重たい口
司令室に、報告が轟いた。
「こちら現地! タッチダウンを確認! 二本目のミサイル、発射成功!」
一瞬の静寂を挟んで、歓喜の声が弾ける。
「やったぞ! これで二本目だ!」
「オケケ、サファル……みんなの道が繋がったんだ!」
「フリント……あんたは最高の走者だ!」
誰もが椅子を蹴って立ち上がり、握手を交わす。
熱い涙を拭う兵士もいた。
しかし、その喜びの渦中――オペレーターの一人が顔を曇らせ、震える声で司令官を呼んだ。
「……司令……現地から続報が。」
イフェオマ司令官は表情を引き締めた。
「言え。」
「……フリント・ハーグレイブ、発射直後に……致命傷を負っていたことが判明。
確認……しました。……彼は……帰らぬ人に。」
司令室に再び静寂が降りた。
さっきまで響いていた歓声が嘘のように消え、誰かのすすり泣く声だけが残った。
イフェオマは目を閉じ、ゆっくりと頷く。
「……よくやってくれた、フリント。君の走りは決して無駄にならない。」
司令室の灯りが、彼の影を長く引き伸ばした。
その頃、〈オパール・ドーム〉の崩れた天井の下。
ヴェル・サグリオンは折れた糸を巻き取りながら、瓦礫の中で静かに横たわるフリントを見下ろしていた。
虹色の翼膜が風を受けて、わずかに震える。
「……人間よ。貴様は我らにとって、あまりにも脆い存在だ。
だが、その足跡は、確かに輝いていた。」
異星の狩人の目に、ほんの一瞬だけ、誇りを称える光が宿った。
「次の走者よ――その光を継げ。」
ヴェル・サグリオンは静かに転送の光に包まれ、姿を消した。
司令室の大型モニターが切り替わる。
映し出されたのは、氷と風が支配する南極の孤島――キングジョージ島。
白い吹雪の中、古い国際研究基地が見える。
そこに小さな影が現れた。
まだあどけなさを残す少年、ラッシュ・スウィフト。
その瞳には恐れと決意が同居し、背に背負った装備が風に揺れている。
「……キングジョージ島、南極戦域にてトラブル発生。」
フォアマン司令官がヘッドセットを握り、低く呟く。
「フリントがつないだ道を絶やすなわけにはいかない……。」
フォアマンが一瞬、なにかに祈るように深く目をつぶると
覚悟を決め、重たく閉ざしていた口を開いて、こう言った。
「なにがあったか報告しろ。」
モニターの中で、白い大地を踏みしめる小さな背中がゆっくりと進んでいく。
吹雪の向こうに、次なる戦いの予感が渦巻いていた。




