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【Episode S:A World Without Prayers/祈りのない世界】

<Chapter:1> <0>


世界は常に私を置いて先に進んでいく。そんな世界はキライだった

私は空を見たことがない、私が生まれる前から空と呼ばれるものは都市を包むスクリーンで天候は全て管理されている。でもそんな“偽物の空”ですら私は見たことはない。


産まれたときから窓のない病室で1人過ごしている。デバイスによって健康を管理されている社会なのにそのデバイスは私には無い。正確にはこの部屋が私のデバイスのようなもので健康を体調を管理している。ここの部屋に来るのは看護師さんだけ。都市で流行ってる食べ物、アクセサリー、ファッションの全てはテレビでしか見たことなく、触れたことはない。


始めから私には何もなく、これからも何も無いのだろうと思ってしまう。私が17歳になった頃には両親も面会にすら来なくなった。いわゆる不治の病、高度な都市にいても病名、治療すらもわからない。


ただ何もない1日が過ぎていく、小さい頃は看護師さんに

「すぐに良くなって、学校に行ってお友達沢山作ろう」などと言われていたけど、流石の私も成長すれば慰めの言葉も聞き飽きた。だからと言っても毎日顔を合わせる、お世話してくれてる人たちを無下むげにも出来ない。


小さい頃は部屋も歩き回っていたが、最近はベッドから降りることも出来なくなってきた。手足はどんどん細くなりみすぼらしくなっていく。身体を綺麗にしてもらうときに服を脱ぐのがどんどん恥ずかしくなる。同性でも自分のコンプレックスを出しなくない。このまま一生コンプレックスと後ろめたい気持ちを持ち続けたくはないが、この環境だと自分で決意を決めても出来ないことの方が多い。


「もう、こんな生活、環境やだな…誰か助けてよ…。神様は居ないのは知ってる。それなら、私を早く連れていって…」


私はベットで天井に向かって手を伸ばす。袖が重力で肩までずれて細い腕があらわになる。それを見るとまた気持ちが曇る。


何だか身体が寒くなってきた、手も温度がどんどん下がって冷たくなるのがわかる。すると、部屋の機器が一斉に鳴り出す。自分はそれを聞いて


「ああ、もうダメなのかな…でも、よかった。」


涙が頬を伝う。良くはない、何も知らない、何もない。そんな人生なんてイヤだ。みんながしてる“楽しいこと”したい。神様、私が何かしたの?どうして私はこんな目に合わないといけないの?友達だって、恋人だってほしい。美味しいもの食べたいし、アクセサリーもほしい。どうして私には“貰えない”の。


「私はこんなに普通の事を望むだけで罪なの?少しぐらい望みたいよ…誰か助けてよ…」


すると部屋の機器の音が一斉に止まり、部屋が静寂に包まれる。扉が開く音がしたので最後の力を振り絞って向いてみるとそこには黒い帽子で黒いコートを来た人が…


「君はまだ諦めたくないかい?君が望むなら力を貸すよ?」


声は男とも女ともわからないが私を助けてくれる?


「あなたは死神さんで私の命を回収しに来たんじゃないの?痛いのはキライだから一瞬で楽にして…」


悲痛な叫びだった、望んでも手に入らないことの方が多いのに“これ”だけ手に入れることが出来てしまいそう。何だが理不尽だよね。黒いコートの人はふぅとため息をついて


「君が望むなら“回収”はするけど生きたいかい?君が望むなら自由を与えてもいい。」


自由?こんな私を?黒いコートさんは死神じゃなくて神様なのかな?都合が良すぎるけど…


「死神さんは私を助けてくれるの?何か対価が必要?私には“何もない”んだけど…」


黒いコートの人はまた、ため息と共に


「死神さんってやめないかな?自分は…そうだな…“サクラ”とでも名乗っておこうかな?」


声色はわからないが話し方は間違いなく男なのに可愛い名前。不思議と笑みが溢れる。


「サクラさんってお名前、なかなか可愛いお名前なんですね。」


黒いコートの人はまた、ため息をして


「君と話してると調子が狂うな。君を助ける代わりにお願いが1つある」


「対価ってやつですか?自由を貰えるなら代わりのモノなんて何でもいいですよ。どうせ、元々失う予定だったので、命でもなんでも」


黒いコートの人はポケットから黒い結晶を出して私に近づいてくる。その黒い結晶は全てを飲み込むぐらい黒く冷たいもののように感じた。


「自分が助けるんじゃなくて“君が助かるんだ”けどその為には君は“ヴォルガ”にならないといけない。しかも君は…“スキア”。アイツの対抗として強くなればもしかしたら…」


黒コートは私のベットに近づいて覗き込むただ帽子を深くかぶっているのと、中は黒い霧がかかったかのように覗かれていてもこちらから顔は判別出来なかった。“ヴォルガ?”“スキア?”私をはその謎の言葉は理解できなかった。黒いコートは寝ている私の胸の辺りに手の平ぐらいの漆黒の結晶を乗せる。


私も中の“何か”がうごめき、漆黒の結晶が溶けるように身体に染み渡ってきた。身体の中をナメクジが走っているのかのように、悪寒おかんが走る。気持ち悪いが身体は体力の低下もあり、思うように動かない。


すると、胸の奥の方に到達したヌルっとしたナメクジの様なものが“何か”を包んでいく。やはり悪寒は止まらず気持ち悪さが残り続ける。しかし次の瞬間、あれほど動かなかった身体が急に軽くなる。起き上がるイメージ、歩いているイメージがどんどん流れてくる。


そのイメージに合わせて身体を動かすと今まで1人で起き上がることも出来なかったのにスッと上半身が起き上がる。


「…どうして?今まで動かなかったのに」


「これで君は自由になったんだ。ただ、もしかしたら知らない方が幸せだったかもしれないと思うときが来るかもね。」


黒いコートは喜ぶ私を確認して病室を出ていく、扉を閉める瞬間に身体が霧になって消えていった。


すると今まで沈黙していた医療機器が一斉に鳴り出す。黒いコートの人が出ていったすぐ後に、担当医や看護師さんが慌てて部屋に入って私の近くに来て「何があった?起きれたのか?」など瀕死だった、自分が何故“健康”になったのか、検査や面談などして夕方から夜になり帰宅は明日以降となった。


もちろん検査の結果“異常無し”となり、お医者様は頭をかかえることになった。異常な異常無しなど考えれないぐらい奇跡を通り越していた。


こんなこと黒いコートの人が気にしていた苦悩でもなんでもなかった。だって、私はようやく普通を手に入れたんだもの。


これが私のスタート地点。始めは普通を知らなさすぎて新鮮だったけど、今思い返したら“異常”だったんだと思う



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