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【Episode S : On the Road That Closed Itself/閉ざされた道の上にて】

<Chapter2> <9>


翌日、目を覚ますと同じ病院の天井。時間も遅かったし、両親に連絡がつかなかったとのことでそのまま同じ病室に泊まることになった。翌日も朝から検査の嵐である。


もちろん“異常無し”しか出てこない不可解なものだが、医療人としてはこんな訳がわからないままには出来ないとのこと。両親の迎えを待つまでの時間潰しと思えばこんなの問題なく耐えれる。


だって、私は自由になったんだから。


検査ばかりではなく“健康”なので院内を自分でどんどん歩く。“502の眠り姫”と、こそこそ話す人がいるが、近寄ってきたりはしない。ちなみに眠り姫は私のあだ名で悪口、そのまま死ぬんだろうって看護師からも噂になるぐらいの眠り姫が1日で回復&退院なったので、噂が院内を全速力で浸透していった。


ただ、夕方になっても両親との連絡がつかない。その状況を理解したのは夜になって院長から直接言われることになった。


「すまない。医療費を振り込まれていたので、不審に思っていなかった…数ヶ月面会に来ていないのに連絡を取らなかった私たちの責任だ」


私は聞いても驚くこともなかった。だって最後に面会に来た両親と会話してても一切、目が合うことなかった。なんか後ろめたいことあるんだろうなとは思ってたけど、まさかこんな事だったとは思いもしなかった。いつ死ぬかわからない子供を放置して疎遠にするなんて。


電話も繋がらない、住所は家が取り壊されていて何処に引っ越ししたかもわからない。私がサクラさんに出会わなければ知らなかった真実。


「じゃあ私は、これからどうしたらいいですか?施設に行く事になりますか?」


「そうだね…病院では健康になった君を置いとけない事になってるからね。だからと言って追い出すことはしないよ?手続きが終わるまではあの部屋を自室に使ってもらっても大丈夫」


院長は困っていたが、心配して気を使ってくれた。でもそんな事で迷惑をかけたくないと思っていた。私に出来ることは…


その日の夜に私は1人病院の屋上に向かう、普段は解放されていないが夜になると看護師さんの気分転換で解放されると言う。何故知っているかと言うと寝たきりの私の横で看護師の2人が談笑してるのを聞いていたからである。私が知ってもどうも出来ないだろうや何かしたりしないと思ってたからの行動だろう。


1段1段、階段を上がる。エレベーターで最短ルートで行けるが誰かに見つかるもの良くないのでこっそり向かう。“健康”になった身体では階段は息切れもしなかった。


月明かりが扉の隙間から差し込む。普段は閉まっているのだが開いているみたい、そこで引き換えそうかと思ったが不思議な感覚になり、扉のノブに手をかけて回して開けるそこには…


夜空は投影された映像だが、満点の星空。だけどそこには銀の結晶が何百、何千と空を浮遊している。竜巻のように浮かぶ結晶はとても綺麗で別の星空を構成してるみたいで幻想的だった。


その銀の星屑の真ん中で指揮者のように手を空に掲げている者がいる。その者は全身黒ずくめでコート…私はとっさに言葉が出た。


「もしかして…サクラ…さん…?」


黒いコートは振り返りフードを取る。それは綺麗な金髪のショートボブの女性で顔立ちは整っていてモデルの様だった。その金髪の女性はこちらに歩いてきて疑問を投げ掛ける。


「貴女は“サクラ”がわかるの?みたところただの“ノーヴァ”のようだけど…ん?貴女の“黒”は何?」


金髪の女性は触れれば届く距離までやって来て覗き込む、身長は高身長で覗き込まれると金色の目に心を奪われそうになる。私が顔を赤らめて、ソワソワしていると


「なるほど、噂は本当だったのね。ノーヴァを使って…オモシロイわ。お嬢さん、いい情報を頂いたのでこちらからもアドバイスをしましょう。」


金髪の女性は浮遊している銀の結晶のところに行って、舞台俳優のようにコートを翻してこちらに向く。


「先ほどの“名前”はあまり他の人には言わない方がいいわ。しかも、その人は“サクラ”ではないからね。貴女はまだ“こちら側”に来て間もないのだろうと思う。まずは探知能力は上げとかないといけないわ。貴女が“私の敵”を倒してくれるかもしれないから私は貴女に力を貸すわ」


