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【Episode K :Lost in a Color I Can‘t Name/名前のつけられない色に、迷い込んだ】

<Chapter1> <0>


ギギギ


目の前のキャンバスをカッターで切る。

大きなヒマワリの絵が真っ二つに裂かれ、気持ちを吐露とろする


「だめだ、こんなんじゃ僕は…」


カーテンの隙間から光が差し込んでいる。もう朝なのに眠気が来ない。むしろ、苛立ちが眠気を覆い尽くしている。


次のコンクール用の絵を描かないといけないのに思う通りに筆が進まない。最近は特に夜中になると胸が熱くなり感情のコントロールができなくなり、自暴自棄に陥る。


「集中しなきゃなのに、頭の中に声が響く…」


胸が熱くなると同時に獣の叫び声が頭に響く。薬を飲んでも休んでも一向に改善に向かわない。だから明日は病院に行くことになっていたのだが気がつけば朝になってしまった。


仕方ないがこのまま病院に向かう為に準備をして家の階段を降りる。すると母親が


「さっき、大きい音したけど大丈夫なの?またいつもの?」


母親もある程度のことは話してるし、絵のコンクールの件も知っているのでナイーブな時にあまり干渉してくることはない。こっちとしても心配かけたくないのだけれども、感情のコントロールが上手くいかないので強く当たってしまうことがある


「ごめん、ちょっと今話せない…このまま病院へ行ってくる」


チカラなく答えたら母がお札を渡して「お昼、美味しいものでも食べてきたら?」と言ってくれる。申し訳ない気持ちが心を支配する。小さい声で


「あり…がと、行ってくる…。」


それを聞いた母は嬉しそうに「気をつけてね」と見送ってくれる。



自分の母親の詩織しおりは小さい頃から女手ひとつ…言い方が良くないな。親父も存命で別れてもないけど、仕事の都合上、家に帰ることはほとんどない。自分の物心ついたときから家に居ることがほとんど無かったので顔なんて思い出せないぐらいだ。


もちろん、家族は養ってもらってるので、父親としては問題はないのだと思う。だから、ほとんどの時間を母親と過ごしているので母親が自分の苦悩を一番良くわかっているのだと思う。


ただ、素直に言えないのが思春期の男の子あるあるだと思う。でも、“こんなこと”になるんだったら、ありがとうも行ってきますも、ちゃんと言えば良かったかなって思うかな。


