私の夢から出ていってよ!」


「フンッ、脆弱な“モナント”如きが余を退ける?片腹痛いな。お前ごとき一瞬で消せるわ」


そう言うと角を持つ影は私の目の前に立って私を払い除ける。すると私の身体が砂のように風に流れて消えていく。


「え…私の身体が…」


「主なき身体は余が頂く。余が覇者となり世界の理を頂こう。安心して消えるがいい。」


言葉を発する前に身体が消えていき、意識が霧散むさんしていく、もうダメかと思って霧散していく中、黒い石が砂にならずに草原に落ちる。何故か私の意識は黒い石の中にあり霧の鬼のようなやつを石から見上げる状態となる。


「なんだこれは?この世界にこんなもの何故持ち込めている?」


石を持ち上げた瞬間、“私”が石を持った光景に切り替わる。手は昆虫のようなゴツゴツした手になって額を触れば角が生えている…身体中から悪寒がして恐怖に包まれる。そしてそこで風景がブラックアウトして意識が消える。


目が覚めると自分はベッドの中にいて冬場というのに全身から汗が流れて布団がビッショリだった。まず見たのは自分の手…いつもの私の手。その手で額を触ると汗はかいているものの何もない額。


夢であるので、現実なわけがないと思いながらも確認しないと不安になるぐらいのリアル夢だった。そして、布団の横にはサクラさんからもらった“カテナ”が…黒い石ではあるのだけれども内側は緑色に輝いていた。


私の見ていた“世界”が夢で私はようやく目が覚めたんだと思った。



お読み頂きありがとうございます。

今年も引き続き物語を作っていきますので、お読みいただければ幸いでございます。


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