表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/119

英雄が残した空白

「……発射確認!ターゲット座標へ向けて進行中!」


歓声が、作戦統括司令部中に響き渡った。

作戦成功。人類が誇る最終兵器――対侵略用戦略核ミサイルが、ついに打ち上げられた。

その白い軌道は、まるで希望そのもののように、暗い空を切り裂いていた。


「やった……!やったぞ!」


中央指令室では、スタッフが互いに手を取り合い、泣きながら喜びの声をあげていた。

モニターには、発射シークエンスの最終ログが表示され続ける。異常なし。

確実に、目標地点へと飛翔中だ。


「――ラッシュ・スウィフト。あいつが時間を稼いでくれなければ、間に合わなかった」


高官用の官席に座っていたアレクサンドル准将は、静かに帽子を取り胸に当てた。

言葉にならない思いが、彼の中を駆け巡る。


その時、通信班から一本の報告が入る。


「より――特殊施設《サザーランド気象観測センター》最終報告です」


司令部の空気が一変する。

歓声が止み、皆が息を飲んだ。


「……内容を読め」


アレクサンドルの声が低く響いた。


オペレーターが震える声で報告を読み上げる。


「ラッシュ・スウィフト、最終任務において敵ネームドエイリアン・アシミル=エクスの超高出力攻撃を受け……殉職。最期の瞬間まで施設と我々を守りきり、ミサイル発射を成功させたとのことです」


静寂。


誰も言葉を発せなかった。


まるで時間が止まったかのような沈黙が、司令部全体を包む。


「……あいつは、間違いなく、ヒーローだった」


誰かが、呟いた。


その言葉に、他の者たちもゆっくりと頷く。


ラッシュ・スウィフト。

言葉が不自由で、知的障害を抱え、複雑な命令を理解することも難しい少年。

それでも彼は、ただ一つの想いだけで戦い抜いた。


「“僕、ヒーロー”……って、ずっと言ってたよな」


涙を堪えながら呟く通信士の目に、かつてラッシュが笑顔で叫んだ映像がよぎる。


どんなに傷ついても、苦しんでも、彼は一度も弱音を吐かなかった。

言葉では語れない分、行動で全てを証明した。


そしてその代償に――命を捧げた。


モニターに、現在のミサイル軌道が表示される。

完璧な角度で上昇を続けていた。


その白い軌道の先に、ラッシュが遺した“想い”があった。


「記録班、ただちにラッシュ・スウィフトの戦闘記録を英雄記録簿に登録しろ。最高機密として、後世に残す」


アレクサンドル准将の声は、震えていなかった。だが、その拳はわずかに握られていた。


「……彼の勇気がなければ、我々は滅んでいた。忘れるな。あの少年こそ、我々の……真のヒーローだ」


誰一人として、否定する者はいなかった。


英雄の名は、叫ばれることなく静かに語られた。


だがその存在は、全ての者の胸に焼き付き、

この日、地球の未来は、一人の“ヒーロー”によって繋ぎ止められたのだった。


続きが気になる方は、ブックマークをお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