仲間の声を背に
赤土の荒野を駆け抜け、ついにフリントは見上げた。
遠くに丸い屋根――観光施設〈オパール・ドーム〉が朝日を反射して光っている。
その下に、誰も知らない発射管制室が隠されている。
彼は呼吸を整える間もなく、最後の丘を駆け下りた。
その瞬間、背後から鋭い風切り音が迫る。
ヴェル・サグリオンが翼膜を振動させ、糸の嵐を浴びせてきたのだ。
複雑に絡み合った光糸が、大地を切り裂き、岩を削り、砂煙を巻き上げる。
フリントは体を低くし、かろうじて前転するようにしてその一撃をかわした。
しかし遅れて放たれた糸が、背中をかすめる。装甲が裂け、皮膚が切れる感触。
鋭い痛みが走るが、彼は歯を食いしばった。
「……まだ、走れる……。」
彼はふっと笑みを浮かべ、耳元で鳴る無線に短く応じた。
「こちらフリント。〈オパール・ドーム〉に接近した。……これより、最終区画に入る。」
「フリント、負傷が深刻だ! 帰投を――」
「……いいえ。ここで止まれば、あの人たちに申し訳が立たない。」
走りながら、彼の脳裏に浮かぶのは、これまでの仲間たちの姿だった。
オケケが街全体を緑で覆い尽くしたあの無線。
彼女の笑顔と、最後に残した言葉。
サファルが必死にカードキーを差し込んだあの報告。
彼の決死の走り。
そして――ステルンの凛とした声、エステバンの無鉄砲な勇気。
(僕はあの人たちほど強くはない。だが……あの人たちが繋いだ道を、絶やすわけにはいかないんだ。)
フリントは再び、カードを一枚抜いた。
そしてその場で立ち止まり、後方に投げる。
正確に飛んだカードが糸の一部を切り裂き、数秒の猶予を生む。
「……仲間たちが教えてくれたんだ。どんな絶望でも――」
彼は息を整え、再び前を向く。
「――足を止めなければ、必ず光が見える。」
ヴェル・サグリオンが翼膜を大きく広げ、今度は三方向から同時に糸を振るう。
砂と岩が一斉に吹き飛び、フリントの体に衝撃が走る。
脇腹を深く裂かれ、視界が赤く染まる。
それでも、彼の足は止まらなかった。
(オケケ、サファル……見ていてくれ。僕も、走ってみせる。)
前方に〈オパール・ドーム〉の入り口が近づく。
爆風と砂煙の中、フリントは血の滲むカードキーを胸元で握り締め、最後の加速を試みた。
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2025/08/09




