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静寂を裂く一撃

ラッシュとの戦いで吹き飛んだシリアルナンバーのエイリアンたちの肉体が、特殊施設《サザーランド気象観測センター》の入り口前に累々と転がっていた。コンクリートの壁には、跳ね飛ばされた外骨格の破片が突き刺さり、周囲には火薬と焼けた金属の匂いが充満している。


「僕、ヒーローッ!」


満身創痍のラッシュ・スウィフトの叫びが、瓦礫の間を轟いた。巨体の筋肉が赤く膨張し、拳のひと振りで、空を埋め尽くしていた敵の群れが一掃される。人間離れした怪力と跳躍力。彼の力はもはや「強い」を通り越し、「災厄」とすら呼べる域に達していた。


だが、その力には明確な盲点があった。


所長ジョージ・アンダーセン博士が制御室から双眼鏡で戦場を注視していた。


「……見えない。あの瓦礫の向こうが、完全な死角になっている」


倒されたシリアルナンバーのエイリアンたちが折り重なって山となり、視界を遮っていた。兵の突撃を命じラッシュの注意が逸れた瞬間、エイリアンの山その裏に隠れた、アシミル=エクスが、音もなく息を潜めていた。


(お前は確かに強い。だが、戦術的判断はしない。ただ、感情のままに力を振るっている)


アシミル=エクスの脳髄に埋め込まれた知覚管が、戦場の隅々まで解析していた。ラッシュの挙動、爆風の軌道、重心の動き。そのすべてが、彼にとって「読み取り可能な変数」に過ぎない。


その瞬間だった。


「ッ──」


ドシュッ。


何の前触れもなく、音もなく、死角から現れたアシミル=エクスの爪が、ラッシュの脇腹を鋭く貫いた。


血が噴き出し、地面に黒い滴が飛び散る。


「……っ……!」


言葉にならない息が漏れ、ラッシュの膝が一瞬、折れかけた。


だが──


「ぼ、く、ヒ……ヒーロー……」


言葉は途切れたが、その目に宿るものは、怯えではなかった。痛みでもなかった。


それは、確かに「使命」だった。


「――今だ、ジョージ所長!残り数十秒で接続が完了します!」


管制室から技術オペレーターの絶叫が響く。ヴェルナーは焦りながらも、拳を強く握った。


「ラッシュ……耐えてくれ……!君がいなければ……我々は核を……発射できない……!」


戦場に咲いた血の花の中心で、ラッシュは倒れていなかった。


膝をついても、拳を握る力を失っても、彼の心だけは、まだ折れていなかった。


彼は、確かに「ヒーロー」であり続けていた。

※登校時間変更のお知らせ。


AM7:00に投稿していた小説をAM6:00に修正します。


よろしくお願いします。

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