目の前の男は自分を逃がしてはくれなさそうだから、走馬灯みたいなのが見えたりしてる。


「お母さんごめん。ちょっと帰れないかも…」


まずは、母親と会話のあとに家を出た時まで話を戻そう。


~~~


玄関で母親からもらったお札をポケットに入れて病院に向かう


暗がりに居たのでまぶしい光が目の前を覆う。病院までの距離は、新都からは少し離れているが徒歩で行ける。


家を出て数十分歩いた新都の入り口の家で警備兵が黄色いテープを張って他の人が入れないように制限している。こんな新都で事件?と思ったけど、今は自分の頭痛の方が深刻なので足早に蔵原(くらはら)病院へ向かう。総合病院は幸いなことに近いのと、日中はそこまで酷くはないので今の間に行動する。


病院に入り名前が呼ばれるまで、待合室で待機する。暇なので周りの人たちを観察する。腰を痛めてそうなお婆さん、転けたのだろう泣いている子供を抱えるお母さん。骨折でもしたのだろう松葉杖をついた男性。病院はいつもバタバタしていてて、いつもの光景だった。


ズキッ


急に頭痛が激しくなる


「「我が…、…答えよ」」


またあの声、特に今日は言語が聞こえる。“答えろ?”何をだよ。ちゃんと言えよ。ハッキリ!


今日は特に睡眠不足も合間ってイライラがピークになる。カッとなって自分の拳で頭を殴ろうとした時に腕を捕まれる。掴んだ腕を見て、誰だと思いその顔を見ると知らない男がそこに立っていた。


「そんなことしても、治ったりしない。君の“それ”は病院でも治せないよ。」


男の声は優しく投げ掛けるが、自分の感情が制御出来ない。


「じゃあ、どうしろって言うんだ!あんたが何とかしてくれるのか?」


大きな声を出したので周りの人の空気が凍る。とっさに来た看護師さんが「大丈夫ですか?」と聞きに来たがこの白髪の男は短く


「大丈夫です。ちょっと彼と外の空気を吸ってきます。彼とは家族ですから」


と言って、自分の腕を引っ張って外に連れ出す。自動ドアが閉まる瞬間、「ユウキさーん」と看護師さんが自分の名前を呼んでいたが行くことは出来なかった。


病院の前のベンチに無理やり座らせれて、背中を強打する。男を睨んで


「あんた何なんだ。それに何だか頭痛のことも知ってるみたいだな。」


「はい、ただ今から説明するんですけど、“その声”が聞こえたまま私の話を聞くのは難しいのでこれを」


白髪の男はコートのポケットから黒い石を取り出して自分の手の中に置く。するといきなり炎天下のチョコレートのように黒い石が溶け始めた。気持ち悪いと思い投げようとすると身体に重いものが乗っかったみたいに硬直する。辛うじて顔と声が出せそうだったので


「…おい、お前なにしたんだよ」


すると白髪の男が無表情で


「もうじき収まるので我慢してください」


数分もせずに溶けた黒い石は無くなり、身体の重さも元に戻る。それに合わせて“頭痛も消えている!?”


「あんたいったい何なんだ?」


「はじめまして、私はサクラ。世界の“外側”の存在ですよ」


何を言っているのかわからないが溶けた黒い石、頭痛の事は知ってそうだった。


「じゃあ、教えてくれ。“外側”の人が僕に何の用だ?」


信じてはないけど、詳しく聞くには会話をするしかない。


「いきなりですが、君は少しの間、私と共に行動してください。君の持つ“チカラ”はあまりにも強大で危険です」


「ゲームでよくある、魔王を倒す伝説のチカラとかで僕が選ばれた的な事ですか?」


「いえ、君はあくまでも“器”で君は狙われ続けて、見つかり次第、消されます。君の存在は“彼ら”には必要ない。それに君は勇者ではなくて、魔王を復活させる為の混沌そのものです」


「マジかよ…僕自信が災いの元なのか…」


「もちろんそんなことはさせませんし。偶然、ノーヴァとして覚醒したのであれば、対処はしやすいです」


つまり僕は災いの元だったけど、主人公として覚醒したので、自分で何とかしろと…


「で、これから僕はどうしたらいい?」


サクラさんはうーん。と分かりやすく考えるポーズをして


「とりあえず、“今回の”隠れ蓑の店で住み込みで働いてもらいます。危険を考慮して家族とは一緒には住めないですね。親御さんには私からもっともらしい話で納得してもらいます。今後の打ち合わせはもう一人のノーヴァが誕生してからにしましょう。」


もう一人のノーヴァ?


「僕以外にもいるのか?僕みたいに災いの元がそんなにいるのか?」


「いえ、災いの元凶は君だけです。“彼女”はただ巻き込まれただけです。さて、君は生活品をとりに戻って“月灯堂げっとうどう”に来てください。今生の別れにはならないとは思いますが、とうぶん戻れないことは覚悟してください。」


自分には選択肢は無いと突きつけられる。相変わらず運命とは残酷である。ただ、走り始めてしまった以上どうすることも自分には出来ない。たぶん落胆の顔をしていたのだろう。その顔を見たサクラさんは


「けど、君はこちら側を知ったことにより、ただ“運命に喰われる”だけの存在ではなくなって、君自信が“運命を喰らう“存在になったんですよ。だから、君がその運命を変えたら問題はないよ」


そうか、これはきっかけなんだ。変われないから変わるんだ。これを踏み出すことによって、変わる未来があるなら変えるしかないよな


そんなことを思いながら家に向かうけど帰る家に帰れなくなるのは少し寂しい。不意に振り返って


「サクラさん、今日は家に居て明日朝からじゃダメですか?」


「大丈夫です。そんな急いでないので」


僕はそう聞いて、一礼して家の方に向かって走る。久しぶりに頭がクリアなのと母の顔が浮かんだのでまっすぐ家に帰る。


家に入り小さな声で「ただいま」と言うとリビングから母親が出てきて「大丈夫?」と聞く


「大丈夫、病院に行く前にであった人に話したら何とか治った。それとその人のところで…」


全てを言う前に母が話を聞いてるから大丈夫と言われた。少しの期間、家を空けることも…


「急なことでごめん。大丈夫かな?」


「心配しなくても大丈夫よ。お父さんにも連絡しとくから。そうだ、何か必要なものあったら言って買いに行くから」


「大丈夫、それより1つお願いしてもいいかな?」


「なになに?お願いって珍しいね」


僕は照れ臭そうに、照れ隠しで頭をかきながら


「ハンバーグ食べたいんだけど…」


それを聞くと、母親は笑顔になって。「直ぐに準備する」と言って母がキッチンに向かう。家を出るなら恥ずかしかったけど食べたかったのだった。あとは…


階段を上り自室に入る。部屋の真ん中には真っ二つのヒマワリの絵がある。その絵をそっと床に置いて新しいキャンバスを置く。


筆を選び、絵の具をパレットに…ご飯が出来るまで…


その後、母から呼ばれたときには色とりどりの花束の絵が完成少し前まで出来た。


見た目は既に華やかになっており完成と言っても疑われないレベル。これに関しては時間をかければ良いのが出来るのではなく、自分がいかに納得できるところまで持っていけるかである。なので、あと少しって言うのは自分の考え。


なので、自分が帰ってきて“仕上げる”の意思表示。無事に帰って仕上げると言う心残りを残していこうかと思う。最後の仕上げの自分のサインは入れずに帰ってきてから書こうと思う。


さて、母が呼んでいると言うことは出来たと言うこと。これはさすがに心残りをしたくないのでしっかり心を満たすつもりだ。頭がクリアになったので話すこともあるし、食べないといけないのでこの後も大忙しだ


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