金髪の女性は手を握るとての中に黄色の結晶が…


「さてこれで貴女は晴れて“ヴォルガ”に1歩近づく。私に見せて、貴女が運命をねじ曲げてどんなカオスをもたらすのか…」


女性は浮遊している銀の塊に黄色の結晶を放り投げる。すると魚群の様に黄色の結晶を中心に銀の塊が回り始め、勢いを増す。

金髪の女性が手を頭上に上げて私に向ける、するとその魚群のような結晶が勢い良く私に向かってくる。死んじゃうと思い後ろに逃げようとするが、背中が壁に当たり身動きが取れない。接触する瞬間、手で防ごうとしたが衝突はせずに私の中に吸い込まれていく。


瞬く間に全て私の中に入っていって、幻だったのかと錯覚をしてしまうようだった。


「あれ?私は…どうなって…?」


「貴女は本当にわからないのね。まあ、それだけあれば“ノアス”如きでは死なないでしょ」


ノアス?伝説上の化物のこと?確かに先ほどから“チカラが(みなぎ)る”不思議な感覚だった。それを見て金髪の女性は嬉しそうに、


「これで“彼”と会えたら驚くでしょうね。さて貴女はこれで縛られるものは本当になくなった、自由よ。見せて貴女がもたらすものを」


金髪の女性は屋上の柵に乗り飛び降りる。私は慌てて下を見るが消えていた。サクラさん…いや、前の黒いコートの人もそうだけど不思議な人が多すぎる。金髪の女性が居た場所を見ると見慣れたバッグが足元に置いてあった。カバン?


持ち上げるとキーホルダーが落ちる。それは星を持ったクマだった。私とお揃いの…今まで“消えて忘れていた記憶”が蘇る


「あれ?これって…ユズキの…」



~それは彼女、ユズキとの出会いだった~


「ねぇ、あなたも今日からいるの?女の子はあんまりいないから、わたしとおはなし、しよ?わたしはユズキっていうの、果物の柚に希望の希って書くの」


前の病院から転院してきて、その時は個室が確保出来ないから数日だけ大部屋に行く事になって初めて声をかけてきた子だった。当時の私はあんまり話すのが苦手だったのだけど、ユズキは同い年だったのもあってすぐに打ち解けることができた。


「ねぇ、ユズキはいつからいるの?」


「わたし?保育園の終わりぐらいからここにいるの、血の病気?だったかな?だから、小学校には行けてないんだ」


私と同じでもしかしたら一生病院かもって聞いたとき悲しくなった。でもユズキは


「そんなことより、向かいの個室のお婆さんとこ行こ。行ったらお菓子くれるよ」


私はその時は自由に動けていたので、ユズキに手を引かれながらそのお婆さん所に行く。少し気になり聞いてみる。


「そのお婆さんは家族?」


「違うよー、知らない人。でも、お菓子くれるから好きなんだ」


2人でお婆さんの所にいく、勢い良く扉を開けて


「キヨさーん、今日もお菓子ちょーだい。」


今思えば子供って怖い。知り合いでもない人とコミュニケーションがとれる。でも、お婆さんは笑顔で向かえてくれる。


「あら、ユズキちゃんおはよう。あら?お友達?」


「うん、今日からここに泊まるんだって。だからお友達。名前は、えーっと」


そう言えば名乗ってなかった。緊張しながら私は、2人に向かって


「サエって言います。よろしくお願いします。」


お婆さんはニコッって笑って


「あら、礼儀正しい子ね。私はサヤマ キヨです。ユズキちゃんとは仲良しよ」



キヨさんはとても優しい笑顔で私を招き入れてくれた。そんな光景を見た、ユズキは


「私、ユズキって言います。お菓子が好きです。」


真面目に言うから、キヨさんと私は2人で病室で大笑いしたのを覚えている。その後、個室に移ってもユズキはちょくちょく遊びに来てくれてた。



「サエーあそぼー」


それが日常になって。ユズキと一緒にいれば少しは心が軽くなった気がした。そんな時、ユズキが袋を持ってきた。


「ねぇねぇ、これね。私とお揃いなんだ。」


袋を開けると星を持ったクマのキーホルダーだった。聞いたら、お母さんが来たからお友達とお揃いを買ってほしいと言ったみたい。


「このクマさん願いを捕まえるんだって〜。このクマ、星を持ってるでしょ? だから、願いを捕まえてくれるだよ。だからお願い事は2人で外の世界でまた会えるようにって思って」




ユズキは自分は外に出れないから自分の代わりであるクマを私に託したんだと知ったのは少し先の話。


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