【Episode Y:Fragments Lost / 欠落した断片】
<Chapter:2> <2>
黒コートが突然消えた後、家に戻ることはなく仮住まいのホテルに戻った。それから出版社からもらった書類に目を通す。
原因不明の怪事件や、近隣住民の聞き込みまで細かく書き込まれていた。みんなからの気持ちを受け取ると一枚の写真に目が止まる。
それは町外れにある立ち入り禁止区域だった。禁止区域なんて誰も近寄らないし、取材することはないのでは?と思い写真の裏側を見る
【セミロング 花柄のワンピース 小柄の女性が出入り と言う目撃情報】
姿が写っていたわけでもなく、それが正しいかもわからないが、その情報が自分の妻の可能性を示唆していた。写真の日付を見ると数週間前。
思い当たる記憶はなく、一般人の主婦それも妊婦が行く理由がない。気のせいかも知れないが一旦ここに行くことに決めて布団に入る。寝る時間ではなかったが禁止区域は早朝であれば警備が手薄なのも仕事柄知っていた。
仮眠を取って数時間後、目を覚まし支度をする。何があるかがわからないのでホテルのメモに行き先、どう行った理由などとかも書いておく。もし自分に何かあれば仲間が、誰かが自分の足跡を見つけてくれるだろうと思って。
足取りを残すために、電車をバスを乗り継いで目的地に向かう。こうすれば、この情報社会で記録を残すこともできる。直接向かえるタクシーは使わず、あえて痕跡を残し、到着をする。そもそも禁止区域に行きたがるタクシーの運転手はいないだろう。
到着するとそこは化学工場の跡地で侵入を防ぐ黄色のテープが張られていた。地図でも調べてわかっていたが、工場地帯に自分の奥さんが来ることも気軽に花柄のワンピースで来るような所でも無い。禁止区域に出入りするだけでも嫌でも目立つ。
考えても埒が明かないので、周りを警戒しつつ黄色いテープを潜り、先に進む。
エントランス部分でデバイスを確認すると奇妙な事に電源が落ちていた。このデバイスはシェルター内の住人は、必ず装着を義務付けされていて取り外し不可な為、防水防塵だけではなくあらゆる事での故障はあり得ないとの物で電源が落ちるだなんて聞いたことがない。
あれ…?
そう言えばあの日の赤い玄関でヒナタのデバイスはあったか?衣服は…としても、デバイスが破壊されたら管理塔へ連絡行くのでは?自分が来た時には…連絡されていたのであれば“灰の巡礼者”の到着は遅くないか?
それにあの時、隊員は“「生存者確認!家の中が異常になっているが、異常発生源の反応無し。生存者に聞き込みを行います」”と言っていた。
生存者?ヒナタのデバイスはロストしてるぞ?しかもノアスの反応?明らかにロストしている住人よりも灰の巡礼者はノアスの出現に反応している?
自分の中で何かが少しずつ噛み合わなくなってきた。そもそも自分は何か勘違いをしているのではないかと思ってしまった。
まだ、真実にたどり着くにはピースが足りない。そう言えば、サルワタリさんが昔言っていた。
“時計を動かすのに大きい歯車だけでは動かない、小さな歯車がも必要で、動かないのであれば見落としている小さな歯車があるんだ。それは我々メディアにも当てはめることができる”
“1つを見落として決めつけてはならない”
そして、すぐに疑問の2つの答え合わせが…
瞬く間にグレーの軍服の兵士に囲まれる。兵士たちはライトと拳銃を構えてこちらに降伏を伝えてくる。自分は両手を頭上に上げて抵抗の意思がない事を伝える。
その後、近くの駐在所に連れていかれて、取り調べが2日かかったが、厳重注意で解放された。もちろん拘束前に施設を出た時に自分のデバイスはチェックしていた。施設を出たら瞬間に、問題なく電源が入り起動していた…。




