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中年男の嘆き 後編

そのとき、エイリアンたちの咆哮が街の隅から響いた。地面が揺れ、巨大な爪が建物の壁を切り裂き、地鳴りとともに一際大きな個体が姿を現す。

それは、他の群れとは異なる異様なサイズと装甲を持つ個体――“改良型”とも呼べるシリアルナンバーエイリアンだった。


ステルンの眉がわずかに動いた。脇腹の傷はまだ完治していない。爆弾の解除も終えていない。なのに、今度は大型個体――!


「このままではまずい……!」


ステルンは咄嗟にエイリアンの突撃に対応する。彼女の能力――**世界のヴェルトクリーゲ**が再び発動し、空間を斬るように重力ベクトルを歪め、突撃してきた個体を二つに裂く。


だがその余波が周囲を吹き飛ばし、中年男の足元に瓦礫が落ちる。彼は叫ぶ間もなく吹き飛ばされ、意識を失ったようだった。


「……っ!」


一瞬、ステルンの表情に迷いが浮かぶ。しかし彼女は顔を振り払うように力を込めた。


「私情に流されるな、ステルン……冷静に判断しろ……!」


彼女は意識を取り戻した中年男の元に駆け寄る。だがその男の胸には深々と瓦礫の鉄筋が突き刺さっていた。

すでに致命傷――生き延びる望みは、ほぼない。


「……死にたくない……っ」


か細い声が、男の唇から零れる。その目に“娘”は映っていない。ただ自分自身の延命だけが滲んでいた。


「あなたは、誰かのためにここにいるのではない。自分のことしか見ていない……娘が居るのは嘘なんですね……?」


そう呟くと、ステルンは静かに立ち上がる。爆弾と一体化した男の背後から、冷たい風が吹く。

ゼクス=マギィアのホログラムが再び現れ、楽しげに言う。


「さあ、決断の時間だ。人間よ、お前の正義とやらを見せてみろ」


ステルンは拳を握る。その拳に重力の刃が収束していく。目を閉じたまま、男は涙を流し、うわ言のように娘の名を呟く。


「……娘よ……すまな……」


轟音。周囲を包む衝撃。

そして爆風の中、爆弾と一体化した男はその存在ごと消滅していた。


ステルンは拳を下ろし、重い呼吸を吐く。


(望まぬ結果が、またひとつ……)


痛みが胸に残る。男が語った言葉の真偽は、結局最後まで分からなかった、娘が居ないと信じたかっただけかもしれない。だが、確かなことが一つある。

この戦争は、正義の名のもとに、人間の“選択”すら試している――。


「……次へ行く」


ステルンはゼクス=マギィアの笑みを無視して歩き出した。その背には怒りがあった。だがそれを口にすることはない。

ただ、次の爆弾を止めるために。ひとり、歩き出すのだった。

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